- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048740579
感想・レビュー・書評
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生きている者の苦しみとして避けられないものは、
まぁたくさんある。
老いコワい。
病もコワい。
死もコワい。
人と違う事がコワい。
世間の目がコワい。
コワいものとは実際目を合わせたくない。
なのに『炎上する君』では、
作者が「ほ~ら、コワい、コワいよ。コワい目にあわせてあげるよぉ」と、脅しをかけてくる。
嫌だな。
思い当たる節のある私は胸が痛む。
ズキン、ズキンと。
でも、言い出したのは西さんだから、最後は責任持ってくれるよね?
救いのオチを用意してくれているよね?
今、読み終えて思い返しているのだが、
救いのオチ、というよりは
全く別の事を思った。
それは、良寛さんのこと。
良寛さんは
何事も観察する事が大好きで、
自然や花や虫と仲良しであったが、
晩年、老いの身で観察し続けたのは
病や死、自分の死生観についてだった。
私が強く胸打たれるのは、
寂しいと、孤独だ、と、まるで別の誰かを見てるかの様に素直に発せられている言葉に、だ。
すっかり悟りを開いているかの様なあの良寛さんでも
独りは寂しい、と死とは恐ろしいものです、と。
ただ、目を逸らさずにそいつらと向き合う意志を強く持つ事が出来るのならば、突破口も見つかる。
逃げようと思えば、<今のうちは>逃げる事が可能な黒雲をじっ…と見据えて、追い払ってやろうじゃないか。
良寛さんの心に通じる短編集であった様に
私は思えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3.4
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何故か女芸人のたんぽぽが浮かんでくる
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どこか不思議で、おとぎ話か現実かわからなくなるような話が詰まった短編集。
声に出したくなる表現、言葉の組み合わせが多々あり何個か音読してしまった笑
こういう詩集みたいな本が好きそうな友達がいるので、今度会ったら話をしてみたい -
2020.3.8 再読
短編集。大好きな本だけど、読み返すと意外に忘れてる話もあったし、最近の西加奈子の小説に比べると不思議な空気感が強くて、こんな作風だっけ?とも思った。
最初に読んだ時は、炎上する君、の話の凛々しさに感銘をうけた。今回もやっぱり炎上する君はいい。それに加えて、私のお尻、ある風船の落下がよかった。 -
世にも奇妙な物語の小説版のように感じました。各編のオチがどんな意味を指しているのか、想像力が必要。だから面白い。
個人的にはある風船の落下が好き。 -
恋愛のさなかにいる君、恋の詩をつづる君、恋の歌を歌う君よ。
周囲の人間に馬鹿にされるだろう、笑われるだろう。
身の程知らずだとおのれを恥じる気持ちになるだろう。
だが、それが何だというのか。
君は戦闘にいる。
恋という戦闘のさなかにいる。
誰がそれを笑うことが出来ようか。
君は炎上している。
その炎は、きっと誰かを照らす。
煌々と。熱く。
この言葉が良かった。
恋だけでなく、夢や、やりたい事、年齢関係なく力強く背中を押してくれる言葉だなと思いました。 -
短編集
ある風船の落下 がよかったなー。ストレスたまって現実から目をそらしたかったり、人との関わりが億劫になったりすることもあるけど。まったく触れ合うこともできず、人間の欲求がなくなってしまうようなのもさみしい。辛くても地上でやってくかー。 -
これをファンタジーと呼んではいけないと思いました。
少なくとも私のなかでは・・・。小説の手法とでも言えばいいのか・・・。
大島弓子を読んでいるときの感覚にちかいものを覚えました。
個人的には、「空を持つ」「船の街」にやられました。
西加奈子さんのもつ鋭さが、私の心に突き刺さってきました。棘のように、もう抜くことができないほどに。しばらくこの、甘い痛みを味わいたいです。