人と森の物語 ―日本人と都市林 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087205992

作品紹介・あらすじ

日本では近年、「ふれあい」「こころ」「癒し」等の、どこか空々しいキャッチフレーズとともに、次々に新しい森が生みだされている。しかし、こうした自然回復の営みは、はるか昔から、生活の必要性と、より密接に結びついた形で試みられていた。酒田の人々は、荒涼たる沿岸の砂地に、江戸時代半ばから南北四〇キロの松林を作り上げた。ユンカーに憧れた成り上がり華族とその末裔たちは、地元の水路事業を引き継ぎ、那須野が原の砂礫地を良林に変えた-。北海道から沖縄まで列島を縦断し、土と森と人間を信頼した森づくりの実例を訪ねた、ドイツ文学者・池内紀の新境地。

感想・レビュー・書評

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  • エッセイスト・ドイツ文学者の池内さんが、日本の各地にある美しい森を訪ね、その森を育てた人々について語った本。

    「初めて地図帳を見たとき、町が緑色で山が茶色という色分けが、本当の色だと思い込んでいたが、実際は逆で、山には緑があふれている」というエピソードから始まるこの本は、北海道から沖縄まで、全国15箇所の人間が作った森を紹介しています。

    どの森もその土地に初めからあったわけではなく、昔の人が、苦労して一から作り上げたものばかりです。森というと、手付かずの自然というイメージがありますが、人が育てた森もあるわけです。というか、むしろ人が育てた森の方が多いのかもしれません。

    人が作った森、人工林には、当然人々の暮らしが寄り添っていて、そこには様々な物語が生まれます。この本に紹介されているような森じゃなくても、かつての日本には、あちこちに、小さな森や林があちこちにあったんですよね。

    私の田舎もかつてはそんな里山でした。

    いまでも田舎は田舎なのですが、住む人が減り、山や田畑の手入れをすることが出来なくなって、風景がどんどん荒れていっているような気がします。

    人間も自然の一部として、ちゃんと機能するような生き方が、やっぱり一番いいんだよな、とつくづく思った一冊でした。

  • 20110806 これからの日本に大切な事。日本人は本能的に解っているのかもしれない。

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著者プロフィール

1940年、兵庫県姫路市生まれ。
ドイツ文学者・エッセイスト。
主な著書に
『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、
『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、
『恩地孝四郎 一つの伝記』(読売文学賞)など。
訳書に
『カフカ小説全集』(全6巻、日本翻訳文化賞)、
『ファウスト』(毎日出版文化賞)など。

「2019年 『ことば事始め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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