スナッチ

著者 :
  • 光文社
3.12
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本棚登録 : 161
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334926366

感想・レビュー・書評

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  • 西澤保彦先生の本は初挑戦でしたが、タイムスリップというのとも少し違い、特殊な内容でしたが読みやすく「ぼく」に共感しやすくサクサク読めました。ベツバオリとかサシモドシとかのネーミングもユニークだし、切ない部分もありつつもほのぼの感もあり、好みの作品でした。

  • SF特殊設定ミステリ。突然、体を別の異世界生命体に乗っ取られた(ベツバオリ)主人公が、31年経て意識を取り戻す(サシモドシ)。設定は、海外SFからのインスパイアの様ですが、なんとも言えない微妙に地味な小説。異世界生命体が癌の影響を気にして、オーガニックな生活をする部分が滑稽だが冗長。
    ミステリとしては、意識を戻した瞬間に、自分の別れた恋人の死、連続殺人のミッシングリングもの。フーダニット(犯人当て)の要素よりもホワイダニット(隠された動機)がテーマと感じた。
    伏線が結構いろいろあったわりには、回収の仕方がやや雑でパンチの弱い結末だった。

  • ベツバオリがサシモドシ。
    地球外生物に羽織られた人間が、31年振りに差し戻ってきた。羽織った方が冷静に語るものだから「侵略者で体を乗っ取ったくせに何を偉そうに」と思った。読み進めるうちに少しずつその心情にも寄り添えるようになった。結末を覚悟していたのかも。
    「ぼく」と「"僕"」の語り分けも良かった。叙述トリックかと疑って、注意して読んだ。最後は「ぼく」だけになっていた。31年分の記憶を一気に背負い込むのは嫌だな。
    マザコンをこじらせた男が何人も殺す。ちょっと無理があるか。事件がなくとも坦々と日常を描くだけでも良かったと思う

  • 西澤保彦版『スキップ』だと思った。ハタチそこそこの若者からいきなり五十歳の自分、しかも結婚する前の彼女はもう離婚していたり、自分の両親は亡くなっていたりといきなり無慈悲な展開。
    ただその間身体をのっとっていた宇宙人との会話はよかった。同じ身体を共有している同志、何とか生きていく道を探そうとする、運命共同体。
    何が起こっても自分の最善を信じて進むしかないのだと勇気をもらえた。

  • SFのようなミステリーのような小説。著者が住む高知県を舞台にした小説。いまひとつ盛り上がりに欠けた。

  • 初、西澤保彦作品。
    過去に戻る設定の本は何冊か読みましたが、未来へいき、しかも自分の体の中に意識だけで蘇るという設定は新鮮でした。
    過去へ戻るなら、自分の人生の分岐点を見直せるし、この先どう進めばよいかも分かる。
    でも、31年後に突然放り出されたら、何をしたらよいか分からず、不安で仕方ないだろうな。
    しかも自分の意志で決めていない未来なんて考えただけでも怖くなる。。
    空白の31年間の中には出会いと別れがあっただろうが、
    自分の知らないうちに両親が亡くなってるのは辛すぎる。。
    そんなことを考えていると、ミステリーの部分は犯人も分かっていたことだし、どうでも良いことに思えてしまいました。

    【22歳だった。次の日、ぼくは53歳になっていた。空白の31年。ぼくは、きみは、ぼくたちは、少しは幸せだったのだろうか。彼を襲ったのは、不条理でやりきれない、人生の黄金期の収奪。あらかじめ失われた、愛しい妻との日々。おぼえのない過去を振り返る彼に、さらなる危険が迫る】

  • 一つの身体に二つの自我。主自我と副自我があり、身体を動かせるのは主自我だけ。
    こんな設定から井上夢人「ダレカガナカニイル…」を思い出した。
    中身は全然違う。こっちの方が私の好み。

    外宇宙より飛来した異種生命体にハオラれ、身体をのっとられる現象=ベツバオリが1977年1月に起きた。以来、主人公の奈路充生はベツバオリの人格が動かしていた。ところが2008年2月、ふとしたきっかけでもとの人格が復活=サシモドシがあり、一つの身体に二つの人格が同居することとなる。サシモドシが起こったベツバオリは、癌となり高い確率で死に至る。

    面白いと思ったのは、ベツバオリやサシモドシが社会現象として認知されていること。区役所に行けば、サシモドシした者にカウンセリングをしてくれる。
    ベツバオリが元自我の存在を認めている点も面白い。こういう話は、訳の分からない副自我とそれにストレスを感じる主自我という組み合わせになることが多い気がする。この話の主自我は、副自我に対し食品添加物の危険性や抗癌剤の効果について長々と話すので、笑ってしまった。何この展開w

    ミステリー要素としては、元妻を含む連続殺人事件がある。おまけみたいなものだけど。

    ジャック・フィニイ「盗まれた街」にインスパイアされたらしいので、それも読まないと……!小室孝太郎さんの「ワースト」も気になる。

  • ストーリーを進める装置の仕込まれ方が面白い。楡咲さんは気さくな人柄ということであるから、最初の雑談で主人公がうっかり口を滑らせてしまっていたら、結末の雰囲気は変わってしまうだろう。

  • ミステリとしてもSFとしても中途半端だとあとがきに書いていたけれども、まさしくそのとおりだと思う。
    唯一抗癌剤の話は興味深かった。

  • 前作の「夢は枯れ野をかけめぐる」もそうだけど、今回も泣けます。主人公のこれからの人生にエールを送りたいです。

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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