ツリーハウス

著者 :
  • 文藝春秋
3.90
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289502

作品紹介・あらすじ

謎の多い祖父の戸籍、沈黙が隠した家族の過去。すべての家庭の床下には、戦争の記憶が埋まっている。新宿角筈『翡翠飯店』クロニクル。

感想・レビュー・書評

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  • R3.8.30 読了。

     NHKのファミリーヒストリアみたいな物語だった。時代背景は、戦前から平成まで。
     まさか祖父の臨終シーンから始まるとは思っても見なかった。それと本編中にバラバラな家族と表現されていたが、実家の翡翠飯店に集結している姿を見ると、まったくそんなことはないと思えてしまう。
    なかなか面白い題材の小説でした。
    自分の家族はどんな人生を歩んできたのか、気になりますね。

    ・「私、赤ん坊ができてすごくうれしいんだよ。卒業も就職も諦めてない。だれにも人生をめちゃくちゃになんてされてないから、心配しないで。私たちにしか作れない家族を作ろう。」

  • 決して功なり名を遂げた話でもなく、引き揚げ苦労話でもない どちらかと言えばカッコよくない満州からの帰国夫婦の三世代に及ぶ物語だけどメッセージが響いてきた。
    泰造とヤエは満州で出会い成り行きで夫婦となって引き揚げののちにささやかな中華料理店「翡翠飯店」を開き日々の暮らしに追われながら昭和の時代を生きる。
    背景に起きる事故事件の数々は我々もよく知る出来事で等身大で首肯しながら読み進める。
    不恰好に逃げながら生きたようだが実は逃げるのでなく向かっていたのだ と思わせる構成。誰もが殆ど感じる ひたすら続く退屈な毎日、でも大丈夫だなんとかなると。
    ヤエの言葉「何をした人生でもない 人の役にも立たなかった それでも死なないでいた 生かされた」と。

    • アールグレイさん
      めんべいさん、
      こんにちは!ツリーハウス、お読みになったんですね。
      この本はまだ私が読書にはまり始めたばかりの頃、読んだ本です。
      中国残留孤...
      めんべいさん、
      こんにちは!ツリーハウス、お読みになったんですね。
      この本はまだ私が読書にはまり始めたばかりの頃、読んだ本です。
      中国残留孤児という言葉を思い出しました。
      辛い本だなあと、感じながら読んだものです。
      また、もう一度読んでみたいと大分前から思っていますが、なかなか思うように行きません。今、寺地はるなさんの「雨夜の星たち」です。昨夜から読み始めたばかりです。
      (*∇∃´`*)
      2021/07/12
    • ありが亭めんべいさん
      ゆうママさん こんにちは、いつも有難うございます。一昔前の作品ですけど結構奥深いなあ と思いながら読了しました。角田さん作品と言えば八日目の...
      ゆうママさん こんにちは、いつも有難うございます。一昔前の作品ですけど結構奥深いなあ と思いながら読了しました。角田さん作品と言えば八日目の蝉や対岸の彼女など想起しますが、これはちょっと違った感じの作品でした。
      2021/07/12
  • ずっと読みたくて読めなかった本。
    もしかしたら今読んで良かったのかも。

    ここに書かれているのは生きるってことそのものなのではないかという気がします。
    いや、よく分かってないのだけど、生きる目的とか、意味とか、そういう飾りも飲みこんで、生きるということまるごと。
    それがどんなに無意味で味気ないかということ。
    そしてどんなに強くてすごいことかということ。
    そんなことが書かれているのではないでしょうか。
    どうなんでしょうか。
    人の歴史の大きさに圧倒されてしまって、うまく消化出来てません。
    でも、1人ずつがこんなに複雑な存在であるということは、こわくもあり、救いでもあるんだなぁと思います。 

    人生順風満帆な人はこの小説には登場せず、みんながみんな自分に失望して、傷ついて、諦めて、何かのためではなく生きているように見えます。
    その強さを眩しく思いながら、きっと私も変わらないと気付きます。
    私も同じように生きていると。
    そのしぶとさは私にとって宝物です。
    しぶとくないと生きられない。それでいいんだよと言ってもらえたような気がします。
    生きていることを認めてもらえた。これは私にとってそういう小説です。

  • 壮大な家族の物語り。
    満洲時代〜戦後の日本、新宿に地を付け中華屋を始め、昭和を生き、天皇崩御による平成の幕開け。大学闘争、赤軍の立てこもり、西口のバス火災、震災、オウムの事件などなど時代背景がしっかりある中で、家族とは問う。
    逃げてきた、それでよかった。お陰様で長生きした。だから教えられる事なんてないんだ。
    最後に長春へ祖母と太二郎とルーツ探しに行く良嗣。
    長編で12章に分かれ、段々と現代になってくる。時代背景と、キャラクターの確立でとてもリアルに読めたのであっという間。面白かった。

  • 圧倒的な、大河小説。
    満州で出会った二人の男女が、その生をまっとうするまでを描く。
    「逃げる」という言葉が重く響く。
    時代に流されるな、流されるくらいなら全力で逃げろ。逃げるのは悪いことじゃない。
    それでも、逃げたということに重い罪悪感も抱えつつ、人生を生きる。
    昭和という濁流を、必死に泳いだ人々の物語。

