江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫 え 6-1)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (653ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334735289

感想・レビュー・書評

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  • これは、江戸川乱歩の最高傑作かもしれない。少なくとも僕が今まで読んだ中では1番面白い。
    まずキャラクター普通のサラリーマンである主人公とその恋人初代を中心に、主人公に横恋慕する男、あっさり殺されてしまう素人探偵、曲馬団の少年など、曲者ぞろいのキャラクターが勢ぞろいする。
    謎の殺人事件、そこに関わるのは家系図。

    次々と明かされていく新事実。まさに点と点がつながって線になっていくのを見るようだ。

    今の時代では書けないであろう登場人物や表現がどんどん出てくる。いわゆる差別表現である。僕は、差別表現に過敏になるのはいかがなものかと思う。もちろん、不快に思う人もいるだろうが、本作のような扱いであれば、物語の進行上良いのではないかと思う。

    前半は様々ななぞかけと、それを少しずつ解いて見せていくすぎる。後半はいわゆるエンターテイメント。前半で仕込んでおいたいろいろな伏線が、大掛かりな舞台装置に変わっていく。

    江戸川乱歩の小説が好きな人はぜひ一読すべきだろう。

  • 孤島の鬼だけ読んだ。諸戸の生い立ちや性癖、蓑浦の恋愛事情、、実際にあったらゾッとする感じが特に終盤は読んでいてドキドキした。最後にすべての辻褄が合って世界観もよく作られてあっておもしろかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「最後にすべての辻褄が合って」
      随分昔に読んだので、細かな部分は忘れてしまいましたが、苦手な部分を乗り越えるとスッキリしたような、、、乱歩は...
      「最後にすべての辻褄が合って」
      随分昔に読んだので、細かな部分は忘れてしまいましたが、苦手な部分を乗り越えるとスッキリしたような、、、乱歩は苦手な部分と、怖いモノ見たさで読んじゃう部分があります。。。
      2012/10/04
  • なるほどこれは面白い。恋人を殺された(密室殺人!)美貌の青年である主人公に恋情を抱く友人の医師(こちらも美青年…)、土蔵に監禁されている美少女の手記、孤島に潜入しての洞くつの大冒険、とまぁ美味しいモノが次々とでてくる。

    『猟奇の果』も私の好み。自分の親友にそっくりの人間が表れて、最初は些細な悪戯程度だったのだが、徐々に事件が大がかりになっていき……自分の目の前にいるのは本当の友人なのか、そっくりさんの方なのか、という心理サスペンスの色ももちつつ、(後半、話が破綻しそうになってきたので)明智も登場してエイヤッと纏めるいつものパターンですが(笑)。

  • 「孤島の鬼」は途中からなんとなく展開が読めるものであったが、江戸川乱歩の「美しさ」に対する考え方や、作品内で現れる「美しさ」の概念に考えさせられるところが多くあった。
    江戸川乱歩の多くの作品に通じている「異質」ということの意味を深く考えさせられる。
    推理が簡単であってもどんどんと読み進めたくなるような作品だった。

    「猟奇の果」はミステリー慣れしていないからかも知れないが、あまり予想できない展開だった。
    変態的な物を感じるシーンも多いが、江戸川乱歩特有の美しさがあり、いやらしくない。
    またあまり気持ち悪さやグロさというものがないようにも感じたので、そういったのが苦手だが乱歩が読んでみたいという人にはおすすめしたい。

  • 乱歩の作品の中で、どれだけ他のものを読んでいっても、未だに一番好きな作品が「孤島の鬼」です。

    何が好きかと言われるとはっきりと具体的に答えられないのですが、その世界観、島の描写、そして何にも増して人間描写の表現力に惹かれているのだと思います。
    禍々しい世界なのに、どこか愛があるような。

    再読ですが、一度目は無理矢理のハッピーエンドに主人公側の気持ちになってほっとしたものの、二度目は、諸戸のあまりの悲しさにちょっと空しくなってしまいました。
    ここで一番怖いのは、主人公の抱く諸戸への感情と、そして諸戸の悲しいほどの恋。
    考えてみたら、白髪になったのは主人公だけ。何よりも主人公が怖かったのは、暗闇でも死でもましてや屋敷の住人たちでもなく、諸戸の愛だったのですよね。

