どのくらいのペースで本を読まれますか?
本は、少ない月で6、7万円、多いときは10万円分ぐらい買って読んでいますね。冊数にすると30〜40冊といったところでしょうか。
ただ、自分が本を執筆し始めると読書はしなくなるんですね。メルマガやブログはたとえば移動中にでも書くことができるのですが、本は家にこもらないと書けません。
本はひとつの世界観を形成するものだと考えていますので、自分の本を書いている際に、他の本の世界にはいけないんです。
もちろん参考資料としての本は執筆中もたくさん読みますけどね。
だから、本の執筆が終わり、余裕があるときは必死で本を読みますね。
読んだ後は、どこに何があるのかわからなくなるのが嫌なので、残しておくべき本、資料になりそうな本以外はブックオフに売ります。
趣味としての読書はしますか?
趣味の読書は、旅行中にします。年に1度、1、2週間の旅行に行くのですが、観光などはあまりせず、本ばかり読んでいます。
外国に行く時も、本を30冊くらいもっていくのでスーツケースの半分位は本で埋まってしまったりします。
特に、海外文学や哲学書が好きです。僕は常に、新しい世界観や哲学に触れたいという気持ちが強いのですが、普段はなかなかできないので。
おすすめの本は、河出書房新社さんが出している、池澤夏樹編集の『世界文学全集』です。昔から有名な文学を集めているんですよ。
まだ完結してないですし、すでに刊行されている20数巻のうちの5冊くらいまでしか読めていないので、死ぬまでに全部読もうと楽しみにしています。
マンガは読みますか?
マンガも読みますよ。一番感銘を受けたのは『闇金ウシジマくん』です。
以前ブログでも取り上げたのですが、格差社会を的確に描いている作品だと思います。
今、ノンフィクションやドキュメンタリーの世界では、マイノリティの話が多く、マジョリティたちの社会の中心そのものに亀裂が走っていることにクローズアップして描くことはすごく減っています。そこをこのマンガは的確に描いているところが面白いなと思います。
本はどこで買いますか?
本はブログやソーシャルメディア上で情報を収集して、Amazonで買います。
本屋にはほとんど行きませんね。それでも買いすぎて読みきれないくらいです。
影響を受けた本は?
学生時代は文学少年だったので小説をいっぱい読んでいました。あとは大江健三郎などの社会評論本もたくさん読みましたね。
感銘を受けた作品としては、20年くらい前に新聞記者をしていた時に読んだ、社会学者である見田宗介(筆名:真木悠介)さんの『気流の鳴る音ー 交響するコミューン』です。
これは、アメリカのカスタネダという学者が、メキシコでインディオの魔術師に弟子入りして、フィールドワークをしたことについて書かれた本です。
カスタネダの試み以前に先住民族について書かれた文献は、すべて上から目線といいますか、欧米が最高でインディオは未開のものだ、という論調で書かれていたんです。
でもカスタネダの研究では、インディオの文化が下、自分たちが上というのではなく、単に世界認識がちがうというだけでどっちが正しいというわけではない、ということが示されているんです。
そのカスタネダの研究について見田さんはこの本の中で、我々が何かを分析するときには、近代合理主義の名のもとに何でも観察して理論的な見方をするといった手法ではなく、そうではない目線で実社会を知ることも可能なんじゃないかということを提示していて、とても深く感銘を受けました。
見田さんの著書を読んでからは、刷り込まれたイメージや自分の考えに基づいた表層的な見方を脱することが、すごく大きな課題だと感じるようになりました。
たとえば僕の仕事だと、ITの世界でもマイクロソフトはけしからんとか、ヒルズ族はマネーゲームの象徴だとか、当時はそういう短絡的なものの見方が一般的でしたが、それをいかに自分の目線で見られるかということを考えることができるようになりました。
ご自身の読書方法で変わってるなと思うところは?
僕は本を、今起こっている現象を考えるバックグランドを知るために読むというところが、他の人と少しちがうと思います。
インターネット上には、情報をキャッチアップする人は多いですが、情報を追ってキャッチアップしすぎてオタクになってしまっている人が多い気がします。
たとえば、「iPadが出てくる」という話題に対して、「すごいすごい」だけで終わるのではなく、iPadは我々の社会をどう変えて、何をもたらすのかを見なくてはいけないと思います。つまりそれは、テクノロジーと人間の関係性、インターネットというのは人間社会にどういう影響を及ぼすのだろうというところから考えるということです。
それにはまず、古代のオーラルな口づてのコミュニケーションとどうちがうんだろう、マスメディアはどうして生まれてきたんだろう、というような膨大なバックグラウンドを知ることが必要だと考えています。このバックグラウンドを学ぶには本を読むしか無いんです。
僕は現在メディア系の仕事をしていますが、17世紀の市民社会において民主主義とはどういうものだったのかというような本をたくさん読んでいますし、
そういう過去の遺産の中から今の社会の意味を知るという読書はかなり意図的にしています。ここが、他のテクノロジー系の仕事をしている方とはちがうと思います。
佐々木さんはどのようなスタイルで本を書かれているのですか?
僕の仕事は社会がテクノロジーでどんどん動いていく局面を書くことです。
特に、インターネットが新聞、雑誌、書籍と、いろんな分野に侵食し始め、侵食していく過程でどういう紛争が起こったかを書いています。
執筆の情報集めとして、膨大な量の本を読むことと、Googleリーダーで情報収集をすることは毎日行います。
Googleリーダーの登録フィード数は500くらいでしょうか。一日につき見出しを2000くらい読みます。そのうち4分の1は英語です。
その見出しの中から、50本くらいピックアップします。後で参照に使いそうなもの20〜30個をdeliciousでブックマークします。
ただ、ブックマークするだけだと自分のためにしかならないので、同時にTwitterに流します。
よく1日中Twitterをしていると勘違いされるのですが、Twitterを色々なサービスにつなげているだけです。
Twitterに流すことにより、同時にプロモーション活動にもなっていますね。
自分がブックマークしたものを本格的にTwitterに流すようにしたのは去年の後半からですが、目に見えて私のサイトに来ていただける方が増え、結果として有料メルマガの購読者増にもつながっています。メルマガの内容は話のタネというか、興味のあるテーマや今後取り上げなきゃいけないなと感じている事について、今現在こういう事が起こっているということを、今後の執筆活動の仮組みとして書いています。日々のリサーチにはとても時間をかけていますが、メルマガは実際書き始めると2時間ぐらいで書き終わります。情報は毎日頭に入れていますが、それがどういう意味を持ってくるのかは明確にはわからないので、メルマガで書くことによって、詳しく調べて具体的な事例を並べて分析を行ない、頭の中で自分の分析をきちんと絵にしていきます。そのネタをもとに講演で話したり、本のパーツにしたり、雑誌の連載に書いたりしていきます。
佐々木 俊尚 (ささき としなお)1988年毎日新聞社に入社。記者として視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人や誘拐、海外テロ、オウム真理教事件などの取材に当たる。その後、1999年『月刊アスキー』の編集部デスクとなる。2003年に退職をした後は、フリージャーナリストとして主にIT分野やメディア業界についての取材をしている。 主な著書 仕事するのにオフィスはいらない(2009) / 2011年新聞・テレビ消滅(2009) / 次世代ウェブ グーグルの次のモデル(2007) ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか(2006) / グーグル ―Google 既存のビジネスを破壊する(2006) |