原子・原子核・原子力――わたしが講義で伝えたかったこと

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000053297

作品紹介・あらすじ

原子・原子核について基礎から学び、原子力について理解を深めるために、科学上の発見や研究の発展を歴史的にたどりながら、ていねいに解説する、物理学の入門書。福島原発の事故以来、後の世代にとてつもなく大きな負債をつくってしまった我々に何ができるか、問い続けてきた著者が、2013年に駿台予備学校千葉校で行なった記念講演(開校20周年、ボーア原子模型100周年)に基づくもので、やさしい語り口で記される。

感想・レビュー・書評

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  • 2013/03/17に、駿台予備学校千葉校で行われた記念講演(開校20周年、ボーア原子模型100周年)を元にした2015年の単行本。

    第7章 原爆と原発 「7.1 原子爆弾について」、において、「核エネルギー解放の原理的可能性が明らかにされることと、それが工業レベルで実現されることとは、まったく別次元のことです。」(p.195)と述べ、核エネルギー発電の工業レベルでの実現について批判している。

    [目次]
    はじめに

    第1章 原子論のはじまり
    1.1 化学原子論
    1.2 歴史的な語りについて
    1.3 力学のおさらい
    1.4 気体分子運論

    第2章 イオンと電子の発見
    2.1 重力をめぐって
    2.2 電磁気学の初歩
    2.3 電気分解の法則
    2.4 電子の発見

    第3章 X線と放射線の発見
    3.1 レントゲンとX線の発見
    3.2 ベクレルとキュリー夫妻
    3.3 放射線をめぐって
    3.4 放射線の人体への影響

    第4章 アインシュタインと光子仮説
    4.1 光電効果をめぐって
    4.2 放射線のエネルギー
    4.3 光子の波動性と粒子性
    4.4 アインシュタインについて

    第5章 原子モデルをめぐって
    5.1 有核原子
    5.2 原子の古典モデルとその問題点
    5.3 ボーアの原子モデル
    5.4 一般の原子について
    5.5 モーズリーの悲劇

    第6章 原子核について
    6.1 放射性元素の崩壊
    6.2 核物理学のはじまり
    6.3 核力と核エネルギー
    6.4 核分裂と連鎖反応の発見

    第7章 原爆と原発
    7.1 原子爆弾について
    7.2 原発の事故について
    7.3 使用済み核燃料の問題
    7.4 原発と環境汚染・被曝労働
    7.5 放射線の危険について

    あとがき
    索引

  • 山本義隆先生の駿台での記念講演を基にした原子物理学入門。先生の講義を聴いているかの様。
    原子物理学の基本法則をその現れた歴史と、関わった物理学者たちを交えて語られていて、とても面白い。
    予備校での講演だけあって、「この図は・・・2000年の東京大学の入試問題にも使われています」とあるのは御愛嬌。
    終章で多くの科学者が原爆製造にかかわっていくのが悲しい。

  • ☆思ったよりおもしろくない。科学史家という肩書が限界かな。

  • 山本義隆 「 原子 原子核 原子力 」

    理系予備校生向けの講演録。原爆と原発の開発と事故の歴史にも読める。数式は流し読みしたが、原子論、電子論、X線と放射線、原子核のエネルギー、原爆と原発をわかりやすく説明。

    科学は 多くの命と時間を犠牲にして 改良発展してきた歴史を持つにも関わらず、原子核と原子力は 制御不能な技術として 撤退すべき という論調。


    科学の敗北とも読める

  • 原子について、具体な数値を交えながら語られている。

  • 基本であるところの原子とは何か?とかいう話を、物理学の基本から説明する。e=mc^2の証明がさらっと出てきたりする。数式の変形はほぼ微分くらいまで。それでぐいぐいとほらこういうことですよねとすすむ。その中で、エレクトリックってそもそも琥珀って意味ですよとかいう教養が出てきたりする。こんな授業が30−40名の前で実現していて、それを書き起こす人たちがいて、本にする人たちがいるわけ。実は、磁力の発見だかなんだかっていうこのひとの本は途中で脱落した気がするんだけど、この本は非常に読み進める敷居が低かった。物理の歴史なのに!で最終的には、原子力についての話になるんだけど、読み進めていくうちに、その桁違いのエネルギーの意味がわかってくる。すべての理系の人が読むべき本。文系でもいけるかも。

  • 429||Ya

  • この本は「物理学の入門書」とカバーの解説にある。確かに原子・原子核の基礎から、科学上の発見や研究の発展をたどり、原子力についての理解を深めるために、とても平易な語り口で解説されている。残念ながら、理数系を苦手とする私には、頻出する数式や記号、グラフなどは全く理解できないが、古代ギリシャから福島原発の事故に至るまでの物理学と化学の歴史の流れは、とても興味深いものがある。
    そうした数々の学者たちのエピソードもさることながら、原子炉と原発は何ら変わるものではないこと、そして、そもそも原子炉は原爆の材料を作るために作られたものであること、原爆は、とにかくナチス・ドイツに先に作られてはならないという大命題からスタートしており、経済性や放射能の人命に対する影響・安全性などを度外視した突貫工事で進められた計画であること、などが語られる。放射能汚染についても、基準値以下の低レベルにするために大量の水で薄められて海に放出しているので、けっして量が少ないというわけではないこと、また基準値なるものも、原発を稼働するための必要性から割り出されたもので、それ以上の合理的根拠のあるものではない、といったことも書かれている。
    副題にある“講義”とは、筆者の勤めている駿台予備校の千葉校が開校20周年を迎えた記念に行われた特別講演のことで、この時の内容に加筆して全7章構成にまとめられている。

  • 思いのほか数式が多かったが、細かい部分は気にせずに流れを押さえていけば十分に理解できた。
    物理史を通読しながら、随所にキラキラと至言が。例えば、アインシュタインの有名な数式を核反応と結び付けて理解していたが、とんでもない勘違いであったとは。
    あの山本氏が駿台の講師をやられていたとは、今更ながら知った。
    講義録ではあるが、著者、渾身の一冊との意を強く持った。

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著者プロフィール

山本義隆(やまもと・よしたか)
1941年、大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。科学史家、駿台予備学校物理科講師。元東大闘争全学共闘会議代表。

「2022年 『演習詳解 力学 [第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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