- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087712988
作品紹介・あらすじ
彼は、小説に命を懸ける、と何度も言った。小説は悪魔ですか。それとも、作家が悪魔ですか?恋愛の「抹殺」を書く小説家の荒涼たる魂の遍路。
感想・レビュー・書評
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本の中に「無垢人」という本が存在し、作家 緑川未来男の愛人でありながら◯子として存在を抹殺されたモデルの女性を追い求め「淫」という作品を書き上げる鈴木タマキ。彼女自身家庭がありながら担当編集者の阿部清司とドロドロのW不倫の末、憎み合って別れたという入れ子式のパラレルワールドのような設定。とにかく暗い…重い…。「無垢人」の部分のみの方が完成度高いと思うのに。可愛さ余って憎さ100倍みたいな清司の嫌がらせにげんなり。挙句死んじゃうのも狡い。タマキが彼に惹かれた理由がさっぱり分からぬ。
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OUTの続編かと勝手に想像していたが全然違った笑
んー。
私の中では桐野夏生さんの作品で最下位かも? -
期待して読んだものの、面白くないわけではないけれども、小説の形を取った、桐野さんの作家としての決意表明であるかのような印象を受けた。
主人公の作家とその担当編集者の不倫の恋。作家(女)は恋の行く末を見届けるべく、「書く」ことを選び、編集者(男)は小説から身を引く。
作家がいま書かずにいられない題は、恋愛の抹殺。二人は別れたのに、恋愛はまだ終わらない。愛し合ってても憎い、憎いけれど恋しい、別れたのにまだ終わらない関係。相手が死んでいなくなってもそれは同じ。
作品中に出てくる「無垢人」というのは、島尾なんとかって作家の「死の棘」を模したものである。「死の棘」、昔々に読んだけれども、怖かったよなあ・・・作家である夫の不倫を許せずに狂っていく妻と、妻の変貌に怯えながらも夫婦であり続ける夫。傍からみたら異常な関係であるけれど、そこまでのお互いへの執着はある意味、恋愛である気もする。夫婦で恋愛が成立するっていうのは、なんだか不思議な気がするけれど、こういう憎しみや嫉妬を媒介にするとそれはそれでリアリティがあるなと思う。
「IN]では、この「無垢人」の妻である緑川未亡人が、作家である夫が残した日記に手を加えて新しい小説を作り出している、というところで話が終わるのだが、これはぞっとした。自分の欲しい愛の形を作り上げることで、未亡人にとってはそれが真実になるわけだから。小説っていうのは、イミテーションではなくて、虚像から現実を作りあげるという意味もあるんだよなと改めて思った。
そういう意味で、桐野さんはこの本で、作家としての自分の姿勢みたいなのを強く出したのかなと思う。 -
図書館で借りる。
ここ最近の桐野夏生の作品の中では、
久々に、満足いくものだった。
傑作。
この作品のモチーフになっていると
思われる「死の棘」を
読み返したくなった。 -
あの大傑作『OUT』と何か関係があるのかと思いきやまるでなかった。別の作品です。延々と作家の内面世界のようなものを見せつけられ苦行のような読書時間でした……。
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3.3女の一生と小説家であること。この作者の考えがよくわかる内容。無垢人となる前にしっかり現実を生きようとおもった。
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作家・鈴木タマキの視点から、恋愛における抹殺とは何かを問いながら、過去の大御所作家・緑川未来男の作品に登場する愛人〇子の実在するモデルを探す過程で、タマキ自身の激しい憎悪を伴った恋愛の成れの果てがシンクロする。
〇子ではなかった茂斗子の回想にある「煙草の練習」、三浦弓実の子供の頃の思い出にある「海水浴のお豆」など、所々に突然入る桐野夏生のゆるさにすっかりやられてしまった。 -
宣伝が、「OUTから12年!」となっていたので、少しグロテスクな内容なのかと思いきや、恋愛の愛と憎悪のお話でした。
「OUT」のイメージから入ると、内容が全然違うので、切り離して読んだ方が良いと思いますあせあせ
テーマは「恋愛の抹殺」
作家自身の浮気と家族・妻との諍いを描いた「無垢人」を土台に、恋愛の抹殺をテーマに小説「淫」を執筆している作家・鈴木タマキ。
執筆のために「無垢人」の作者・緑川未来男周辺の人物に取材を進めていくうちに、自分の現実世界での不倫関係の男性のことなどが重なって、徐々に恋愛の抹殺という真意が表現されていく。
「小説とはいかなるものか」「恋愛とはこういうものだ」ということを桐野の視点から訴えかけている。
じわじわと恋愛についての意味というものが染み込んでいく読後感でしたあせあせ(飛び散る汗)
自分には難しくて、上手くレビュー描けません -
バラバラ遺体損壊を描いた「OUT」のシリーズものかと思ったら全く違った。恋愛の抹殺かあ