とりかへばや、男と女 (新潮文庫 か 27-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252216

感想・レビュー・書評

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  • 「とりかへばや」というと男と女が入れ替わった話ということしか知らなかった。男と女が入れ替わるといえば、大林宣彦監督の「転校生」。中学生?のころの小林聡美のふくらみかけた胸が強烈に印象に残っている。けれど、「とりかへばや」はそんな不思議な話ではなかった。不思議なのは一箇所だけ。男の姿をしていた姉君?が女性に戻るとき、一晩で髪が伸びたというところだけらしい。さて、臨床心理学者の河合先生がなぜこの物語を取り上げたのか、なんとなくは分かるけれど、結局はつかみ切れないまま読み終わった。しかし、本書を読むと、世の中には男が女の姿をしたり、女が男の姿をしたり、入れ替わったり、そういう話がいかに多いかが分かる。その中の一つ、女法王の話。もともと女が男の姿をし、学問を修め、最終的には認められて法王にまでなる。ところが何のかげんか女性性が出てしまい、妊娠。臨月まで誰にも気付かれず、祝祭ミサの司祭をしているとき、祭壇の前で倒れ出血、出産。ちょっとありえないとも思うけれど、現代でも人知れず、トイレで赤ん坊を産んで捨ててしまう人がいるくらいだから、あながち真っ赤なウソというわけでもないのかもしれない。モーツアルトのオペラ「コシファントゥッテ」にしても、別人になりすましてよくもばれないこと、これは物語のことだからか、などと思ってみるけれど、これまたよく考えると、他人になりすまして犯罪を犯すなんてことは現在でも起こっていることで、昔も今もその点変わらないのかもしれない。なにしろこの100年ほどで人間のまわりの環境は大きく変わったけれど、人間そのものは、脳も含めて、数万年前から大きく変わることはないのだろうから。だからこそ、昔話の中に、ヒトの無意識の世界を探るヒントがあるのだろう。ありがたや、図書館のリサイクル市で見つけました。

  • 【本の内容】
    性が入れ替わったまま成長する男女を描いた王朝文学『とりかへばや』。

    一見、荒唐無稽に思われる物語には深く重層的な心のタペストリーが隠されていた。

    「男らしさと女らしさ」「自我とエロス」「美と倫理」―。

    分裂していた要素は物語の中で結び付き、性差や社会的枠組みをしなやかに超えていく。

    深層心理学の立場から“たましいの現実”を見据え、男女の境界の危うさと心の謎を探る。

    [ 目次 ]
    第1章 なぜ『とりかへばや』か
    第2章 『とりかへばや』の物語
    第3章 男性と女性
    第4章 内なる異性
    第5章 美と愛
    第6章 物語の構造

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    [ 参考となる書評 ]

  • 男らしさ女らしさとは、ということについて興味があったので母の本棚から拝借して読んだ本。
    しかし内容はジェンダーについてだけではなく、(西洋と比較した)日本古典における性の意味だとか、男女関係や両性具有の象徴するものなどなど、いろんな見地で物語をみることができておもしろかった。
    難しかったので多くは取り込めていない気がするけど二度よむ集中力はでてこなさそうー、というのが河合隼雄の本。

  • 105円購入2006-01-10

  • 『とりかへばや』を読み解き、男と女について考える。読んでいる時は、ふむふむとわかったような気持ちもしていたが、読み終わった今、思い返してみると「結局はどういうことだっけ?」

  • 男のように育った姉(妹?)と、女のように育った弟(兄?)との生き方を描いた古典「とりかへばや物語」を取り上げ、心理学者である著者が男女に関わる様々な見解を示すという本書。男女関係がテーマとなっている世界中の文学作品を例に取り上げており著書の教養の深さと読書量の豊富さ、そしてそれぞれの文学作品を分析する力におそれいった。

    一言で言うと、とってもおもしろかった。男と女についての深い考察がなされており、我々に刺激を与えてくれる。

    個人的には男にも内面には女性性があり、女にも内面には男性性があり、男女の関係は表面に見える「男と女」の関係だけではなくて、「男と男」「女と男」「女と女」の関係性までもが関与しておりそれゆえに一筋縄ではいかない、といった部分に非常に感心した。

    河合氏の著書の中でもかなりの力作に入るのではないだろうか。

  • 古典「とりかえばや物語」に関する考察。男と女の入れ替わりを筆者の専門分野である心の面から捉えるのはもちろんだが、他の芸術や文学、科学的分析も含めて「男と女」について述べられている。
    読み始めてオペラ「アラベラ」が頭に浮かんだが、きっちりとホフマンスタールが書いたR・シュトラウスの「アラベラ」の妹の事例も出てくる。

  • 男とは?女とは?性とは?

  • 男と女の心はいかに違うか。さりとて同じか。

  • 2回目。
    だけど…んー…。

    大学のゼミの課題だった本だけど。
    当時よりはまぁまだ理解できたような気になれることが多かったけど。

    大学時代にもう少し真面目に取り組んでたら先生がヒントをくれたかも(!)しれないのに…(笑)
    でも、多分当時そもそも「女である」ということについて考えてもいなかったわけだから、
    まぁ無理だったでしょう。
    それがわかっただけでもよかったねと言う感じ。

    今ようやっとそんな段階なので男と女の結合と言われても「???」という感じ。

    そして一冊の本を理解しようと思ったらたくさんの本を読まねばならないということがわかりました。
    勉強になりました。

    私の理解力が足らず、あまり読めなかったので星は3つ。

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