月の満ち欠け 第157回直木賞受賞

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著者 : 佐藤正午
  • 岩波書店 (2017年4月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000014083

月の満ち欠け 第157回直木賞受賞の感想・レビュー・書評

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  • 今日ディーラーに車の点検に行って来た。
    待ち時間に読みかけのこの本を読む。
    物語もいよいよ終盤。
    参った、涙で視界が滲んでくる。
    そんな時に「お待たせしました」って営業さん。
    涙止まらないし、鼻水すすってるし、ちょっとおかしなおばさんて思われたかも。

    いやー、今年読んだ中で(大した数読んでないけど)間違いなくダントツ一番。
    ミステリーと恋愛がどちらも破綻せずに融合していて、この面白さ。
    佐藤正午の本は好きな本いっぱいあるけど、これ一番好きかなぁ。

    時間軸を行ったり来たりする展開や、すれ違う男女、SF要素が入っているいるところ、どれもこれもまさに佐藤正午なんだけれど、まったく使い古されてないしマンネリ感もない。
    純粋にその世界にはまって、どうしようもない心のありようにただただ途方に暮れてしまった。
    こんな恋したいよねー(笑)

    読みたい本もさほどなく、読んでも熱中せず、ブクログからは遠ざかり…
    ご無沙汰しております、フォロワーのみなさま。
    こんな私ですが、この本のレビューだけは書きたかった。
    一人でもいいからこの本を読む気になってくれると嬉しいなぁ〜

  • ブク友さんからのお薦めで7月15日に図書館でリクエスト。
    今月の20日にようやく手元に届き、遅読の私が2日間で読了。
    早い人なら半日もかけずに読み終えるだろう。
    ページをめくる手を止めて考え込む場面など、ひとつもない。
    それほどさらさらと読めるというのは、作者さんの確かな力量あってのものだろう。
    とにかく読みやすい。
    輪廻転生をテーマにした恋愛ファンタジーとでもいうのだろうか。
    多少ミステリーの要素もあり。
    割と使い古されたモチーフだが、情念に溺れず、かと言ってドライにも傾かず。
    「どうなる?」と展開を予想させる精密なプロットと絶妙な筆致で、上手い作家さん
    だなぁと感心しきり。

    物語は「瑠璃」という女性の生まれ変わりを軸として進む。
    ただこの女性が登場するのはお話が四分の一ほど進んでから。
    生まれ変わりのおかげで四苦八苦&右往左往する家族(特に男性は被害者と言っても
    良いほど)たちの方に、むしろ視点は多く当てられている。
    また、「瑠璃」がそれほどまでに相手に思いを残して死んでしまったのは「不倫」
    ゆえであり、その代償かと思うほど輪廻転生もなかなか首尾よくはいかない。
    ここまで周囲を混乱させてまで転生したいのかと少々辟易もするが、登場する家族たちの
    会話や回想から見えてくる細やかな心の機微が甘く切なくて、読みどころはこちらかと。

    興味深いのは、三度の転生が全て幼い少女の身を通して行われること。
    読み手としては、ここがもどかしいところ。
    たぶんこうなるだろうという着地点だったが、不倫相手はすでに中高年の域。
    対して、幼い少女である。この後の展開は・・相当辛くなりそうだ。
    ただ、序盤から登場している「小山内」という男の、ラストのエピソードにはじわっと来た。
    こちらを膨らませてもうひとつ書いてほしいくらいだ。

    自分自身で言えば、輪廻転生などしたくないな。
    他人の人生を乗っ取ってまで、自分の思いを遂げたくない。
    満ち欠けする月のように生まれ変わるよりも、樹木のように穏やかに満足して生きたいと願う。

    今回思いがけず直木賞受賞作品を読むことになってしまったが、それが妙に
    恥ずかしくて(笑)読んだのは内緒にしようかと思ったほど。
    でもお薦めしてくれたブク友さんを思い出し、感謝を込めてのレビュー。
    本当に久々の「小説読み」は新鮮な体験だった。

