- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000004343
作品紹介・あらすじ
社会の新たな局面を迎えた今日,思想は現実が突きつけてくる課題に対して的確に応答することができるだろうか.商品化された思想が時代の波に翻弄され消費されていく一方で,時代の問いを問い抜こうとする真摯な知的探究が営まれている.人が自我・他者・世界と出会う意識の場である「具体的経験」を方法論的装置として,構造主義・ポスト構造主義と切り結び,現代におけるマルクス主義の限界と有効性を論じ,言語論に新局面をも切り拓く.
感想・レビュー・書評
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著者はすでに『言語・その解体と創造』『国家と文明』『文化の理論のために』といった著作のなかで、実存的な経験の具体性そのものにひそんでいる弁証法的構造に基づいて、言語や社会、文化についての考察をおこなってきました。本書はそうした基本的な立場を継承しつつ、構造主義やポスト構造主義といったフランス現代思想や、ハーバーマスとアーペルの超越論的語用論、その他、現代の社会哲学・社会思想やルネ・ジラールの暴力論などに対する批判を展開しています。
著者の立場にもっとも近いのは、『弁証法的理性批判』で現象学とマルクス主義の統一を図ったサルトルなのでしょうが、サルトルも著者も、基本的には疎外論の構図を脱していないように思われます。そうした立場から、構造主義の反人間主義に対する反論がどのように展開されるのか、ということを具体的に知ることができたという意味では、個人的には興味深く読むことができました。
とはいえ、回復するべき人間の本来的なありようといったものがまったく考えられなくなってしまった現代の思想的状況の中では、もはや著者のような立場は維持しがたいのではないでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示