    「遠くまでいこうなんて思わなかった。どうしよう、どうしようって言ったまま気がついたらずいぶん遠くにいたんだよ」
    「ぼくもね、かあさん、なんだかすごく遠くにきてしまった気がするよ。そんなつもりはないのに、不思議だね。気づくとずいぶん遠くにきていて、帰れない」

    人生をここまで的確に表現した著者に、拍手を送りたい。

  • 誰にでも・・人に歴史あり、と改めて思う。それぞれの一生懸命さと、反対にうまくいかないこともたくさん。
    でも悩みながら、反発したり近くなったりしながら家族にささえられていく。

    時代に翻弄され、時にうまく流され、時に巻き込まれ、それでも生きていく。与えられた時代のその環境の中で、生きていくということを、感じる。不器用でも、自分の人生をいきていくのだ。ひとりひとりが愛しい。

    「闘うことも逃げることもせず、やすやすと時代にのみこまれんな」祖母の言葉が重い。

  • 角田光代さんは作家の中でも好きな方でしたけど、この『ツリーハウス』は今まで読んだ角田さんの本の中でも一番良かったです。

    この物語は大河ドラマと言ってもいい。ただ、歴史を動かしたような、あるいは作ったような人物ではなく、時代の大きな流れに流され、あるときはその濁流から逃れ、逃げて逃げて、その日その日を生き抜いて行った、言わば歴史に翻弄されつつ生きてきた人々の物語。時の流れのなかで祖父母、父母、子供達の3代が生き抜いてきたその証しだ。カッコイイ、人が羨むような人生ではないのだろう。だが、この人達の物語は胸を熱くさせ、深い共感を呼び起こす。

    私自身、異国の地に住んでいるので、祖母のヤエの言葉も身に染みて感じました。私自身も、ずっと、根無し草のように感じてきたけれども、過去を悔いたこともあったけれど、この本に出会えたお陰でもう悔やまないし、迷わないで行けそうな気がしてきました。角田光代さんがますます好きになりました。

  • おもしろかった。角田光代にはずれなしです。
    この人の好きなところは、ものごとを深く考えずに生きている登場人物にも、人生の深さを感じさせるところ。強い意思がなくても、行き当たりばったりに生きても、その人だけのドラマがある。

  • 自分以外の他人の人生を垣間見れるのが小説だとすれば、僕にとって小説は、僕自身の価値観を見つめ直すきっかけになることもあります。
    物事の善悪は、視点や時代によって変わっていくものだということを改めて気づかされました。そして物事の全ては最終的には時代に飲み込まれていくのでしょう。

    戦後の混沌とした時代や高度経済成長期を経験してきた祖父母や両親は、そのときにはその時代を生きる認識など全くなく、ただ生きることに必死であっただけなのでしょうが、今振り返ってみれば、現代を生きる僕を幸せだとも感じるだろうし、不幸だとも感じられると思います。

    僕にとっては今しかないので、幸せな時代だとか不幸な時代だという感覚はないのですが、その感覚がまさに時代に飲み込まれているのだろうと思いました。

    「過去は消えないから自分たちは今ここにいる」という太二郎の言葉には深い共感が得られ、読了後、自分のルーツや家族に一層の愛着が湧きました。

  • 凄い!!圧倒的な物語だった。
    新宿角筈にある『翡翠飯店』の三代に渡る年代記。
    祖父の死によって物語は始まった。
    うちの家族は何かおかしい、「へん」と感じる孫の良嗣。
    てんでバラバラな家族、無関心無干渉な両親、祖父母は満州からの引き上げ者だったらしい。知らないことが多すぎる。
    家族のルーツを探すために良嗣は祖母と一緒に祖父母が出会った異国の地を旅することに。
    派手さはなくてむしろ角田さんにしては抑え目の語り口で物語は淡々と進んでいくのだが、それが返ってずっしりとした存在感で僕の心に突き刺さってくる。
    祖父母は戦争から生きるために逃げた。逃げて逃げて逃げっぱなしの人生だった。
    敗戦そして終戦、日本へ引き上げの途中での出産で生まれた良嗣の父親の慎之輔。

    そういう時代だったのだ。
    僕の母親は戦争で疎開中の上海で生まれた。
    うちの家族もつながりが希薄だったような気がする。

    連合赤軍による浅間山荘事件、上野動物園のパンダ、高度経済成長、昭和天皇崩御、バブル崩壊、阪神大震災、オウム真理教地下鉄サリン事件。
    昭和から平成へ時代史をなぞるように家族の物語は進んでいく。
    自分自身が生きてきた時代背景と重なり合って父と母のことを思い出す。
    よく考えると僕だって両親の人生のことはよく知らない。
    ただこうして今も裕福とは言えないけどそれなりに生きているのは両親のおかげだと思う。
    バラバラに見えても家族は繋がっている。家族ひとりひとりにドラマがあり歴史がある。
    どっしり重い根っこはなくともこれからの希望はある。
    樹々の枝のように曲がりくねりながらも伸びていく。
    それが家族なんだろうなっと思った。
    読み終わったあと、じんとした熱い感情とともに、静かな感動の波がやってくるそんなずっしりとした重みをもった物語でした。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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