鏡映反転――紀元前からの難問を解く

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000052481

作品紹介・あらすじ

なぜ鏡の中では"左右"が反対に見えるのか?-一見、かんたんな問題のようで、実はプラトンの昔から、数多くの哲学者や物理学者の挑戦を退けてきた。しかも、常に「左右が反対に見える」わけではない。誰もが知っている現象なのに、2000年以上も謎でありつづけたこの難問を、科学的な分析と実験によって解決する。

感想・レビュー・書評

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  • 誰しも一度は疑問に思ったことがあるのではないだろうか?
    鏡を見ると右と左は反対に見えるのに、上と下、前と後ろは反対に見えない。
    当たり前のような気もするが、きちんと説明しようと思うとそれほど簡単ではない。

    数年前に少し、これについて考えてみたことがあったのだが、そのときは、
    「要するに面対称なのだから、鏡を頭上とか足下に置けば上下が反転するし、体の横に置けば前後が反転する。三次元のものを二次元に投影して映し出した対称の像だから、さほど不思議ではない。」
    という理屈で納得し、自分の中では済んだことを仕舞っておく脳内引き出しにしまい込んでいた。

    が。
    どこかで本書のことを目にして愕然とした。
    鏡映が左右反転するのはなぜかというのは世紀の疑問であって、しかも「まだ解決がついていない」というではないか。しかも基礎科学だけではなく、心理学まで必要だという。
    なぬ!?? そんなややこしい話なの? 面対称じゃいけないの???

    「はじめに」には、対象としては一般向けとある。古代の学説から、現在の説まで広く平明に書かれているという。

    では挑戦、というわけで読んでみたのだが。
    意外にこれが哲学的・物理的・心理的な広がりがある話らしい。
    哲学者ピアースは、人が鏡を見るとき、自分が回転しながら(円の中心を見ながら回るような感じ)鏡の裏側に回り込んだ像を想像しているという。
    物理学者ファインマンは、鏡の中で反対になっているのは、左右ではなく、前後だ、として、その後はピアース同様、「回り込み」理論を採る。
    心理学者ダヴィド・ナヴォンはこれらの回り込み「移動説」は、床に置いた鏡の場合には当てはまらないと批判する。
    サイエンス・ライターであるガードナーは、我々の体は左右対称であることから生じた「言語習慣」のためであるという。
    まぁさまざまな分野の人が論じているというのだが、何だか小難しい・・・。
    しつこいようだが、面対称じゃいけないのだろうか・・・?

    著者はこれまでの説はどれも一長一短で、この問題をすぱっと説明できていないという。
    では著者の主張する説は何かというと、「光学反転」「表象反転」「視点反転」の3つの要素が組み合わさった「多重プロセス理論」である。「光学反転」とは、鏡が表面に垂直な方向で像を光学的に反転させることである。「表象反転」とは、観察者自身ではなく、文字などの特徴的な形を見た場合を指す(自分自身ではないので、先ほどの「回り込み移動説」が適用できない)。「視点反転」とは、「視点」=左右を判断する場合の判断基準=座標軸が反転することを指す。
    これらが組み合わさって鏡像反転が生まれているということを、観察者自身や文字を書いたもの、立体などの様々なものを鏡に映し、それがどう見えるかという実験を行って実証していくわけである。
    その実験自体は、例えば多くの人にはなじみがないキリル文字を使ったり、切り抜いた文字を使ったり、右か左の半身にかぶり物をしたり、となかなかバラエティに富んでおもしろいのだが。

    私は正直、この本の主題がどこにこだわっているのか、最後までつかめなかった。
    だって、再三しつこいですけど、面対称じゃダメ・・・?

    この本に関しては、浅い理解で申し訳ないが、ただ、左と右って興味深いとは思う。
    幼児は文字を習得する初期によく鏡文字といわれる左右が反転した文字を書くが、上下を取り違えることはあまりない(「6」と「9」を間違える子はいるかもしれない(^^;))。
    幼児に「右」といっても通じないときは、「お箸を持つ方の手(*これも最近は左利きの子に配慮して使わないかもしれないが)」といったりする。つまり右と左は迷いがちなのだと思うのだ。私も幼児期、右左の区別が少し苦手だった。右を見てといわれると、一瞬あれっと思うこともあった。けれど、前を見てと言われて後ろを見たことはない(当たり前か)。
    右と左って、「向かって右」とか「自分から見て左」とか、基準次第で相対的なものでもある。

    世の中には「左右盲」と呼ばれる人もいると本書に紹介されている。文字通り、左右がわからないことを指すようで、このあたり、もう少し突っ込んで知りたかった気もする。

    右と左を迷いやすいのは、やはり人の体が基本的には左右対称にできているからだろうか?
    目が横に2つあることも関係あるのか? 例えば目が2つではあっても縦に並んで2つだったら見える世界や空間認識は違うのかな?