    そして一緒に綴られた「猟奇の果」は、明智探偵の活躍ということで、また180度違う(人間改造という点をみれば本当に対照的な)作品でした。そのためか、全体的にかなり明るい。

    最後の一文は、現代社会に向けての警告のようにもとれて、現代が昔からみればとんでもない社会なのだろうな、という気になりました。

    個人的には、「もうひとつの結末」のほうが辻褄が合う部分が多いので、好きだったりもします。

  • 第4巻も楽しく拝読いたしました。

    表題の孤島の鬼は、主人公とその妻がある変わった容貌をしており、なぜそうなったのか、その経緯を知る物語。主人公がある島の恐ろしい秘密に、思いがけず巻き込まれていきます。何度も、もうダメかもしれない…と読み手が思ってしまうようなスリルがあり、人しかでてこないはずなのに、何か化け物でもでてくるのではと思わせるほどのおどろおどろしさもあり、乱歩のエロ・グロ・ナンセンスを余すことなく楽しめる作品だと思いました。
    乱歩は暗闇の迷路に閉じ込められるシチュエーション、好きなんですかね?この後もいろんな作品を読んで、彼を知っていきたいです。

    猟奇の果は、前半と後半でかなり毛色の違う作品でした。現代に生きているとそっくりの二人がいる描写でもなんとなく、どうやっているのか察しがついてしまうのが悲しいですね……。
    後半から突如登場する明智小五郎は、やはりスーパーヒーローというか、必ず事件を解決してくれる安心感があるので、どんな展開になっても最終的にはハッピーエンドだなと予想がついてしまうのももったいないです。その痛快さも良しといえばそうなのですが。


    光文社文庫の全集は乱歩自身による作品の批評を読めるのが魅力的で集めはじめましたが、文章の検閲が厳しいのか、ところどころ虫食い状態になっているのが非常に残念です…
    社会通念的によろしくない表現があるのは承知の上で、全文読んでみたいなと思うので、「孤島の鬼」については別の出版社のものにも目を通したいと思いました。

  • 「孤島の鬼」諸戸の箕浦への恋慕描写(洞窟でのアレとか冒頭のプラトニックエピソード??とか…)と、吉ちゃんの秀ちゃんへの求愛描写が一番刺さったもんな・・・。やっぱり恋愛小説としての部分が個人的には印象に残ってる・・・何度も読んでしまう…。「人でなしの恋」の奥さんのアレとかでも分かるけど、そういうの上手いんだよな乱歩・・・。ラスト2行で心臓がヒンッなる…。
    「猟奇の果」はなんか途中からダイナミック整形かな…となんとなく予想通りなオチで長編な割に尻切れトンボだったな…。でも乱歩の長編ってそんな感じだよねいつも…。でも奇々怪々に血しぶきを上げる怪人物な雰囲気は雰囲気たっぷりだな、やっぱり…。しかし声はどう変えていたんだ…大川博士…。

  • 孤島の鬼は、前半中盤後半の構成が違うが、何か読ませる感じ。猟奇の果は、前半後半が何かチグハグ。前半で終わるので、よかったかなという感じがする。

  • 本を開いたら、二段組の小さな字で書かれてあったので、読めるか心配したけど、すらすらと読めた。

    乱歩の作品は活字では初めてだけど、90年前の小説にぐいぐい引き込まれていった。

  • 「孤島の鬼」
    せむしの男がせむしの国を作ろうとするとか中々飛んだ発想なのは乱歩っぽい。ただラスボスの丈五郎が財宝見つけて発狂エンドなのは肩透かし感はあったかな。残虐非道な人間だけど所詮は小物、という事なのだろうか。冒頭の蓑浦君の奥さんはてっきり初江だと思っててどうにかして生き返るのか?と勘違いしながら読んでたけど、あれは秀ちゃん(緑)だったのね。作中ずっと漂う淫靡で妖しげな昏い雰囲気はさすが乱歩。


    「猟奇の果」
    青木が妻の不貞を疑う決定打のSMプレイの知識を芳江はどこで仕入れてきたのか?とか、整形したからといって人格まで変わるのか?とか消化不良な所はあった。まさか明智小五郎が出てくるとは思わなかったけど、コレは結末が2つあるみたいなので明智小五郎居ない方が収まりは良いかな。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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