孤宿の人 上

著者 :
  • 新人物往来社
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感想 : 191
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784404032577

作品紹介・あらすじ

それは海うさぎとともにやって来た!讃岐国丸海藩-。この地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくることに。海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な毒死や怪異が小藩を襲う…。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。

    舞台は、第十一代将軍徳川家斉の頃の讃岐丸海藩。
    江戸幕府、勘定奉行加賀殿が、部下妻子を殺め流人となって丸海藩お預けとなった。
    小藩である丸海藩では、罪人とはいえ、幕府の要人だったお方を預かることとなり、藩を挙げて粗相のないようピリピリとした日々が始まった…。

    家斉の時代、実際に香川の丸亀藩(丸亀製麺で有名な)にお預けとなった、勘定奉行鳥居殿の話をモデルにしていると思われる。


    以前読んだ時には、主人公の一人である「ほう」という11歳の少女の身の上と、その健気さに心を打たれた事が一番印象に残っていた。

    今回の上巻の読後は、丸海藩の要職者が幕府を忖度し、末端の者達がその犠牲になるという流れが、まるで森友問題みたいだなぁ…とか、もう一人の主人公の女引き手(江戸でいう下引き)「宇佐」が、親分が変わった途端に番小屋から追い出される様が、女子の職業差別だなぁ…などと現代の問題と重なるように感じた。下巻も再読しよう。2020.5.15

  • 久しぶりの宮部さん、さすがです
    ページを開くなり物語の中にグイグイ引き込まれていく

    育たずに死ぬことを望まれて生まれてきた「ほう」
    まるで悪霊に取り憑かれているかのように過酷な運命がほうにのしかかる

    厄払いのため江戸から遥々讃岐金毘羅詣でへ、
    ひょんなことから丸海藩の藩医を務める井上家の世話になるが、自分の娘か妹のようにして可愛がってくれた琴江の突然の死をきっかけに次々と起こる怪事件

    江戸幕府勘定奉行の加賀殿が流人となり丸海藩預かりという大役を仰せつかったことにより、悪霊説など飛び交い、諸説に翻弄される人々

    「丸海藩には、最早この課役から逃れることはできず、失敗も許されず、加賀殿をお預かりし、粛々とお守りしてゆくしかない。何が起ころうと、どんな苦役を忍ばねばならずとも、いくつもの秘密を抱えることになろうとも」
    啓一郎が宇佐に言い聞かせる言葉が重い

    訳のわからぬまま、懸命にその時々の自分の務めを果たし懸命に生きようとするほうが健気でいじらしい
    阿呆のほうとひどい名をつけられ、可愛がられるということを知らなかったほうにも親身になって世話をし可愛がってくれる宇佐や渡部一馬・石野様の存在ができ、読者もホッとするが、ほうの行く末は?

    次々と起こる怪事件の真相は?
    涸滝のお屋敷に幽閉された加賀殿は?

    それらの私の疑問は下巻で解決されるといいのだが・・・

  • ちょっと頭痛が続いているのもあって
    新しい本を読む気力がなくって
    大好きな本を再読したのです
    正直でやさしくかわいい”ほう”に会ってきました
    しっかりもので心優しい”宇佐”に会ってきました
    鬼と呼ばれる”加賀さま”にも会ってきました
    大好きな人たちばかりなのです
    江戸徳川の時代の、讃岐でのお話です
    あの時代てあってこその規律や常識が
    真面目でやさしい人たちを苦しめ
    でも、美しい時代だったんだと思う
    宮部さんの小説の中で、とても好きな小説です

  • 2024年お初の読了。今年のめあては100冊だ。
    讃岐の丸海藩、丸亀のことだろうな。江戸から流されて来る勘定奉行をめぐって市井の者の暮らしにまで暗い影がさす。頻発する事件、毒、鬼、謎だらけだ。はやく下巻が読みたいが、他にも待ってる本があってどうしよう。

  • 時代小説おすすめで検索すると出てきた中に。
    宮部みゆきさんは、誰しもが認めるストーリーテラー。
    ベストセラーを長く輩出し続ける作家さん。

    宮部さんの数多くの作品を読むだけで、かなりの冊数になりそうだ。
    そんなこともあり、上手い作家ということは承知だったが、読まないでおいた作家さん。

    今回上下巻の長編。
    ハードカバー2冊はかなりの量感!!



    上巻読了!
    唸るしかない!
    ある不幸せで過酷な人生を持つ少女が登場し、その周りで色々な事件が起こる。
    しかもその事件は無かったことにされてしまう運命。
    少女にとって初めての優しい人を殺され、居場所がなくなり、思い遣っていた人も離されてしまう。

    そこには家斉の祟りを怖がる気性から、腹を切ることはせずに押し込めとなった高官の世話をすることになった、丸海藩という小さな藩に振ってわいたような災い。

    いくつもの、伏線が織りなす物語はぼんやり読んでいたら、真実を見逃してしまうんじゃないか?という思いさえ読者に与える。
    後半へ続くが期待は高まる。

  • それは海うさぎとともにやってきた。讃岐国丸海藩――。この地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくることに。海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な毒死や怪異が小藩を襲う……。

  • 讃岐の国丸海藩の枯滝の屋敷に、幕府の罪人、加賀殿が流されてきた。
    上巻では丸海藩に住む人々が、それによって不安をあおられ、そして振り回されて右往左往する姿が描かれている。
    匙の井上家の啓一郎先生に舷洲先生、引手見習の宇佐、町役所同心の渡辺、そしてほう。。。
    再読だから(15年以上ぶりだが)加賀さまが鬼でないことは知ってるんだけれど、実際自分が丸海にいたら、どれだけ不安だったことだろう。
    にしても、男の子は勇敢すぎても困りものである。彼らの一家の行く末も、気にせずにはいられない。
    そしてもちろん宇佐も。

  • はるばる江戸から讃岐の金毘羅さまを拝みに旅しなくてはならなかったほうがお連れの女中に置き去りにされ、やっと匙の井上家に引き取られてはじめて人としての暮らしになるかと思われたら、優しい琴江さんが毒殺されてしまう。次にほうは引手の宇佐にかわいがられたかと思うと丸海藩が預かった加賀殿が住んでいる涸滝の屋敷にいくことになる。周りの人物描写が細かく丁寧。運命に翻弄される幼児の目を通して展開していく。下巻にいこう。

  • 著者の最高傑作と言うことでBSの「深読み読書会」であらすじは知ってしまったが、著者は架空の藩をひとつ作ってしまった、丸亀藩とあの金さんの宿敵鳥居耀蔵がモデルのようである。わざわざ最高傑作と言わなくともこの著者の作品は全て最高傑作と言っていいだろう。丹念な描写は時には話の進行を遅らせイライラさせられる面はあるが、これが嘘の物語なのにリアリティをもたらせる。物語は前半を終えいよいよ急展開になりそうだし、宇佐は可哀想なことになりそうだが、ほうと加賀との心の交流が楽しみだ。下巻につづく。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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