    ・・・何だか明後日の方向に着地しつつも、わからないなりに読む時間を楽しんだ本ではあったのだ、本当に。


    <参考>
    *朝永振一郎だって考えた。『鏡の中の物理学』

  • 第1章 鏡の中のミステリー
    1 鏡映反転
    2 即席の説明
    3 古代の学説
    4 鏡の光学的な性質

    第2章 さまざまな説明
    1 移動方法説
    2 左右対称説
    3 言語習慣説
    4 対面遭遇スキーマ説
    5 物理的回転説

    第3章 鏡映反転を説明する
    1 さまざまな鏡像
    2 手がかり
    3 光学反転
    4 表象反転
    5 視点反転
    6 多重プロセス理論

    第4章 説明を検証する
    1 実験のあらまし
    2 「視点反転」対「表象反転」
    3 調査
    4 否認者
    5 別解釈の検討
    6 反転鏡
    7 「視点反転」対「表象反転」:結論
    8 「視点反転」対「光学反転」
    9 「表象反転」対「光学反転」
    10 三種類の鏡映反転

    第5章 理解を深める
    1 表象反転
    2 視点反転
    3 光学反転

    第6章 他説を反証する
    1 「鏡像と重なる」という説明
    2 物理的回転説
    3 左右軸劣後説

    第7章 科学的解決と社会的解決
    おわりに

  • 鏡を自分の姿を見たときに、左右や奥行きは
    逆転しているのに、何故上下は逆転しないのか?

    という疑問を突き詰めた一冊。

    確かに言われれば不思議な気もするが、説明しようと
    するとなんとも難しい。なんとこれといった定説は
    なく、プラトンなどの哲学者や科学者がこれまで
    説明しようとしてきたが、納得いくものはなかったという。

    本編ではその内容を解説してくれているのだが、
    正直、自分の頭では理解しきれなかった。
    すごく実験は丁寧なのだが、結局何が問題と
    なっているのかが、どうにもつかめなかった。

    曰く、「光学反転」「表象反転」「視点反転」の
    三つのプロセスが絡み合っているから、ややこしく
    なっている、ということのようだが、そんなに
    複雑なことなんだろうか、という印象しかなかった。

    個人的には「光学反転」の説明にある、鏡が
    表面に垂直な方向だけ像を光学的に反転させる、
    というところで、あーそういうものかな。
    あとは見た目で混乱しているだけで、別に普通の
    ことなのかな、ぐらいにしか感じなかった。

    作中にでてくる実験は興味深く、全然知らない文字なら
    反転しているように思うのか、鏡が床にあったら
    どう感じるのか、そもそも左右が反転していないと
    感じる人達もいるらしいぞ、など、バラエティに富んで
    いるのだが、それらが自分の中でまとまらないまま、
    結局なんだったのかよくつかめなかった。ショボン・・・

    というかあとがきでサラッと書かれていたが、
    作者は慢性疲労症候群に20年以上悩まされたらしく、
    この研究も自分を鼓舞するための試金石としての
    実験だったらしい。こんなめんどくさい実験を
    病の身で・・・!?それの方が驚き。研究者ってすごいなぁ。

  • 【感想文】
     二十歳を超えてこんなにワクワクすると思わなかった。日本放送協会での映像化希望。
     版元のサイトで補足資料をダウンロードできる。
     心理学会、2007年の短いインタビューには、この問題がテーマとして挙げられている。
    https://psych.or.jp/interest/ff-21/


    【追記 2019.12.19】
     朝の有名番組「チコちゃん」で、鏡映反転が雑に取り上げられました。2018年に番組のスタッフ(所属や氏名は不明)は高野陽太郎先生に取材した上で、本書の知見を無視したようです。原因は理解力不足か、研究の軽視か……。なんにせよ、日本放送協会のことを見損ないました。

