少年たちはなぜ人を殺すのか (ちくま文庫 み 18-5)

  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426246

作品紹介・あらすじ

神戸・酒鬼薔薇事件、佐賀・バスジャック事件、愛知・主婦刺殺事件…1990年前後に相次いだ少年の殺人事件を受け、社会学者の宮台真司と精神科医の香山リカが連続対談した一冊。「少年たちの動機を探しても無意味であり、人を殺すことの敷居が低くなっている」その社会的背景を分析しようとする宮台と、臨床家の立場から少年たちの気持ちに寄り添おうとする香山の掛け合いにより、一連の事件の深層に迫っていく。新たな宮台と香山の対談を附す。

感想・レビュー・書評

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  • 話難しいし、タイムラグがあるし…。「底が抜ける」という言葉は面白かった。

  • 社会学者の宮台真司と、精神科医の香山リカの対談。神戸の酒鬼薔薇事件や佐賀のバス・ジャック事件など、少年たちが起こした殺人事件をとりあげて、彼らが犯罪へと走った理由やその対策などが語られています。また、佐賀のバス・ジャック事件を題材に『ユリイカ』を制作した映画監督の青山真治を交えた鼎談や、宮台・香山が参加したシンポジウムも収録されています。

    伝統的な共生価値がうしなわれて、自分の立っている場所の「底が抜ける」という事態が起こりはじめたことで、まじめな少年たちによる「理由なき殺人」が起こるようになったのではないかというのが、両者の共通の理解になっています。

    とくに印象的だったのは、どのようにすれば犯罪を防ぐことができるのかということだけを考えるのではなく、犯罪が起こったときに社会はそれに対してどのように対応するべきなのかということを考えておかなければならないという宮台の指摘です。『ユリイカ』で役所広司が演じる運転手がとった行動は、少年犯罪が増えたときにも「矜持を失わないため」の「倫理的な振る舞い」なのであり、それが少年犯罪を減らす効果があるのかということだけに目を向けて、その倫理性を語ることから逃げつづけるのならば、「少年犯罪を減らすこと「すら」できない」と、宮台は主張しています。

  • 観たくなった映画リスト

    「ユリイカ」
    「アサシンズ」
    「カリスマ」
    「キュア」

  • 10103

  • 「底が抜けた」存在について、青山真治さんの作品「ユリイカ」や酒鬼薔薇聖斗事件、長崎県バスジャック事件など材料に書かれた作品。「底が抜けた」とは、「脱社会的な存在」とほぼ同じ意味で使われていたように思う。表題の「少年たちはなぜ人を殺すのか」という問いかけの答えとしては、「殺人をすることのハードルが下がっているから」という風に書かれている。なぜハードルが下がっているのかは、分からない。しかし、このような「底が抜けた存在」をこれ以上出さないこと、「底が抜けた存在」を「こちら側」の世界に引き止めることが重要だと書かれている。
    女の子は自分自身を化粧やピアスなどで「チューニング」し、男の子は自分自身の世界を作ったり、自分が生きている社会を変革しようとすることで、社会との関係性を調節してきた、というところにとても共感した。女の子の場合は想像だが、男の子に関しては自分に実体験を回想しながら、「そうかもしれない」と納得した。
    また「少年法改定」に関する箇所の宮台さんのロジックがとてもかっこよかった\(^o^)/

  • 酒鬼薔薇聖斗が生まれた事は個人的に人事とは思えなかったので、読んで良かったと思う。

    彼が発露したのは決して不思議なことじゃない事がわかるし、彼らのようなツラさに自分達が該当する部分はあると思う。

  • 下に用語解説などがついているので、結構読みやすかったです。酒鬼薔薇事件などの具体例をあげて、対談形式で書かれています。「底が抜けている社会」やマスメディアとのうんぬん。不勉強なのでわかりにくかった部分も少なくはなかったですが、これからの自分たちひとりひとりの生き方を考えさせられました。

  • うーん、多分、宮台の理論は、正しいような気がする。

    でも、自分は安全圏で評論家として発言して、リスクは全部、現場の人間が負えと言ってるっぽい感じが……。まぁ、それが、評論家の仕事というか、本分といえばその通りなんだけれど。

    現場の人間は、そのリスクに見あっただけのリターン(金銭や、名誉だけではないよ。それは、人によって違うのだけれども)が返ってこないのなら、やっぱりいい仕事はできないし、その仕事につこうと思う人間は少なくなるはずなんですよねぇ。
    そうすると、優秀な人材が、そこには集まらないことになる。

    失敗のリスクが、異様に高すぎるというのがなぁ、今の欠点だよなぁ。
    そのあたりの大人の問題が、全部、子どもにも被さってきている。

  • 宮台真司と香山リカの対話形式で文章は書かれている。この本は下の欄に、二人の話に出てきた単語についての説明が書かれている。なので宮台がいる割に読みやすい本であると思われる。
    この本は酒鬼薔薇聖斗のような、他人とコミュニケーションをとらなくとも自分自身の自尊心を保つことができる"脱社会的存在"の説明をし、その後この"底が抜けている社会"での生き方、マスメディアと社会について、少年犯罪とゲーム…というようなことについて述べている。
    相変わらず底が抜けているという意味が曖昧で、自分なりには「そもそも社会というものが在って当然という感覚が懐疑的になった」と解釈しているけど…

    でも日本の難点より読みやすいのでこの本から、もしくは14歳からの社会学やよのなか教科書から宮台に入門してみるといいと思います。

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著者プロフィール

宮台真司:1959年宮城県生まれ。社会学者、映画評論家。東京都立大学教授。1993年からブルセラ、援助交際、オウム真理教などを論じる。著書に『まちづくりの哲学』(共著、2016年、ミネルヴァ書房)、『制服少女たちの選択』(1994年、講談社)、『終わりなき日常を生きろ』(1996年、筑摩書房)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(2014年、幻冬舎)など。インターネット放送局ビデオニュース・ドットコムでは、神保哲生とともに「マル激トーク・オン・ディマンド」のホストを務めている。

「2024年 『ルポ 日本異界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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