Rebecca

著者 :
  • William Morrow Paperbacks
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780380730407

感想・レビュー・書評

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  • 今までに、実物でも映像でも画像でも、それはそれは色んな場所で表紙を目にし、『読むべき本』として取り上げられることが多い”Rebecca”。ずっと前に読んだ"Dear Reader"(Cathy Rentzenbrink著)でも、著者が本にまつわる思い出として一番最初に挙げるのがこの本だったのが記憶に残っている。毎年、ハロウィンの時期になると、ぞくっとする本を読もうと世界中のbibliophileなYouTuber達がこの本を取り上げることが多いのも知っていて、ずっとずっと気になっていたのに、Audibleでオーディオブック版をダウンロードしたのがたぶん1年以上前…。聴き始めるタイミングを逃しまくっていたけど、先週耳読書し始めた別の本にこの”Rebecca”が登場し、このままその本を聴き進めると”Rebecca”のプロットが丸見えになってしまう恐れがあったので、その本を一先ず置いておいて、”Rebecca”を先に読んでしまおう!と思ったのでした。亡くなった前妻の存在感が色濃く残るManderleyの屋敷の不気味な雰囲気と、ラスト数ページという本当の最後の最後まで読者に読ませる展開。さすが有名どころで、映画にもなっただけあって面白かったし、読み終わった後、周りに「あれ読んだ??」と聞きまくって読んだ人を見つけたいような衝動に駆られる本だなぁと思った。

    以前から、ストーリーのプロットはちょっとだけ知っていたけど、『若い女性が結婚し、旦那が所有する豪華なお屋敷に住むことになったけど、亡くなった前妻の影に怯えるようになる』くらいのイメージしかなくて、「ハロウィンシーズンに読まれることが多いってことは、もしかして前妻の霊が屋敷に憑りついていて怪奇現象が起こる、なんて設定なんでは…」なんて思ってたけど、そんなことはなく。でも、屋敷のどこにいても前妻Rebeccaの生前の姿が想像出来るような描写と、そして彼女の存在感が壁や床や家具だけでなく、生前のRebeccaを知っていた人々の心にもしっかりと染みついてしまっていて、新しく屋敷に嫁いできた若い女性にはどうしても払拭することが出来ない、どうしようもなさが不気味なタッチで描かれていて。死んだ後もくっきりと残るRebeccaの圧倒的存在感が印象的で、そりゃあ彼女の名前が本のタイトルになるわな、と納得。でも、Rebeccaを慕い、崇拝していた家政婦Mrs. Danversの、元雇い主に執着しまくった、かなりイっちゃってる言動が一番怖いと思った…。読んでみて感じたことは色々あるけど、ちょっと記録に残しておこうと思ったものを箇条書きにしてみる。
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    ●Rebeccaの存在感に完璧に食われてしまう、主人公である若き女性。Manderleyの屋敷の持ち主であるMaxim de Winterと電撃結婚することになるんだけど、最初から最後まで、読者には彼女の名前が明かされない。周りの人達が彼女と話す時も、”Madam” “Dear” “Poor child” “Mrs. de Winter” としか呼ばれず。主人公の名前がわからないなんて面白いなと思ったけど、そうすることでRebeccaの存在感が一層際立つように配慮してるのかも…なんて。

    ●耳読書をしていて、”gay”という形容詞が多用されているのに気づいたけど、Rebeccaが出版されたのは1938年。そんなに昔だったのは読み終えてから気付いたけど、当時は”gay”という単語を『陽気な、快活な』という形容詞として普通に使っていたんだろうなぁ、というのが垣間見えて、言葉っていうのはほんとに生きてるんだなぁとふと思った。そして、大人しい性格であるはずの主人公の女性が、知恵遅れの男性を描写する際に、”man with idiot’s eyes”みたいに、”idiot”という単語をよく使っているのも、聴いていて「ええっ?」と思った。辞書で調べてみると、

    〈古〉白痴〔差別語〕◆主に20世紀前半に使われた心理学用語。侮蔑的意味合いがあり偏見につながるため、専門用語としては使われなくなった。おおむね最重度知的障害者に当たる。

