一冊読むことで日本のワークシェアリングとヨーロッパのそれが理解できる本。
まず日本において『ワークシェアリング』と呼ばれているものの実態を
様々な事例(日経連の主張するもの、実際に日野自動車で行われたもの、兵庫にて行われたもの、鳥取で実施されたもの)の調査によって
著者は明らかにした上で、その問題点を浮かび上がらせた
次に、その問題点を更に明確なものとするため著者はヨーロッパへと赴く。ドイツのフォルクスワーゲンの行ったワークシェアリング、フランスの35時間制によるもの、及びワークシェリングを行わないスウェーデンの福祉政策(*1)を目にした後、成功したワークシェアリングで話題を呼んでいたオランダへと向かい、一体どの様な労働環境になっているのかを著者は目にする。
オランダでは、失業保険により失業前の職の給料7割を取得できるセーフティネットが確立されていた。これにより転職が容易になり、同時にパートと正社員の均等待遇(どちらも時間給による評価で、給与の差はない)を実施して雇用の流動化を図ることで、結果的にパートの地位向上が行われていたのだ。
日本の労働問題の根幹は『労働は大黒柱たる男が担うものであり、女性は家庭を守る存在』だとする家父長的な考え方が、既に現実と噛み合わない状況にあるにも拘わらず、日本社会に根強く、これが原因で女性が多いパートの仕事が差別待遇を受けているためだと筆者は主張している。
ヨーロッパと日本の労働環境が理解できるのでお勧めです。ただワークシェアリングの良い面を取り上げているのが目立ち、欠点はあまり扱え割れません(多少言及はしていますが)。
ワークシェアリングの悪い面を照らし出した本も合わせて読むとなお見識が広がると思います。
*1スウェーデンの労働政策は家事を『無賃労働という一種の労働』として考え、有償労働(会社での仕事)と合わせて、社会全体で受け持つものだと見なすものであり、それが一種のワークシェアリングだと筆者は分析している。