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- / ISBN・EAN: 4988142664129
感想・レビュー・書評
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ある家族の二世代に及ぶ、愛情に満ちた優しく壮大な物語なのに、人生や社会における、ありとあらゆる課題を浮き彫りにした、とても奥深い作品です。
原作小説に込められた多彩なテーマを、可視化することによって一層明確に示すことに成功している稀有な作品でもあります。
1970年代。アメリカの大学で学んでいるインド出身でベンガル人の青年アショケは、インド在住で同じベンガル人の女性アシマと見合い結婚をします。結婚とともに、ニューヨークに移り住む二人。
アシマは家族とも祖国とも遠く離れ、慣れない異国での生活に苦労しますが、二人の間にはすぐに男児が誕生します。
アショケは、彼の愛読したロシア人小説家の名字であり、アメリカに行く前のまだインドにいた若い時分に、九死に一生を得た体験でもあり、広い世界を目指すきっかけでもある忘れられない記憶と結びついた、彼にとってはとても大切な名前「ゴーゴリ」を、インドにいるアシマの祖母が正式な名前を授けてくれるまでの束の間の息子の愛称として使い始めます。
しかし、それが本名となってしまい、成長したゴーゴリは…。
物語は、結婚、出産、子どもの成長や独立、単身赴任、離れて暮らす家族の死、離婚等、誰にでも訪れうるライフステージの変化を用いながら、それぞれの登場人物たちの人生の折々の転機や心情を巧みに描いており、つい感情移入してしまいます。
そして、それだけでなく、移民一世と二世の価値観の違いや一種の断絶、二世のアイデンティティの模索と消えないルーツへの憧れや回帰、人種差別や愛しあっていても埋められない文化的な隔たり、同胞コミュニティの形成による安息と反してついて回る息苦しさという副産物など、社会的にも盛りだくさんのテーマを加えて、実に豊かな色彩をもって、鑑賞者の胸に迫ってきます。
黒目黒髪で肌の色が濃いベンガル人が皆白い服を着て集合している葬儀の場に、ゴーゴリの彼女でいかにもアングロサクソン系の金髪白人の女の子が、彼女の文化に忠実に黒い服を纏って訪問してしまう場面などは、彼女に悪意があるわけではなく、若さや無知が原因なのですが、互いの間に横たわる溝を象徴する場面でもあり、ハッとさせられました。
両親世代の思い出が息子世代のシーンに巧みに差し込まれて、比較であると同時に追憶的な効果もあったり、これぞ、文章ではできない映像の利点を最大限に活用、という感じの場面も沢山あり、演出も巧みです。
原作の微細な情景や心理の描写、そして盛りだくさんの主題を、小説の原作者と同じインド出身の監督が自分の体験と重ね合わせながら丁寧に描いたことがわかる良作でした。
でも、あくまでも個人的にではありますが、観ていると、自分の人生の転機や家族とのやりとりを思い出して、優しい気持ちになると同時に、後悔したり哀しくなったりもしたので、これから観る方は、少しばかり覚悟してお願いします。
(余談ですが、昔読んだ原作は、涙を流すだけでは済まず、始終鼻をかみながら読み終えました。) -
アメリカに移住したインド家族のお話。
マリーゴールドは結婚式だけでなく葬儀にも使うんだ。マリーゴールドの美しさを改めて知った。 -
ある一家の歴史。
背景には宗教や事件や家族間での悲喜こもごもとしたものが流れている。
どこの国であろうが、何歳であろうがおんなじで、いかにして自分が父や母から一族から“何”を受け継いでいくのか?を考えてみる機会を与えてくれた一作。
母は運命に流れるように軽やかに身をゆだねているようで、ラストシーンはその美しさに感動した。 -
本の方が好き。アシマの一歩一歩進む慎重な性格があまり出ていない。すごいスピード。ただし、ガンジスに遺骨をまくシーン、タージマハルを4人で眺めるシーン、英語のアクセント、など実際の理解を映像が助けてくれた部分はあった。
ゴーゴリの彼女ってどっちの文化圏か明確で、映像だと本当にその差がよくわかる。アシマの帰国前にゴーゴリが部屋で本を見つけるシーン、離婚に関して「本当に自由になった気がする」と言ったのは、どっちの文化圏か、ではなくなにが自分らしいかを選ぶのが良いということをわかったんだろうな。 -
アメリカに移住してきたインド人夫婦とその息子の名前にまつわる絆の話。
アメリカとインドの文化の対比がみれて面白かった。
インドの結婚式や葬儀のシーンは特に新鮮。
アシマが嫁ぐ時のおばあちゃんの「新生活を楽しみなさい」って台詞がなんだかとても素敵でした。 -
小さいけど重たい贈りもの
自分の名前について思うとき、そこに両親の人生が詰まっているって素敵だなと思いました -
アメリカに住むインド人一家の物語。登場人物たちがことあるごとに「これが米国流」と口にしているように、この映画のテーマは文化にある。主人公アシマとその夫は故郷をインドに持つのに対し、彼らの子供たちゴーゴリとソニアはアメリカの文化にどっぷりと漬かっている。その対比がとても良く描かれていると思った。
ところで、日本語の「ちょっと!」はベンガル語(?)でも「チョット!」というようだ。 -
親子二世代の話なのでさすがにちょっと駆け足の感はあるけど、過度な脚色もなく、原作の空気を生かしたいい映画と思います。お母さんはキレイすぎるけど(見とれてしまう)、お父さんがいい味。けどこの物語が含んでる色々なテーマに気づくためには、先に本を読んだほうがいいかも。
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登場人物達がそれぞれの在り方で文化の違いに向き合っていて、そこが面白いと思った。
あとアショケさんがひたすら素敵。 -
後悔しない人生を。
原作、是非探して読んで観てくださいね!
私は原作が先でしたが、すごく良かったですよ!
それにしても、絶...
原作、是非探して読んで観てくださいね!
私は原作が先でしたが、すごく良かったですよ!
それにしても、絶版なんですね…あんなにいい話なのに…。