- Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000223942
感想・レビュー・書評
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「出発点」と比べると文化人としての自分の立場をふまえての発言も多いと思うけど、面白い。近年の宮崎作品のストーリーの曖昧さや説明不足さというのが意図的な物だということがわかる。集団での地道な作業で作り上げなければならないアニメーションという手法や人間の年齢という制限が無ければこの人はどんな物が作り出せるんだろう。
子供が大切ということを繰り返している。あとがきにかえての最後の文章がとても心に残る。
「子供が成長してどうなるかといえば、ただのつまらない大人になるだけです。大人になってもたいていは、栄光もなければ、ハッピーエンドもない、悲劇すらあいまいな人生があるだけです。
だけど、子供はいつも希望です。挫折していく、希望の塊なんです。答えは、それしかないですね。人類の長い歴史の中で、そういうことが繰り返し、繰り返し、感じられてきたんだなぁと思うんです。そういうふうにできているんですね、世界は。自分たちが作り出しているのではなくて、そのサイクルの中に自分たちもちゃんと入っているんです。だから、なんだかんだと言いながらも、なかなか滅びないんだと思います。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『出発点』以降の『もののけ姫』から『崖の上のポニョ』公開までの
エッセイやインタビューを収録。
ジブリで一番好きな作品が『もののけ姫』であるから楽しく読めた。
混沌とした時代とか色々言うが、それでも結局
子供に対しては、生まれてきたこの時代、この世界を
肯定してやりたいと映画を作り続ける姿勢が良い。
次は『到着点』になるのかな。 -
色々な着眼点があると思うけど、宮崎駿の死生観を見る上では非常に良い資料だなと思う。文字だけだけど、なんとなくどういう人なのかが伝わってくる良い本。
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『もののけ姫』から『崖の上のポニョ』までの間の宮崎氏によるインタビューやコラムをまとめた一冊。大ヒット作の根底にある宮崎氏の哲学を知ることができる。『もののけ姫』は『風の谷のナウシカ』よりも『耳をすませば』の延長上にある作品である、映画監督でありながら映画はあまり観ない、などの目から鱗が落ちる話が満載だ。
自信がアニメ作品を作りながらもアニメが子どもたちにもたらす影響には懐疑的であったり、戦闘機を愛しながらも戦争には嫌悪を抱いているなど、自身の矛盾に気づき、そこでもがく謙虚さのある方なのだと感じた。 -
「せめて志だけでも高く持つ」
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宮崎駿さんの、1997〜2008年、もののけからポニョまでの文章。
環境への考え方。子供達への考え方。飛行機乗りへの考え方。
しっかりと確立された人だなぁと思いました。
ハウルだけ周辺を固めるような書き味? -
「もののけ姫」
今日、自然と経済活動には必ず環境問題が存在する。そしてその問題は日本を問わず、先進国から後進国まで世界共通の問題として横たわったおり、完全なる答えはないように思われる。
経済活動が往々にして優先される事が多いが、あえて保護側を批判するならば、いつも「自然は人間が残すべきものなんだ。か弱いものなのだ」という論法が通年の気がしている。
駿氏は本来の自然はその様なか弱気物ではなく、人間と耐えずせめぎ合いをしてきた非常なる姿だと言っている。
確かにもののけ姫に出てくる動物達は獰猛である。しかし、自然界の強さを備えた姿には威厳に満ち溢れていた。
日本の奥深い森は本来この様な威厳も持っていたはずだろう。
人などが管理出来る様な物ではなかったのだ。 -
ああそうだなって思うことがたくさんあって勉強になりました。
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アニメを海外向けにコンテンツとして有望視することについて(メモ)
アニメで雇用を増やしたり、外貨を稼いだりなんて、こっけいな感じすらする。マイナーであることがアニメの活力を生んできたと思う。そんなアニメに国が本腰いれて取り組むなんて・・・・・・。90年代のナタデココのようになってしまうかも。一大ブームだ、さぁいくぞと思って意気込んで誰もが事業を始めたり投資した途端ブームが去って大誤算、後は損害だけが残ったということだってあり得る。過度の期待は禁物だ。現代のアニメ作品はいくらビデオで残そうとDVDを売ろうと、何百年単位では消えていく運命にある。
海外に目を向けるのもいいが、日本は一億人を超える人口を持つ数少ない先進国だ。これだけの規模があれば、欧州の一国単位や韓国ではできないことが単独でやれる。だからこそ、アニメがここまで盛んになった面もあると思う。海外の評価ばかり気にして肝心の国内がおろそかになってはいけない。
(p455)