想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000056175

作品紹介・あらすじ

人間とは何か。それをずっと考えながら、日本で、アフリカで、チンパンジーと寄り添うようにして研究を続けてきた。彼らには人間の言語のようなことばはない。けれども、彼らなりの心があり、ある意味で人間以上に深いきずながある。人間の体が進化の産物であるのと同様に、その心も進化の産物だ。人間にもっとも近い進化の隣人を深く知ることで、人間の心のどういう部分が特別なのかが照らしだされ、教育や親子関係や社会の進化的な起源が見えてくる。この本では、チンパンジーの研究を通してたどりついた「人間とは何か」の答えをお話ししよう。

感想・レビュー・書評

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  • 絶望するのも希望を持てるのも人間だけ。
    それが想像するちから。
    研究対象であるチンパンジーの幸福や権利を最優先している姿勢に感動した。
    エピローグとあとがきで泣きそうになった。

  • 松沢先生の本は過去にも何冊も読んできた。しかし、これだけはっきりとした主張を書かれたのは初めてだと思う。あとがきには「遺書のつもりで書いた」とある。「社会的な集団のなかで暮らすということがチンパンジーにとってはいちばん大切なことで、一人だけ取り出してエンターテイメント・ビジネスに使ってはいけない。それと同じように、チンパンジーを一人だけで暮らさせてはいけない。」30年以上もチンパンジーといっしょに生活してきたからこそ言えることばだと思う。「チンパンジーは絶望しない。それに対して、人間は容易に絶望してしまう。でも、絶望するのと同じ能力、その未来を想像するという能力があるから、人間は希望をもてる。どんな過酷な状況のなかでも、希望をもてる。人間とは何か。それは想像するちから。想像するちからを駆使して、希望をもてるのが人間だと思う。」長年チンパンジーと付き合ってきたからこそ分かる人間像。重いことばだ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/717255

  • 哲学の先生が紹介していたので読んだ。
    研究内容も興味深かったけれど、研究対象への慈愛に満ちた姿勢がとてもうつくしいなと感じた。研究書というよりは、ひとりの生きざまを見たような、まさに遺書を読んだような、そんな気持ちになった。

  • サイエンス

  • 遺伝的に人間に最も近いチンパンジーを長年に渡り研究してきた第一人者の自信ある記述が満載の好著だ.人間が他の動物と違う点は利他的な行動をすることだが,さすがにそれをチンパンジーに見つけることはできないようだ.様々な研究成果の報告があるが,それぞれに新しい研究者の名前が出てくることに著者の指導力が素晴らしいと感じた.研究者の世界ではこのように新進の研究者の成果を公表するのが常態だが,上位の輩が取り込む世界もあるようで,嘆かわしいことだ.

  • 人科は4属ある→「ヒト科ヒト属ヒト」といって,人間だけを特別視するかのような理解は正しくない。ヒト科は,ヒト,チンパンジー,ゴリラ,オランウータンの4属である。そもそも「サル目ヒト科」であり,「哺乳綱サル目ヒト科」である。


    言葉は経験・知識を持ち運ぶ携帯可能性がある。それを、他者と共有する。チンパンジーアイより引用。DNAにおいて、98.8%の塩基配列は同じ。
    →塩基が連続してつながったものが遺伝子。逆に言うと遺伝子の構成材料が塩基。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB05069694

  • 松沢先生のお話を聞く機会があり、紹介されていた本書を手にした。先生のお人柄を感じさせる素晴らしい著作だと感じた。
    今この世界を生きているからチンパンジーは絶望しない。「自分はどうなってしまうんだろう」とは考えない。多分、明日の事さえ思い煩ってはいないようだ。
    それに対して人間は容易に絶望てしまう。でも絶望するのと同じ能力、その未来を想像するという能力があるから、人間は希望を持てる。どんな過酷な状況の中でも、希望を持てる。人間とは何か。それは想像する力。創造する力を駆使して、希望を持てるのが人間だと思う。
    人間とは何かを考えさせる良書。

  • [ 内容 ]
    人間とは何か。
    それをずっと考えながら、日本で、アフリカで、チンパンジーと寄り添うようにして研究を続けてきた。
    彼らには人間の言語のようなことばはない。
    けれども、彼らなりの心があり、ある意味で人間以上に深いきずながある。
    人間の体が進化の産物であるのと同様に、その心も進化の産物だ。
    人間にもっとも近い進化の隣人を深く知ることで、人間の心のどういう部分が特別なのかが照らしだされ、教育や親子関係や社会の進化的な起源が見えてくる。
    この本では、チンパンジーの研究を通してたどりついた「人間とは何か」の答えをお話ししよう。

    [ 目次 ]
    プロローグ―心、ことば、きずな
    第1章 心の歴史学
    第2章 生活史―人間は共に育てる
    第3章 親子―人間は微笑み、見つめ合う
    第4章 社会性―人間は役割分担する
    第5章 道具―認識の深さ
    第6章 教育と学習―人間は教え、認める
    第7章 ことばと記憶―トレードオフ
    第8章 想像するちから―絶望するのも、希望をもつのも、人間だから
    長めのエピローグ―進化の隣人に寄り添って

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


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著者プロフィール

京都大学霊長類研究所 行動神経研究部門 思考言語分野 教授 理学博士
1950年生まれ・1974年京都大学文学部哲学科卒業、大学院進学。
京都大学霊長類研究所助手、助教授を経て現職。

「2003年 『チンパンジーの認知と行動の発達』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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