  • 月のように欠けてもまた満ちてゆく。生まれ変わる。ただ、あなたにまた出会うために――。
    瑠璃と同じくらいの年齢や、もっと若い頃なら、私もそう願ったかもしれない。いや、そうだ、実際に願っていたんだ。記憶を持ったまま、生まれ変わって、また、逢いたい。あなたに。と。
    その頃に読んでいたら、きっとロマンティックな想いに浸れたのに。
    だけど、樹のような生き方もできない今、もう月のようにとも思わない。思えない。瑠璃のその深い想いが羨ましいような、うっとおしいような。
    私には瑠璃の執着がなんだかとても、とても怖かった。
    怖いくらいの“愛”、それはやっぱり羨ましいものでもあるのだけれど。

  • 上司に薦めてもらった本。
    メモを取りつつ、時系列を整理しつつでないと読めない。どこが重要なのかがわからないから、よく前に戻る。
    混み混みしていたが、面白かった。
    しかし、私にはほんの数ヶ月不倫していた相手に会うために、何度も生まれ変わるというのがあまり理解できない。
    そして、それ以前がなかったというのも納得いかない。
    三角の人格が後半あまり出てこなかったのももったいない。
    人体が生まれ変わったというよりは、精神をのっとったという感じなのか。
    多重人格の逆のような感じ。ひとつの人格が時を重ねず多数の人体に宿る。

  • 第157回直木賞受賞作品。初読み作家。
    目の前にいる娘は、亡き娘の生まれ変わりなのか?月の満ち欠けのように生まれ変わる少女に、3人の男性が関わる。何度も生まれ変わっても、彼女は愛する人を探し求める。
    冷静に前世などと考えると、理論的にはなどと考えたりしてしまいそうだが、余り違和感なくストーリーに入り込めた。純愛なのか、SFなのか。一つ間違えると、ホラーやオカルト的な要素が強くなってしまいそうだが、そうしたこともなく一気に読めた。ラストは予定調和だが、それでもぐっときた。

  • お堅いイメージの岩波書店がこの手の恋愛ファンタジー小説を出したことに軽く驚きました。
    生まれ変わってかつて愛した人のもとへって、下手すると陳腐なメロドラマに成り下がってしまいそうなものですが、緻密な構成とベテランの巧みな筆致でどんどん物語に引っ張られていきました。
    ラストはそこまで衝撃的とは思いませんでしたが、まあ普通にいい作品だと思います。

    個人的には「ありえないことが現実に起きた」ことにするよりも「ありえないことがもしかしたら起きたのかもしれない、結局よくわからない」ぐらいのニュアンスのほうが好みというか、物語により深みが出たんじゃないかという気がしますが、逆に今より分かりにくくするとついてこれない読者も出てきそうですし、難しいところですかね。

    私、佐藤さんの作品は10年ぐらい前に1冊だけ読んでいます。
    確か光文社文庫から出ている『ジャンプ』だったと思うのですが、あんまりいい印象じゃなかった記憶しかないです。
    理由も忘れてしまいました。実家に本があるはずなので帰省したら再読してみようかな。

    それにしても、デビュー33年目の著者ご本人にとってもまさかの直木賞ノミネートでしょう。
    選考委員の半分以上が佐藤さんより後にデビューしているんだから、きっとみんなやりにくいだろうなあ。
    この賞の傾向としてファンタジー作品に厳しいので受賞は難しそうですが、ひょっとするとひょっとするかもしれません。