    とある。今こんな単語使ったら、バッシングされまくるに違いない…。言葉というのは常に進化するものなのですね。興味深い。

    ●聴き進めていて、MaximがRebeccaを殺したんだろうな…というのは中盤あたりで予想はついたものの、この本の面白いところは、Rebeccaに何が起こったのかを暴くところではなくて、むしろその後だと思う。主人公の女性が殺人の事実をMaximから聞いた後も、彼への愛に迷うことなく、彼のそばにいて彼を守ろうとするところ。そして、彼の親友Frankや、地元の探偵であるColonel Julyanも彼を庇って、Maximが殺人罪に問われないように口裏を合わせようとするんだけど、Maximの味方になろうとする人はみんなそれぞれ、個人の判断でそうしているのであって、お互いに協力してやっている自覚がないのが面白い。そして、Rebeccaの化けの皮が剥がれて、殺されても自業自得のような人間だったことがわかったら、読者として殺人犯であるはずのMaximを応援したくなるのも不思議。Maximが逮捕されてしまわないかというドキドキ感と、最後の最後でRebeccaの狡猾さがまたなにかドラマを起こすんじゃないか…というハラハラ感。ほんとに、最後の最後まで「これ、どうやって話が終わるの??」と気になりまくってしまった。ラストシーンも、まるで目の前にその情景が浮かんでくるような描写。圧巻。いやぁ、良きかな。

    ●後妻である主人公の女性が気後れしてしまうのも理解出来るくらい、活発で美人で魅力的で色んな才能を持ち合わせた前妻Rebecca。ストーリーが進むにつれ、彼女の自分勝手かつ狡猾で非情な性格が明らかになっていき、自らの命が残り僅かと知ったRebeccaが最終的に夫に究極の嘘をついて激怒させ自分を殺すように仕向けることで、自分の死後に彼の地位を奈落の底に突き落としてしまおうと考えていた、ということがわかる。正にサイコパス。そして、Mrs. Danversの「彼女は誰も愛していなかった。男なんて全て陰で笑う対象でしかなかった」みたいな発言と、Mrs. Danvers自身のRebeccaに対する異常なまでの執着から、もしかしてMrs. DanversとRebeccaは雇用者と雇用主の関係ではなく、もしかして恋愛関係にあったんでは…なんて想像もしたりしたけど、それは深読みし過ぎてた(笑)でもやっぱり、この本で一番ゾっとしたのは、Mrs. Danversの嫉妬心…。女の嫉妬心より怖いものって、あんまりないんじゃないんでしょうか。

    ●Colonel Julyanが「僕は昔、シンガポールに住んでてね…」という話を持ち出した時に、「あそこでは上手いカレーが食べれる」というセリフがあって、まぁ確かにシンガポールに美味しいカレーはあるけど、インドではなくシンガポール=カレーっていう発想が新鮮だった。シンガポール在住の身としては「え?」となってしまった部分でもある(笑)本が出版された1938年は、シンガポールはまだマレーシアから独立してないけど、当時のシンガポールに対するイメージってそんな感じだったのかも。今だったら、シンガポールと言えば、チリクラブ!とか、チキンライス!とかのイメージだろうけど。でもここでは確かにカレーも美味しい。美味しいのです。昔は、インド料理と言えばカレー!としか思ってなくて、日本スタイルの甘めのカレーがカレーなんだと信じていたけど、オーストラリアに引っ越した後、インド料理と一言で言ってもほんとに数えきれないくらいの種類の料理があることや、北インドと南インドで料理のスタイルが違うということを知った。個人的には、パニプリやマサラチャット、そしてドーサなんかのスナック系をこよなく愛している一方、チーズがたっぷり入ったナンと一緒に食べるバターチキンやパラクパニールも大好き。シンガポールにはリトルインディアなるエリアもあって、本格的なインド料理がいつでも食べられる。インド料理を食べに行くと、決まっていつも頼み過ぎてお腹がはち切れそうになるまで食べてしまうんだけど、こんな風にインド料理について書いていたら今すぐにでもまた食べたくなってしまう。Rebeccaについてのレビューなのに、インド料理について熱く語ることになるとは。

    ●Manderleyの舞台はCornwallという場所にあるMenabillyというお屋敷なんだそう。本の中のCornwallの自然の描写が綺麗で、いつか行ってみたいなぁと思った。
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    という訳で、やっとこさで"Rebecca"が読めて本当に良かった。最近出版された本だけでなく、こういう古い作品ももっと読んでいきたいなと思った。有名どころでも、昔のものは「英語の文体が読みにくいかもな…」なんて思ってなかなか手を付けるのが億劫になってしまう性分なので、これからちょっとずつでも挑戦していければいいなと。でも、今回の"Rebecca"は1938年に書かれたとは思えないくらい、古めかしさを感じさせない作品で、読書好きの友達に是非薦めようと思う。Netflixでも、2020年に公開された映画が観れるみたいだし、今週末にでも観てみようかな。

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