    参考サイト
    ①番組の概要
    2018年〈https://www.google.com/amp/s/xn--h9jua5ezakf0c3qner030b.com/3012.html/amp
    2019年〈https://www.excite.co.jp/news/article/Sirabee_20162221165/
    ③高野先生、去年のコメント
    http://folse.info/%E3%80%8C%E3%83%81%E3%82%B3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%AF%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8D/


    【書誌情報+内容紹介】
    著者:高野陽太郎
    ジャンル 自然科学書 > 人間・心理
         日本十進分類 > 自然科学
    刊行日 2015/07/15
    ISBN 9784000052481
    Cコード 0011
    体裁 四六・上製・252頁

    ■著者からのメッセージ
     鏡に映ると左右が反対に見えるのは,なぜなのだろう? 上下は反対に見えないのに,なぜ左右だけが反対に見えるのだろう?

     この疑問は,古来,数知れぬひとびとの頭をよぎってきたにちがいない.
     私たちはみな,毎日のように鏡を見ている.「左右が反対に見える」という経験も,毎日のようにしている.これほど身近な現象で,しかも,ただ「左右が反対に見える」というだけのことなのだから,「とうの昔に説明がついているはずだ」と思うのが普通だろう.
     ところが,じつは,これがたいへんな難問なのである.いまから二〇〇〇年以上も前,紀元前四世紀に,哲学者のプラトンがすでにこの問題を論じている.以来,古代ローマの哲学者ルクレティウスをはじめとして,数多くのひとびとが「なぜ左右が反対に見えるのか」を論じてきた.現代の学者たち(哲学者,物理学者,数学者,心理学者……)も,それぞれに説明を試みている.そうした人たちのなかにはノーベル物理学賞の受賞者もいる.
     にもかかわらず,この問題には,いまだに定説がないのである.科学読みものには,よく「鏡のなかで左右が反対に見える理由」についての説明がのっている.しかし,その説明は,それを書いている人が正しいと思っている説明ではあっても,決して「万人が認めた定説」ではない.どの説明にも,いろいろな批判があり,その批判は克服されてはいないのである.
     この本の目標は,「鏡映反転」という,紀元前からのこの難問を解決することである.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b261150.html


    【簡易目次】
    はじめに [v-x]
    目次 [xi-xiv]

    第1章 鏡の中のミステリー 001
    1 鏡映反転 002
    2 即席の説明 003
    3 古代の学説 006
    4 鏡の光学的な性質 009

    第2章 さまざまな説明 017
    1 移動方法説 018
    2 左右対称説 024
    3 言語習慣説 027
    4 対面遭遇スキーマ説 029
    5 物理的回転説 034

    第3章 鏡映反転を説明する 041
    1 さまざまな鏡像 042
    2 手がかり 045
    3 光学反転 051
    4 表象反転 053
    5 視点反転 064
    6 多重プロセス理論 080

    第4章 説明を検証する 085
    1 実験のあらまし 086
    2 「視点反転」対「表象反転」 093
    3 調査 099
    4 否認者 102
    5 別解釈の検討 107
    6 反転鏡 116
    7 「視点反転」対「表象反転」:結論 120
    8 「視点反転」対「光学反転」 122
    9 「表象反転」対「光学反転」 127
    10 三種類の鏡映反転 132

    第5章 理解を深める 135
    1 表象反転 136
    2 視点反転 157
    3 光学反転 178

    第6章 他説を反証する 191
    1 「鏡像と重なる」という説明 192
    2 物理的回転説 198
    3 左右軸劣後説 204

    第7章 科学的解決と社会的解決 215

    おわりに  [227-232]
    謝辞 [233]
    参考文献 [1-5]


    以下,【無料ダウンロード資料】
     附章A 他説を反証する[増補]
     附章B 「単純な説明」の運命
     附章C 斜対した対象の鏡映反転
     附章D 時計まわりと反時計まわり
     附章E 対掌体



    【目次】
    はじめに [v-x]
    目次 [xi-xiv]

    第1章 鏡の中のミステリー 001
    1 鏡映反転 002
    2 即席の説明 003
    3 古代の学説 006
      プラトンの説明
      ルクレティウスの説明
    4 鏡の光学的な性質 009
      鏡による反転と非反転
      奥行き方向の反転
      知覚される現象としての反転
      認知の問題としての鏡映反転