  • 生まれ変わりの話。

    関係者それぞれの視点から、不可思議な現象が語られる構成となっており、読後時には時系列で起きたことがほぼはっきりする流れ。

    起きる出来事自体は、様々なフィクション作品で取り上げられそうなものなので、よく言えば馴染みのある、悪く言えば手垢にまみれてそうな設定。

    素直に感動もしきれない出来事なので、どういった気持ちで読めば良いのか最後までよくわからなかった。

    ビデオ屋あたりで繰り広げられた、「話し手の語る内容が要領を得なくて、聞き手が追い付くのに苦心する」会話の描写が現実にありそうな会話で、上手いなぁと感じた。

  • 月に満ち欠けがあるように、死んでもまた生まれ変わって好きな男性に会いたいと願う女性の、一途な思いから起こった不思議なストーリー。

    一歩間違えれば、陳腐な純愛ものや雑なファンタジーになるところを、複雑な構成と冷めた文章で引き締めているところが、作者ならではのスマートな魅力。
    反面、何度も替わる人物の視点と、前後する時系列に戸惑うのも事実で、感情移入して読むのは難しい。謎の仕組みが見えて相関関係が理解できてからは、一気に盛り上がっていく。

    ただ、軸となる女性(瑠璃)以外の立場から考えるとどうなのだろうと、首を傾げてしまった。
    自分が、あるいは身近な人が誰かの生まれ変わりだったら…。あり得るかどうか以前に、願いが叶った当人はいいとしても、死んだ女性の思念に乗っ取られた人はもちろん、相手の男性や家族も苦悩するだけで幸せになれるとは思えない。もちろん、その点も作中に描かれてはいたけれど。
    冷静になると、女性の自己満足でしかなく怨念ホラーのようにすら思える、なんて興醒めなことを言うのは野暮かしら。読んでいる最中はおもしろかったのだけれど、根幹の部分が受け入れられなかったのが残念。

    さらに、一度きりの人生だからこそ人は輝けるし、命は尊いんじゃないかな。
    私は月のように生まれ変わるより、種子を残して潔く終わりたい。

  • 30年かけて月のように生まれ変わりながら愛する人に会いに行く。ファンタジック純愛小説。
    思いを果たせず死ぬ度に、どこかにいる別の「瑠璃」にその思いをつないでいく。輪廻はいつも女で、男はいつも待っているだけ。うーむ、なるほど。「おっさんのファンタジー」と言われるのも納得。
    自分なら、樹木のように子孫を残す死に方のほうがいいな。月のように何度でも生まれ変わる死に方よりも。

  • ひとは樹木のように死んで種子を残す。でも、あたしは月のように死ぬよ。月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す。そして、あなたの前に現れる。。
    そういって、20歳のアキヒコの前からいなくなった年上の人妻瑠璃。
    約束どおり、月がまた満ちるように、生まれ変わり、瑠璃(たち)としてアキヒコを探しはじめる。
    「瑠璃も玻璃も照らせば光る」の言葉をキーワードとして・・・
    これは、哀しいほどの愛の物語だ。
    生まれ変わり、前世を記憶する子供、などサスペンスのようなホラーのような部分もあるのだけど、作品を貫く、瑠璃のアキヒコへの深い愛がラストでじわ~っと来る。
    佐藤さんの作品は初めてで、文体になれるのも少し時間がかかったし、時系列がこんがらがって、とても分かりづらかったけど、それを補って余りあるほど、先を読みたくなるそして、読ませてくれる力がある作品。
    直木賞、とれるといいな・・・

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月の満ち欠け 第157回直木賞受賞の作品紹介

内容紹介
新たな代表作の誕生! 20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。

著者について
佐藤正午(さとう しょうご) 1955年8月25日,長崎県佐世保市生まれ.北海道大学文学部中退.1983年『永遠の1/2』で第7 回すばる文学賞を受賞.2015年『鳩の撃退法』(小学館,2014年)で第6回山田風太郎賞を受賞.そのほかの著作に『ジャンプ』『身の上話』(光文社),『5』(角川書店),『アンダーリポート』(集英社),『小説家の四季』(岩波書店),『小説の読み書き』(岩波新書)など。本作『月の満ち欠け』 第157回直木賞受賞。

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