VANから遠く離れて――評伝石津謙介

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222228

作品紹介・あらすじ

岡山での幼少期から「飛行の夢」に象徴的なモダニズム文化の影響。敗戦まで暮らした中国・天津の日本租界。VANの創業と倒産からその後の評論活動…。石津謙介(1911‐2005)の生涯と思想をアイビー・スタイルの提唱者としてのノスタルジーだけではなく、戦後史や都市文化との関係の中に位置づけ、日本人のライフスタイルを主導した意味を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 若かりし頃、チョッとお洒落しようとした私が居た。懐かしいなぁ~

    中日新聞に掲載された高島直之による書評
    http://www.tokyo-np.co.jp/book/shohyo/shohyo2012060301.html

    岩波書店のPR
    「1950年代から70年代までの若者のファッションをリードした企業VANの創業者、石津謙介の決定版評伝。岡山での幼少期から、モダニズム文化の影響、戦中の天津暮らし、VANの創業と倒産、その後の評論活動と長年の調査をもとに、アイビーの教祖としてのノスタルジーではなく、戦後史、都市文化、アメリカとの関係の中で彼の生涯と思想を位置づける。」

  • ふむ

  • 全くVAN世代ではないが、昭和カルチャーに興味を惹かれて手に取った。石津は1911年生まれで、祖父と同世代。岡山の紙問屋の家に生まれて、裕福な幼少時代、グライダー部を創設した明治大卒業、天津の大川洋行で勤務、内地へ引き上げ、大阪北炭谷町でのVAN創業、78年の倒産、その後のメディアでの活躍を丁寧にたどる。93年の生涯だけにさながら大河ドラマだ。VAN時代の活躍は他メディアでもよく取り上げられているが、最盛期に年商450億円、社員数2000人だった会社が、拡大路線とオイルショックによる繊維不況により傾く。青山にVAN99ホールという文化施設まであったこと、北海道新冠町に牧場まで作ろうとしていたこと、ユニクロの柳井正の実家は山口でVANショップを営んでいたことなどが興味をひかれた。晩年んも着物への挑戦やアオキと組んでON FRIDAYを立ち上げるなど精力的であった。TPOなど数々の名言を産んだ石津だが、最初の著書「男のお洒落実用学」、朝日新聞出版の「大人のお洒落」は一度読んでみたいと思った。

  • 衣食住の衣を以って若者たちが親とは違う世代であることを表明した最初のアイコンがVANだったと思います。そもそもVANが雑誌の名前の譲り受けであり、前衛(van-guard)を意味していることを本書によって始めて知りました。ヴァンジャケット創始者、石津謙介の人格形成に京大・瀧川事件の瀧川幸辰教授をも登場人物とするような戦前のモダニズムが大きく影響していることも意外でした。しかし石津のモダニズムはモダンボーイとしてのこだわり。日本人がなかなか持ち得ない自由な浮遊感覚が本書を横溢していて、ちょっと豊かになってきた時代の青春がそれを欲したのはわかる気がします。(浮遊感覚で言えば、61番目のグライダーの滑空教士免許の持ち主!)そのフワフワ感が炸裂するのは実は倒産までの過程。句読点さえも感じないように一気に起こる崩壊の主役は商社であり、労組であり石津の存在感は全くありません。本人がポジティブな意味だ、と断り書きつけても、ソフト産業は虚業だ、と言っているところにクリエーションとビジネスが別レイヤーだった昭和時代を感じました。

  • ホントのIVYブームは知らないけど、POPEYE世代の私もオシャレや遊びの影響はVAN......というか石津謙介の影響はかなり受けている。
    最近、着るものを含めたライフスタイルに拘りがなくなってきたことに、大いに反省させられた一冊であった。

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