    第2章 さまざまな説明 017
    1 移動方法説 018
      ピアースの説明
      ファインマンの説明
      ブロックの批判
      ナヴォンの批判
      重なりあう理由
      文字の鏡映反転
    2 左右対称説 024
      左右の近似的な対称性
      片腕の人物
      文字の鏡映反転
    3 言語習慣説 027
      「言葉の使いかた」という説明
      論理の飛躍
      文字の鏡映反転
    4 対面遭遇スキーマ説 029
      自分の鏡像と実物の他人
      文字の鏡映反転
      床の鏡
    5 物理的回転説 034
      グレゴリーの説明
      観察者の回転
      自分自身の鏡映反転


    第3章 鏡映反転を説明する 041
    1 さまざまな鏡像 042
    2 手がかり 045
      物体の種類
      比較の対象
      方向の異同
      横対した場合
      三種類の鏡映反転
    3 光学反転 051
      文字の左右反転
      前後反転
    4 表象反転 053
      鏡に正対した文字
      表象
      文字の表象
      左右反転の原因
      物理的回転の役割
      さまざまな表象反転
      表象反転をひき起こす対象
      表象反転と光学反転
    5 視点反転 064
      視点の転換
      座標軸の変換
      回転の方法
      回転の役割
      鏡像の視点をとる理由
      視点反転をひき起こす物体
      鏡に横対したときの鏡映反転
      回転と平行移動
    6 多重プロセス理論 080
      視点反転
      表象反転
      光学反転
      三つの原理


    第4章 説明を検証する 085
    1 実験のあらまし 086
      実験の必要性
      実験の方法
      較正〔こうせい〕
      「一つの現象」対「三つの現象」
    2 「視点反転」対「表象反転」 093
      鏡映反転を否認する人
      文字の鏡像の認知
      否認者についての予測
    3 調査 099
      調査の方法
      調査の結果
    4 否認者 102
      自分の鏡映反転
      否認者の割合
      文字の鏡映反転
    5 別解釈の検討 107
      対称性にもとづく解釈
      非対称な人体と対称な文字
      鏡映反転と対称性
      他人の鏡映反転
    6 反転鏡 116
      凹面鏡と合わせ鏡
      多重プロセス理論の予測
    7 「視点反転」対「表象反転」:結論 120
    8 「視点反転」対「光学反転」 122
      横対の場合
      実験による検証
      視点変換の必要性
    9 「表象反転」対「光学反転」 127
      「表象との比較」対「実物との比較」
      横対したヒエログリフ
      鏡映文字のC
    10 三種類の鏡映反転 132


    第5章 理解を深める 135
    1 表象反転 136
      鏡映文字
      切り抜いた文字
      未知の文字
      学習経験の有無
      逆さ文字の鏡像:上下反転
      逆さ文字の鏡像:左右反転
      イメージ回転
      文字以外の表象反転
      未知の地図
      表象の左右
      モナリザの鏡映反転
    2 視点反転 157
      位置判断についての予測
      被験者のリボン
      鏡と正対した実験者のリボン
      被験者と正対した実験者のリボン
      リボンの位置:結論
      方向の判断と反転の判断
      判断の変化
      視点変換の不安定さ
      方向の判断と反転の判断(再)
      床の鏡
      視点変換をひき起こす対象
      自動車
      右ハンドルと左ハンドル
    3 光学反転 178
      上下の鏡映反転
      重力のか影響はあるか?
      立体の前後反転
      対象による違い
      上下と左右の光学反転
      光学反転の認知


    第6章 他説を反証する 191
    1 「鏡像と重なる」という説明 192
      移動方法説と左右対称説
      鏡像に重なる理由
      人間以外の鏡映反転
      左右が非対称な人体
      表象反転
    2 物理的回転説 198
      物理的回転説のロジック
      いきなり見た鏡像
      鏡映文字
      未知の文字
      物理的回転の役割
    3 左右軸劣後説 204
      左右軸劣後の原理
      方向の整合性
      文字の鏡映反転
      多幡の説明
      コーバリスの説明
      左右非対称な被験者


    第7章 科学的解決と社会的解決 215
      現象の複雑さ
      理論外の要因
      他説とのせめぎ合い
      批判の例
      反論の例
      科学的な解決と社会的な解決


