宗教で読む戦国時代 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
3.62
  • (5)
  • (8)
  • (11)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 167
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584593

作品紹介・あらすじ

宣教師も驚いた戦国日本人の高度な精神性。その「ゆるやかな宗教性」のバックボーンとしての「天道」思想をキーワードに、一向一揆、キリシタン論争から島原の乱まで、日本人の心性に新たな光を投げかける。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 専門的な内容だけど、読みやすくわかりやすかった。

    当時の日本人は「天道」概念(おてんとさまが見てるよ、みたいな感じ)を持っていた。
    信長や秀吉も然り。
    彼らは宗教弾圧をしたわけではない。
    むしろ戦国時代は宗教の並存が当たり前で、他を暴力的に排斥しようとする行為がだめだった。
    為政者はどうしようもなく排他的なグループがいた場合に、武力で持って制圧したのであり、教義に反対したり、そのグループの存在を否定しようとしたのではなかった。

  • 戦国時代において、宗教が当時の戦乱にどう関わってきたか、戦国大名達(主に信長、秀吉)がどう対処してきたかを数々の文献から探る。

    前半は信長と本願寺との争い、後半は秀吉の伴天連追放令や島原の乱などキリスト教の話題が多い。数々の戦や一揆に各宗教が持つ排他性(かなり苛烈なもの)が原因になっているという分析だ。他の文献ではキリスト教宣教師達は人身売買をはじめとした闇貿易の尖兵という見方もあるが、本書ではキリスト教内の対立が欧米でも激化している排他性がピークに達していた頃の日本での布教活動、という見方だ。

    宗教に限らず、自分と異なる考えの者を排除しようとする人間の行動は今も昔も変わらない。しかし生活も文化の水準も全く異なる中世を考える時、当時の人間の倫理観やら死生観やらを理解しておくべきだろう。戦や飢餓の恐怖に怯えながら、しかし戦で逆に自らが生き残る糧を得るのも重要だった時代と現代とでは根本的に価値観が異なる。

  • KCa

  • 政治との関わり合いから宗教の影響・弾圧・果ては天草四郎時貞まで
    日本独自の宗教(八百万の神っていうもんだし、まぁそりゃそうよな)って
    凄い独特であって海を越えてきたキリシタンの方々は
    うん、日本の宗教って意味不明!!ってなるのもまぁ分からんでもない。
    カトリックが日本の寺社仏閣をバンバン破壊して日本の天道・王道を否定。
    もう何でもかんでも否定よ。
    結局は切支丹禁止に繋がっていったのではないかという話。
    一番勉強になったというか
    ほぉ~!!!って思い知らされたのは島原の乱。
    弾圧したって一括りになる理由がやっとわかった感じ。
    他教の信者を認める・認めないって今でも宗教争いは世界規模であるけども
    こんなにも昔からあるのにいまだ解決していないってことが一番こわい。

  • 2010年刊。

     戦国時代(島原の乱まで射程範囲なので、広義の意味)における宗教(一向宗、法華宗、キリスト教など)。そして著者曰く「(制度化されず)見えない国教」たる天道。日本的宗教における一揆的性格(合議制と全会一致、自治的)と他宗教への寛容性に対して、排他性が歴史的に最高潮に達していたC教の差、両者の原理的軋轢、C教に対する仏教側の感情的反発を織り交ぜつつ、戦国時代の宗教戦争(加賀一向一揆、石山戦争)の世俗的性格、相論(安土宗論)の背景、権力者によるC教保護と弾圧の意味、島原の乱の宗教的性格を解説する。
     著者は東洋大学文学部教授。

     一向宗を含む宗教が、戦国時代において、(支配領域を越境する)世俗権力の性格を持ち、現実の独自軍事力を有して各大名と合従連衡してきた点は新味を感じない。
     しかし、その仏教勢力が、他宗教の排斥・殲滅を徹底させてはいなかった点、それら宗教を統合する天道(見えない国教)への各層の意識、特に天道遵守の意識は支配側にも存在した点、殲滅を意図した島原の乱のみが原理的な宗教戦争であった点など、視点を揺さぶる記述が彼方此方に存在する。

     もっとも、殲滅戦の典型たる比叡山焼討ち、長島一向一揆戦などを実行に移した織田信長に関する論にはまだ納得していないが、面白いことは確かだ。
     また、島原の乱の遠因を大名による収奪の苛斂誅求に求めない点、キリシタンによる仏教徒への迫害(仏像・仏閣などの破壊)の適示、秀吉のC教禁令の理由が、大名による教会寄進(この禁止だけでいいはず)・戦争回避(秀吉の政策からして戦争回避するはずなし)などではなく、C教の排他性・他宗教との非調和性という国内騒乱要因の除去にあった点は興味を引く。

  • 遠藤周作などで一方的にキリシタンの哀れを感じてましたが、その実、キリシタンの為した罪もかなりなものであったようです。
    とはいえ・・・・、終末論に取りつかれた民衆もまた哀れであったのでしょう。

  • 近世のカトリックや仏教の、神学(教学)的側面より社会的・政治的側面、教団について。

    先行研究の紹介とか註が詳しくて面白い。

  • 当時の人々は、色々な仏教宗派の説法を数多く聞いており
    教義に通じていたため、
    宣教師たちが彼らをキリスト教に改宗させるために説法することは、
    苦労の多いことだったようです。

    そしてこの時代は、
    「天道」思想というものが一般にひろく受け入れられていました。
    「天道」に背くものは神仏の罰があたり、
    「天道」を守るものはその加護がある。
    日本の神仏をまるごと信仰し、崇拝することが「天道」に適い、
    「天道」の加護を受けるためには、世俗道徳の遵守も必要である、というもの。

    秀吉の伴天連追放令や、禁教令の要因は、
    キリスト教の日本在来の宗教との共存を拒否し、
    その撲滅をめざすという行動様式のため、ということです。

  • 戦国時代、キリスト教が入ってきたことで、神仏とキリスト教との間で軋轢が起った。
    従来の宗教を尊ぶ者と、新しい宗教に心を傾ける者。
    この宗教における、戦国時代の人々の心理を解説している。

    戦国時代を生きる人々の宗教観を現代を例にとりながら解説しているのだが、あーなるほどといった感じで、感動はない。
    「結局、戦国時代も現代も一緒だよね」に落ち着いてしまう。

    いやいや、そうなのか?

    共通点はあるだろうが、しかし違うからこそ歴史は面白いのでは?と突っ込みを入れたくなる。
    感想としては、むしろ違いこそを強調してほしかった。
    戦国時代の宗教に関する入門書としては、いいのかもしれないが、ちょっと内容が期待はずれだった。

    だって、「宗教で読む戦国時代」だから!
    自然と読む方もハードル上がるっしょ!

  • 真宗の記述が興味深かった。天道思想の説得力がもう一押し欲しい。神社仏閣とキリスト教勢力の抗争状態が基本的に一方通行なのも少し気になった。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

神田千里(かんだ・ちさと)
1949年東京都生まれ。東京大学文学部卒、1983年同大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本中世史専攻。高知大学人文学部教授、東洋大学文学部教授を経て東洋大学名誉教授。主な著書に『織田信長』(ちくま新書)、『島原の乱――キリシタン信仰と武装蜂起』(講談社学術文庫)、『一向一揆と石山合戦』(吉川弘文館)、『宗教で読む戦国時代』(講談社選書メチエ)、『戦国と宗教』(岩波新書)、『顕如』(ミネルヴァ日本評伝選)など多数がある。

「2021年 『戦国乱世を生きる力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神田千里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×