自由の牢獄

  • 岩波書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000029438

作品紹介・あらすじ

ベストセラー『モモ』や『はてしない物語』の作者が、長年月かけて熟成させた、代表作『鏡のなかの鏡』につづく力作短編小説集。精神の世界の深みにおもりを下ろし、そこに広がるさまざまな現実を色とりどりの花束に編み上げた、エンデ文学の到達点を示す力作。ヨーロッパ的精神世界とドイツ・ロマン派的な文学伝統を背景に、手紙、学術的レポート、手記、「千一夜物語」のパロディ、伝説など、さまざまな手法を駆使して繰り広げられるファンタジーの世界は、ミヒャエル・エンデの魅力を余すところなく伝える。

感想・レビュー・書評

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  • ファンタジーはいつもダーク。エンデの物語のキーワードのひとつ「無」がここでも出てくる。「はてしない物語」の『虚無』もそうだが、本書では無我の境地へと、心をどこまでも突き詰めて行く。現代的な大人のファンタジーだ。

  • 読書会の課題本として読みました。

  • 大好き

  • ファンタジー、フィクションの要素が詰まっているのでなかなか面白かった。
    ただ、宗教や歴史的な記述もあったので、そういう知識があるともう少し深読みできるかもしれない。脚注はついていたが、それでもはっきり理解できなかった。

  • 読んでいる最中、ゾクゾクしゾワゾワしました。小説の持つ面白さも力も怖さまでも味わえる短編集です。
    内容もバラエティに富んでいて、ひとりの男の生涯を追った幻想的なものもあれば、不条理ユーモアあり、手紙による実話怪談めいたものもあり、自由とは何かを問う哲学的なものもあり。
    そしてどれも読み応えがあります。しっかり噛みくだいて飲み込んでも、引っかかってしまう部分もあります。しかしだからと言って読みにくい訳でなく、噛みくだくこと自体が快感とさえなったのです。エンデの世界に入り込み、エンデに包み覆われるかのような読書体験でした。

  • 小学生のときはまだよくわからなくて、ショアス=ヴァリの話が怖かったくらいだったのだけど、高校生になって読み返したら他の話にも改めてぞくぞくした

  • 111枚の扉…自由と不自由、考えると頭がぐるぐる。短編集。絶版だったけど、2007年に、岩波現代文庫版が出たんだよね。入手しやすくなったのかな?そっちに変えたほうがいいのかな?

  • 表紙には積木のように本を構造物として重ねた城が描かれ
    人生そのもののように歴史がそしてそこを渡る己自身が自らを牢獄に押し込めていく
    まさにそのことを暗示している表紙となっている
    エンデ自身によって描かれたものだそうだ
    エンデ晩年の八つの物語による短編集である

    その一つが「自由の牢獄」で
    千一夜物語の手法で教主カリーファの前で乞食の語る物語が始まる
    イブリース(魔王・ユダヤ人・心の彼岸)に誘惑されて
    自由奔放な若者が罠にはまり自由という牢獄から抜け出せなくなるところから語り始める

    随分と皮肉をたっぷりと織り込みながら展開していくが
    それにも関わらずイスラム教の長にはまったく響くことが無く
    表面的な讃えの言葉に大いに満足して聞き入る

    話のそこそこに差し挟んだ全知全能のアラーに向かって与える祈りの矛盾は
    読者に向かって痛烈に届く
    曰く:
    アラーの御名に讃えあれ!
    主に平安あれ!

    全能なアラーに掛けて誓った意志など自分の意志だと言えないと
    イブリースの化けた踊り子にそそのかされて
    自分の意志で生きることを自分の眼の光に掛けて誓ってしまう
    その途端に踊り子からヘビの姿に変身したイブリースは
    彼を自由の牢獄に閉じ込める
    それは大海に浮かぶ泡のようにアラーの手の届かない自由な場所なのだという
    そこは無数の扉に囲まれた丸い部屋で自分の意志で自由に扉を選び
    外に出ることができると告げられる
    但しチャンスは一度だけ
    扉の外の様子は見えないし
    この部屋に入るとことですでに自由が奪われているし
    そもそも条件付きのトリックに自由など無いという落ちが省かれている

    若者はそのトリックに気付かず自分の意志で逃れようとするが
    どの扉が自由への入口なのか判断に苦しみ
    選ぶべきヒントすら見付けられずに時間だけが過ぎ去っていく

    姿のないイブリースの声がジワジワと追い詰める
    疲れ果てて望みも区別も恐怖もなくなり
    遂に扉にも関心が薄れた
    目覚める度に扉が減りだし
    次に目覚めたとき戸は無くなっていた
    声も消え永遠の沈黙が取り巻いた

    最初は恐れで扉を開けることができず
    最後は無頓着が故に扉を選択することを不可能にした

    盲目という慈悲が与えられない限り聖なる御心に従うことができる
    完全な自由とは完全な不自由なのだと悟ったとき
    盲目の乞食となってバグダッドの城門の前であなたに話していた

    この世の矛盾はイブリースも含めて全知全能の神のいたずらなのか?
    神の力の及ばないイブリースに支配された泡のなかなのか?

    この世に住む我々の意識の総合なのか!
    エンデはその答えを文字にしていない

    今日は20160514
    久々にエンデの小説を読む
    いつも字面を読み過ぎると同時に何が描かれていたのか
    もうろうとして忘れたような錯覚に陥る
    それは永遠の霧に包まれた渦に迷い込んだ
    不思議なストーリーなのだ
    エンデは心を奪うマジナイしなのかもしれない

    今回も小品集の七番目にある
    《自由の牢獄》が気になって重い本に手を出し
    結局重たさを秘めながら全部読むことになってしまった
    にも関わらずその物語はみんな飛行機雲のように
    跡形もなく薄らいでしまう
    この忘却は歳のせいばかりでは無いのだろうと思うが
    それも定かではない

    これは小説と解されているが
    どれを読んでも同じ疑問を噛み砕いて
    人生という旅のエネルギーに変化していくだけのようで
    詩と呼ぶべきモノのように思えてくる

  • エンデの想像力はいわずもがな一級品。鏡の中の鏡より、ちょっと現実より。表題作「自由の牢獄」を浅はかな考えで読んでしまい、最後の彼の行動だけを理解してしまった。もう一度読み返したい。作品では「遠い旅路の目的地」の締め付けられるような思いが、痛いほど残った。

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