    おわりに  [227-232]

    謝辞 [233]
    参考文献 [1-5]

  • 「何故、鏡に映ると反転するのか?」この単純な疑問が過去から現代に至るまで長らく論争を繰り広げており、かつ現時点でもその明確な答えが出ていないことに関して驚きを隠せなかった。しかし、この単純な問題が何故現代に至るまで解かれていないのか、この本を読み進めていくことによってこの問題の奥深さを知ることが出来た。この本の筆者が行きついた答えは、鏡映反転というものは三種類の反転の組み合わせの違いによってもたらされるものであるというかなり斬新なものであった。でも、確かに文字の反転と身体の反転は同じようで違う。そして、最初は疑いの念が強かったこの説も本を読み進めていく上でその通りかもしれないと感じるようになっていった。何より面白かったのはこの現象が物理的現象ではなく心理的現象(認知心理学)によってもたらされるという点であった。確かに文字の反転とかは自分の頭の中に思い浮かべた文字との違いから反転を認識している(表象反転)。内容は中々難しく、一回読んだだけでは理解できてない部分は多々あるが、それでも心理的現象にもたらされる現象ではないかという考え方を享受出来た点において、中々価値のある内容だったのではないかと感じている。

  • これは面白い、鏡に映る像がどう見えるのか、それはなぜかは、光学反転、表象反転、視点反転という三つの多重プロセスによってもたらされることを論理的に説明し、データによって論証するもの。いや〜、鏡は深い。

  • 鏡に映ると左右が反転して見える。子供でも知っていそうなこのからくりが、紀元前から定説がなく、ノーベル賞学者まで交えて侃々諤々だとは驚いた。
    著者の説明は、鏡に垂直な面は確かに反転するが、左右や上下が反転しているわけではない、そのまま映しているだけ。考えたら確かにそうだ。
    その後は、では人間がなぜ反対だと認識するのか、という分析にページが割かれている。脳の不思議さが興味深い反面、こんな調査をしないといけないのかという疑問、被験者に「左右」を答えさているのだが、被験者の認識と言葉にギャップはないのか、など疑問も湧いた。 

  • なぜ鏡に映ると左右が反対になって見えるのか。上下は
    そのままなのに、なぜ左右だけが反転するのか。この本
    を見た時、考えてみれば簡単に答を出せない問題である
    ことにハッとして早速読んでみることに。すると、何と
    その答は未だに定説を得ていないというではないか。
    どんどん興味が湧き出し、さぁいよいよこれから本題、
    というところで書いてあった一文で、私のこの本に
    対する興味は一気にトーンダウンしてしまった。その
    一文とは「鏡はその表面に垂直な方向だけを反転する」
    というもの。これを読んで、鏡映反転に対して私が
    持っていた疑問のほとんどが、あっという間に氷解して
    しまった。鏡は左右を反転させたりはしない。考えて
    みれば当たり前の話だ。私が右手を挙げれば、鏡に
    映った私が挙げているのも右手だ。ただ、私はそれを
    前後逆に、つまり裏側から見ているということなのだ。
    それでは上下が反転しないのは当然である。

    この本は、だが、そこから先の話を扱っている。それは
    「なぜ人はその前後逆になった映像を見て、左右が反転
    していると考えてしまうのか」という問題だ。すなわち
    それは脳内のお話であり、認知心理学の分野である。
    これでもかという丁寧な実験のおかげもあり、面白い
    内容にはなっているのだが、私にとっては蛇足のような
    ものだったかな(失礼)。

  • 読み始めた当初は物理的な話だと思っていたので、途中で混乱した。
    なぜ、鏡に映った◯◯を見て、右と左が反対になっていると「思う」のか、あるいは反対になってないと「思う」のか、のお話。
    最後まで読んでみても、正直、これってそこまでのめり込んで研究して知りたい話かな…と、気持ちがついていかなかった。

  • 鏡に見える自分の見え方、見方がこれだけ人それぞれなのかと。みんな自分と同じなのかとばかり思い込んでいた。まずそこに驚く。
    左右の不確かさ。揺らぎにも驚く。
    脳みその中でどう判断してるんだろ。けっこう適当なのは分かった。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2017年 『心理学研究法〔補訂版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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