動物の心――知性 感情 言葉 社会 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)

制作 : ナショナル ジオグラフィック 
  • 日経ナショナル ジオグラフィック
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863134164

感想・レビュー・書評

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  • 人間以外の動物に知性や感情はあるのか、に焦点を当てたムック。
    具体例を挙げつつ語られる話はどれも興味深い。
    ドブネズミは苦難に遭った他のネズミを慰めるため、隠しておいたチョコレートをあげるというエピソードは泣いちゃいそうだったよ…動物を安易に自分の感動に消費したくないと思っているけども泣いちゃうよ…。
    鮮やかな写真もたくさん載っていて嬉しかった。
    〜かもしれない、といった曖昧な結論のものが多かったが、途上なのだから仕方ない。
    動物が知性や感情を持ちうるのでは、というスタートに辿り着くまでが長かったのだし…。
    動物は人間のような知性や感情を持っているかという問いからは、人間の「知性」や「感情」だけが知性や感情なのか? 他の動物が持つものを人間の尺度で測れるのか?という問いも生じる。
    また、これまで人間と他の動物を分ける物差しになってきた知性や感情を動物も有するならば、そんな生き物を実験に使ったり、食用のためなどに劣悪な環境に置くことは許されるのか、という問いもまた生まれる。
    考えていきたいと思っていた領域の事柄なので、読んで良かった。

  • おもに実験動物やペットなど人間に近い動物の研究結果からのエビデンスにもとづいた文で構成されている。当然といえば当然で、科学的な観察がしやすいから。でもそうなると、人間目線での評価になりやすい。現に、例えば「感情」は人間だけが持ち得るもので、動物にはほとんど存在しないと思われてきた(そのくせペットには喜んでるとか、悲しんでるとか人間ぽい感情を期待する)。「知性」もほかの動物にはあろうはずがないと思われてきた(それがその道の”プロ”である研究者に少なからず存在している)。
    そんな中で具体的な名をあげて数人の科学者の成果も紹介されている。その人たちはいわばその偏見を棄てて研究できた人たちなのだが、彼らのおかげで多くのことがわかってきたのだ。その先駆的な人の代表がダ―ウィンだろう(彼はミミズの知性を研究している)。
    実験動物といえば、ラットは「くすぐられることが大好き」なのをご存じだろうか。押しても何の反応もないバーより、押すと実験者にくすぐられるバーのほうを押したがるそうだ。この時に人間には聞こえない高音を発するそうで、これは”笑い声”なのかもしれない(つい、笑い顔のラットを想像してしまった)。
    気分がいいことを好むのは「役に立つ行動に対する進化の報酬」という。ラットが好む傾向は人間が好むのと同じことか?もっと想像すると、仲間のラットどうしでくすぐりあっていて、それが重大なコミュニケーションになっているのかもしれない。
    登場するのは身近な動物だけでなく野生動物も多くとり上げられているのでご安心を。といっても研究が進んでいるのは集団生活をする、コミュニケーション能力が比較的高い動物が多いが。
    ところでザトウクジラは「倫理観」が強いらしい。シャチに仲間が襲われると助けるし、なんと「アシカも守る」。シャチはクジラを襲うことがあるというので、それから守るという本能もあるかもしれないけど、じゃななぜアシカまで「安全な浮氷の上に押し上げる」のだろう?でももっと問題なのは、シャチは「悪」なのだろうか。
    シャチも生きていくために獲物を襲う。人間のように、生きていくのに逆に不利になるとしか思えない理由で犯罪を犯すのとはまるで違う。クジラは果たして「正義」を感じているのだろうか?
    「グラフィック」なので迫力のある写真も多く、その面からも楽しめるが、まだまだ研究が進んでいない分野でもあり、これからが楽しみでもある。結局自分は、じゃ人間の心は?という読み方にもなった。

  • 様々な動物が存在する中で、人間かヒエラルキーのトップに位置しているように錯覚し、無意識に人間中心主義的な考え方になりがちだが、他の動物にも感情はあるのかもしれない。
    弱肉強食といえばそれまでだが、人間は環境や食との接し方を考えるべきなんだろうなぁ。

  • 結局「我々一般人は動物が心も痛みもあることを感じているけれど、科学者は人間こそ特別な存在だと疑わず、今まで動物の内面に対する研究が進んで来なかった」ということ。
    100頁ほど事例を交えて書かれていながら、要約すると、どれも未だ科学的な解明はされておらず研究中みたい。
    「本能」と一蹴されてきたことも、もしかしたら彼らなりに感じ、考えた結果の行動であることもようやく研究されはじめているようだ。

    「喜びや悲しみ」の項で、ラットが、押すと何もないバーよりくすぐられるバーを押したがる……という実験結果は微笑ましかった。


    分からないことだらけで歯切れが悪いけれど、動物の写真が美しく素晴らしいので、そのために見る価値はあると思う。

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