「ワル姫さま」の系譜学

著者 :
  • 講談社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062157872

感想・レビュー・書評

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  •  分厚いので読み通せるか心配しつつ借りる。軽快を通り越し軽薄ともいえる文体にサクサク読み進む。
     一種の通史になっているので、好きなところからつまみ食いできない。それでも『三銃士』のアンヌ・ドートリッシュと萩尾望都『王妃マルゴ』のマルグリット・ド・フランスを先に読んでしまう。
     全30講で採り上げられたワル姫は27名。うち4講をカトリーヌ・ド・メディシスが占めている。まさに大物。
     歴史は繰り返すというのを思い知る。幼くして王位を即いだ場合、母后が摂政になり、しばしば政治を愛人に委ねてしまう。
     そして、恋愛とセックスと結婚は違うものと思い知る。フランスの場合、この三つを仕切るパーティションが今も昔も分厚い気がする。

  • フランスの華やかな宮廷生活の中で繰り広げらる「姫」あるいは「女」たちの表もあり裏もある生態を、特に下半身事情に注目して描いたところが興味深い。
    王妃に選ばれるために女の武器を最大限に使って王を虜にしていく。
    またその王も情欲のためにだけに戦争をおっぱじめたりして、関係のない市民、兵士の死体の山を築くいてしまう。

    私が気に入って注目したのが、イタリアのメディチ家からフランスのアンリ2世の嫁としてやってきたカトリーヌ・ド・メディチ。美人ではないが、自分の周りに美女軍団を多数揃え、ウッフン攻撃を仕掛け、数多くの男たちを操るなど、なんともたくましく時代を生きていたようだ。

    荘厳たる宮殿やドレスファッション、絵画や音楽も含めた文化から、まさに雲の上の人達と思ってしまうが、実はそこにいるのは、妬み嫉み、愛欲のうずが巻くドロドロの世界だったのだと思い知った次第です。

  • 女性誌の連載発ということで、文章のノリに不可避的な違和感を覚える向きもあるだろうが(私もその一人)、読み物としての面白さは第一級。また、こう見えて歴史ものとして硬派な側面も備え、通りいっぺんの「超メジャー」紹介に終わらない人選も評価できる。

    が、狙いすましたとはいえの軽薄さ、あまりにも下半身の話題に集中しすぎている点で、歴史好きとしてはやや食い足りなさも残るのは事実。
    そういう時は、「愛と欲望のフランス王列伝」を併用するといい。先にかの本を辛口評価したが、あの生硬な記述と豊富(だが唐突)な情報量は、まさに本書と補完し合うにふさわしい。

    タイトルに「ワル姫」とあるが、読み進めるにつれカトリーヌ・ド・メディシスのような「王妃といえども元を糺せば…」の人物や貴族身分の公式寵姫、はては正真正銘の平民あがりまでもが登場してくる。これは長期連載のネタ切れというより、王権が衰退し市民階級が台頭してくる「時代の波」ゆえであろうかと、読後ちょっぴりしんみりしてしまった。

    2011/2/21~2/22読了

  • ワル姫とはやんごとなき悪女のこと。庶民出身の人もいるけど、みな一度は歴史の表舞台に名を残した姫たちです。
    ワル姫のワルは淫蕩であることや計算高いことを指しているようですが、この姫をワルと読んでは気の毒だと思う場面も再々出て来ます。
    淫獣もドスケベエもあまり上品なものいいではありませんが、ワルには人格そのものへの侮蔑が感じられます。
    下半身を使った陰謀に関わる女だけが「ワル姫」と呼ばれ、その姫に引っかかったり使い捨てにしたりする男がワルと呼ばれないのは、腑に落ちません。

  •  小説でなく、歴史エッセイ? なのでしょうか。しかし、ひっじょうに楽しかった! いわゆる、歴史に名を残した、"バカ殿"や"ビッチ"たちを、その時の歴史の出来事に絡めて、面白おかしく書いてあります。本書にもありましたが、歴史を表面からじゃなくて、下半身の観点から書いてあるので、西洋史苦手だわ…という人でも、すらすらと読めると思います。非常に語りが面白くて、ちょっと下ネタあるんですが、歴史解説書にありがちな硬い表現がまったくないので、興味を失わずに読めます。
     バカ殿様と、ワルお姫様が結婚したから、さぁ大変! ということで、色恋沙汰で歴史がずずずとマントルレベルで動いていたのがよくわかる。みんなすごいキャラクター濃かったんだなと思います。
     それにしても、フランス王族って、アンリ、シャルル、ルイ、いすぎじゃねぇか。ややこしいな。
     西洋史(特にフランス)を面白く知りたいなという方に超オススメ。面白かったです。

  • 王妃など女性を主軸にしてフランス王室史を見ていく本。
    軽妙な語り口で楽しく読める。
    女を取り合っての暗闘や、戦争まであり男女の業というものを感じる。

    「ワル姫」というが、女の武器を使って国王などを籠絡する悪女的ニュアンスだな。

  • こんなに全編シモっぽいのに、どうした訳かカトリーヌ・ド・メディシスだけが特別扱い。なんと彼女1人に4章も割かれています。それにしても、ワルい女に唆され(ないまでも手に入れたいが為に)戦争を始める王様やらプリンスやらの、なんとなんと多いこと。まったくもって、民衆はホント、大迷惑よ(涙)。アムールの国・おフランスも善し悪しですな…。
    いいけど、「乳房剥き出しのドレスが流行した」って本当ですか、鹿島センセ?それもアンリ4世の治世に…って、出来すぎっスよ。ちなみにBGMは戸川純の『玉姫様』〜。

  • ヨーロッパ王家の華麗な血統から生まれた、「とんでもないワル」たちの列伝。
    王子さまとお姫さまがぐっと人間らしく思えるようになる一冊です。

    ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB03659289

  • なんかこう・・・変態ばっかりだな・・・って・・・
    あと倫理観もクソもねえなってなる

  • お姫様というか・・・身分の高い御方って、
    ・・・・欲望深過ぎ!!!
    どんな欲望の矛先がどこに向かっていても、
    国にとっては一大事(--;
    まぁHなお話あれこれ。
    それにしても・・・スケールが大き過ぎて唖然でした!

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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