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この作品からのみんなの引用
みんなの感想・レビュー・書評
(51レビュー)
仮想空間に造られたリゾート〈夏の区界〉。
南欧の港町をイメージして造られた古めかしい町で過ごすヴァカンス。
石畳の小路、おもちゃのような家、坂道、入道雲、鳴き砂の浜、
オリーブオイルとヴィネガー、格式高い〈鉱泉ホテル〉でのチェス大会。
これはそこに暮らすAIたちの話だ。
舞台だけ眺めると鳩山郁子の作品の世界みたい。
〈夏の区界〉に現実世界からの『ゲスト』が来なくなって一千年。
AIたちは永遠に続く夏休みを過ごしていた…
著者は「清新・残酷・美しさ」を心がけて書いたと記しているけれど、
私には「残酷」の割合が凄く高かった。
血しぶきは飛ばない。でもこんな恐怖は初めてかも。
普通じゃない残酷さ。骨が折れ、内臓がつぶれても死なずに苦痛だけを感じる…とか、生きたまま大男に食べられる…とか、顔をフライパンで焼かれるとかとか……
それでいて、ヒンヤリした美しさはあるのだから。
AIもここまで来たら人間。
物語の内容も残酷で醜悪だったけど、夏の区界の制作者や利用者のことを考えるともっと寒々する。
でも解説を見て自分も気を付けないといけないなと思った。
人間の欲望に蹂躙されることを理解しても、怯えた顔でゲストに微笑むAI。
人間が大嫌いなのに、人間に依存している矛盾。
まあそれはサブ要素だけどね。そういうの好き。
緻密で繊細で甘美でいてグロテスク。
グランヴァカンスがファンタジー的なアプローチだったのに対しラギッドガールはSF的なアプローチでグランヴァカンスを補完する。
全文に無駄がなく、所々に散りばめられたワードが様々な所に繋がっており、読み進めるうちにグランヴァカンスとラギッドガールの相互性に気がつく。
解説の言葉を借りると読者が物語にて出てくる侵入者と重なり、読み進めるうちに背徳感が生まれる。
何度読み直しても新たな発見がある。
作者も「清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」と言ってるが本当にそのとおりだった。残酷なのに美しい。これに尽きると思った。物語が一枚の絵画のように美しい作品だった。
小説と言うより詩的なイメージの断片のよう。あるいは、デイヴィッド・リンチがSFを書いたらこんな作品になるんじゃないかという感じです。
ゲスト(人間)が訪れなくなって1000年以上立つ仮想現実の世界のAIたちが主人公という設定のためか、残酷なシーンが数多くあるにも関わらず読後感はそれほど悪くなく、また感情移入を拒むような雰囲気があります。
なんとも不思議な気持ちになる小説でした。
1000年以上人間<ゲスト>の来訪が途絶えた仮想リゾート空間『夏の区界』。そこでは使命を失ったままのAI達が穏やかに暮していたが、突如として『蜘蛛』の大群が出現し殺戮を始めた。圧倒的な蜘蛛の力の前に為す術無く消去されてゆくAI。
だが、辛うじて生き残った者達は区界に唯一残された「鉱泉ホテル」に集結し、反撃を決意する。
今、AI達の生き残りをかけた地獄の一夜の帳が降りる。
やはり飛さんはすごいですね。
描写も設定も展開も複線の張り方もとにかく緻密、濃密。
ベートーベンみたい。
ただ本作品はあまりに痛々しくて読んでいられなくなって挫折してしまいそうになりました。。。
以前、美術館でアネット・メサジェという人の作品を初めて見た時の衝撃を思い出しました。
ともあれ、読む人の五感にここまでの働きかけが出来る作家はそういないと思います。
美しくて残酷…的な内容に触れるレビュウは他者に譲るとして、極私的な感想を。
なんというか、読んでいる最中、多幸感に包まれるような貴重な体験となった。行間にまで滲み出る有形無形の情景描写の素晴らしさは勿論のこと、あえて使う「ひらがな」や、喋り言葉として曖昧に使われるようなコトバをテキストにして定着(明文化)させる手腕が素晴らしい。まるで古典を読んでいるかのような錯覚さえおぼえた。
そして、そうした優れたテキストワークが「美しくて残酷」な物語に違和感なくフィットしている。文句なし!☆10個!
しかし残念なのは、背表紙等で謳われる梗概ですね。嘘は云ってないけど、あれでは従来どおりの読者しか捕まえられない。この「美しくて残酷」な物語は、そうしたニッチ市場を越えたところで読み伝えられるべきものだと思う。
とにかくすごい小説、の一言に尽きる。巻末の解説に「完璧な小説」という表現があるのですが、まさしくそう呼ばれるにふさわしい作品のひとつではないかと。ノスタルジックで背徳的で、残酷で美しい。これ以上の説明は野暮なだけかな、と感じてしまいます。
これほどに五感の全てに働きかけてくる、"感触"がある小説を初めて読んだよ。 嘘だと思ったら冒頭を立ち読みして欲しい。 夏の海や空のきらめき、朝食の味や食感、海へと続く石畳と家々、砂浜の感触。読んでるだけで気持ちいい。 (余談だが、『魔女の宅急便』でキキが最初の街に行き着くまでの気持ち良さを思い出した) 同時に、こんな吐き気をもよおす、読者に痛みすらも与えるグロテスクな小説も読... 続きを読む »
飛浩隆「グラン・ヴァカンス」を読み始める。電脳コイルのAI版、といった感じの印象か?グラスアイもメタバグっぽいものなのかしら?なんだか面白そう。 わけがわからないながらも楽しめる。「象られた力」の短編は、わからない!というだけの作品もあったけれど、「グラン・ヴァカンス」は基本構造が「蜘蛛」達との攻防戦なので、そこが分かりやすい分読みやすい。 飛浩隆「グラン・ヴァカンス」読了。後半あたり... 続きを読む »
9/28
AIなのにビルドゥングスロマンを成り立たせたところに凄みと意義を感じる。
ただし、「苦痛」の描写がかえって痛みを中和してしまった印象を受けた。
適度な読みやすさを確保するためには仕方のないことかもしれない。
センスオブワンダーに満ちたアイデアももちろんのことだが、飛浩隆は極めて優れた情景描写力の持ち主なんだと思う。途方もない世界観の広さもさながら、ほとんど戦闘描写だけでこんな圧倒的傑作を生んでしまうなんて。決して難解な表現を使わないのに、そこらの純文学作家よりも上質で精緻な文体。にしても、遅筆な著者が専業作家になれるくらい売れてくれないかな。早く続きが読みた過ぎる。グロいのが苦手な人にはオススメできないけど、個人的評価は★6。
SFというカテゴライズだが、ファンタジー的内容。
ラスト二章は楽しめたが、それまではあまり乗り切れなかった。世界観や文章は綺麗で良かったのだが、人物に感情移入が出来なかった為であると思う。
最高!!。1000年放棄された仮想リゾートを舞台にしたSF。永遠に続く夏という舞台設定がもうたまらない。魅力的なAIたちと蜘蛛との攻防を描写する残酷で、儚くも美しいイメージの奔流に圧倒される。大満足です!!。
続編があると知らずに購入。
世界観の完成度が異常に高い。その一言に尽きる。
ネット内の世界という設定自体が世界の存在理由を明確に出来ることもその骨組みの強化に一役買っているが、最終的な完成度の高さはその描写力によりもたらされているように感じる。
おかげで苦痛の表現がリアルで、読みながら何度か顔を顰めてしまった。いでででで。
![第3回 ブクログ大賞[2012]](/ad/1201/award_booklog200_65.gif)

