不発弾 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.21
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感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062732956

作品紹介・あらすじ

今度はあなたが、爆発させてみる? 退屈な日常から逃れられるきっかけなんて、どこにでも転がってる。デパート勤務の的場智明は、地味な売り場での仕事に耐える日々を過ごしていた。そんな折、息子や娘の、“秘密”を妻までが一緒になって隠していたことに気づく。たまりにたまった憂さをはらすために彼がとった行動とは……。表題作など、現代人の爆発寸前の心境を的確に捉え、見事な筆致で描く、秀逸短編集。(講談社文庫)


今度はあなたが、爆発させてみる?
退屈な日常から逃れられるきっかけなんて、どこにでも転がってる

デパート勤務の的場智明は、地味な売り場での仕事に耐える日々を過ごしていた。そんな折、息子や娘の、“秘密”を妻までが一緒になって隠していたことに気づく。たまりにたまった憂さをはらすために彼がとった行動とは……。表題作など、現代人の爆発寸前の心境を的確に捉え、見事な筆致で描く、秀逸短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 乃南さんの短編集。
    ホロっとするのから、後味悪い、怖いのまでの6作品。
    好きなのは、この2作品かな。
    後味悪い系
    「かくし味」
     常連さんばかりの赤提灯。いつも常連さんでいっぱいで、なかなか入れない。
    ある日、席が空いて…
    それが、これとは怖い…

    ホロっと系
    「福の神」
    自身の店に、離れた娘の名前。
    会えるとか思ってないけど、やっぱり、別れたとは言え、子供はね。
    どういう巡り合わせか…こんな事が…
    涙なくして見れん…読めんか…^^;

  • 6つの短編集。
    どの短編もうるっときたり、ぐっときたり。話それぞれが濃くて感情移入しやすかった。
    「かくし味」はラストのオワッって感じが良かった。「夜明け前の道」はほのぼの出来て「福の神」はうるっときた。
    この3つがお気に入り。

  • ブックオフのウルトラセールで100円だったからとりあえず買った本。著者も全く知らなかったし短編集だったことも知らないくらい、何も考えずに手にとった。
    後味が悪いものと感動モノがバランスよく入っている短編集。嫌な登場人物も多いけれど、きっちりと制裁してくれるので読んでいて気持ちがいい。



    かくし味
    煮込みの隠し味が地蔵だった話。
    人肉系のドロドロしたオチかと思ったら違った。まさかの鉛地蔵でほっこり。鉛の毒が長い年月をかけてジワジワと常連客を殺していくのが恐ろしい。でも鉛の毒ってそんなに強烈なのだろうか。理科とかそっちの分野についてはちんぷんかんぷんなためよく分からない。
    行列禁止ルールは色々な店で導入してほしいと思った。並ばられてるとゆっくり食えないんだよね。外ならまだしも中で真後ろに並ばれるタイプだと最悪である。
    「鉛だよ、これ。鉛の地蔵だ」
    P53



    夜明け前の道
    自殺しようとしてるタクシー運転手が死にかけの外国人を救う話。
    主人公は口が悪いし態度がデカイしで嫌な奴だなーとあまり好きになれなかった。でも、壮絶な過去を知って納得。友人に裏切られた挙げ句、妻が自分の寝室で他の男とパコってたら、そりゃあ頭おかしくなるわ。絶望感てんこ盛りの主人公。俺でも自殺したくなるね。
    最後外国人に囲まれたときは殺されちゃうんじゃなかとヒヤヒヤした。助かったほんとによかったわ。
    俺もたまに死にたいと思うときがある。そんなときは誰かに感謝されたり、誰かに必要とされれば生きる希望がわいてくるのかな。
    人に感謝された、誰かの役に立ったということが、自分でも意外なほどに嬉しかった。
    P79



    夕立
    女子高生がわざと痴漢されてお金を稼ぐ話。
    27歳の私はポケベル知らないから時代を感じた。カタカナでのやり取り新鮮、絵文字も顔文字もないし感情伝えるのむずかしそう。
    わざと痴漢されて慰謝料請求って現代でもアリそうで怖い。頭いい女子高生とか絶対やってるっしょ。満員電車で女子高生に近づかないようにすると決めた。それか両手をつり革で掴むのもいいかもしれない。
    最初は「教頭クソ野郎。絶対に許すな!」って思ったけど、後半は逆転して女子高生が生意気でウザくて終始腹がたった。一回り以上も歳がはなれた小娘に、虫けらのように扱われる教頭かわいそうに。「制裁されろ、小娘ども!」って思ったらラストでやってくれた。ただね、やりすぎだよ…後味悪いスカッとジャパンかよ。
    みどりちゃんの自慢の髪が、海藻みたいに広がって、その間から赤い筋が流れ出ているのが、はっきりと見えた。
    P120



    福の神
    自分の店に捨てた娘の夫が来店する話。
    冒頭で配達の兄ちゃんを叱るシーンが伏線、妙子がいかにあいさつを大切にしているか分かる。店の名前がかつて自分が捨てた娘の名前ってのが洒落てる。ずっと娘のことを思ってたんだね。
    池内の態度むかついたわ、あんな客いたら店側も迷惑だろうな。酔ったら何しても許されるんだ、みたいな感じで話すオヤジいるよね。いい大人なのにみっともねぇ。部下引き抜かれてザマァ。
    「手紙は、ひらがなばっかりで書かれてたんだそうです。『どんなひとにでも、あいさつをわすれないで』って。『”こんにちは”さようなら”ありがとう”ごめんなさい”のよっつを、けっしてわすれないで』って」
    P163



    不発弾
    妻と子供に蔑ろにされた夫が家でする話。
    家族みんなからこんなに邪険に扱われたらイライラするわ。主人公は前半よく耐えたな。妻の小言ネチネチ攻撃ほんとうざかった。働いてる身にもなってみろ、会社員の気持ちなにも分かってないんだな。こんな奴らのために働いてると思うと馬鹿らしくなる。父親ってのがこんあ感じなら一生結婚したくない。
    猫の鳴き声を「いやあん」と表現してるのが面白かった。荒れてる家族の中の会話で唐突に出てくると、シュールすぎてクスっとしてしまう。
    作中では子どもたちの秘密しか明らかになってなかったけど、妻にも秘密があると思う。外出多いしオシャレだし、他に男でも居るんじゃないのか。
    最後はとうとう主人公が爆発しちゃう。でも家出しただけっていうね。もうちょいインパクトある爆発するかと思ったから拍子抜け、まさに不発弾。あの後どうなったのか気になる。だれか一人くらい勢いで殺っちゃってるんじゃないかな。
    —爆発してやる。してやるからな。
    P209



    幽霊
    一番つまらなかった。唯一飛ばし読みした作品。芸能業界について無知なため、業界用語がまったく頭に入ってこなかった。

    正直買う前はまったく期待してなかった。しかし読んだら良い意味で裏切られた。私は普段古本を買うことはめったにない。今回のような出会いがあるため、たまには古本屋で聞いたこともない著者の本を買い漁るのも悪くないと思った。100円にしては安すぎる買い物であった。今後は古本屋に行く機会が増えそうだ。
    この本を読んだ後、胸の中にあるモヤモヤが浮かび上がって爆発した気がした。スカッとしたいときに読むのがおすすめ。

  • 「かくし味」はやばい。
    1行だけで相当ぞくっとした。
    こえー。

    「幽霊」が気に入った。
    すごい気分良く読み終えた感じ。

    でも表題作はあんま好きじゃない。

  • かくし味がほんとにぞわっとしてて面白い!
    ふと、あ、また見返そうと思う

  • 人の感情を爆弾と例え、さらにそれが爆発しない、できない不発弾として秀逸に表現されている。

  • 短編集、最後の[幽霊]が一番面白かったかな。乃南アサさんは長編の方が好きかな。

  • 表題作を含む6編の短編集。はじめの「かくし味」で乃南ワールドに入り込む。絶品の料理が、実は鉛中毒の源泉という落ちが最高に怖い。表題作「不発弾」はごく普通の家庭に潜むストレスに上手く焦点を当てた作品。多くの家族に「不発弾」が存在する寓意を感じた。「幽霊」では蹴落とされたテレビマンが、深夜の通販番組をプロデュースして逆転劇を演じる、爽快で好きな話だった。

  • ミステリー短編集。
    どの話もすき。どんどん吸い込まれていく。

    『かくし味』
    『夜明け前の道』
    何年経っても忘れられない。

  • さすが乃南アサさん。短編集ですべてがいい!と思える本はなかなかないのですが、この本はどの話も面白かったです。黒かったり、ほろっとする話だったり。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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