構造改革と日本経済

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000228367

作品紹介・あらすじ

前著『転換期の日本経済』で「失われた一〇年」を分析し、その本質は「需要不足」であると喝破した著者は現在、経済財政諮問会議民間議員としてまさに「構造改革」の中心にいる。本書では一九九八年以降の日本経済の状況に鋭い分析のメスをいれ、巷間いわれる「構造改革=サプライ・サイド・ポリシー」ではなく、「ディマンド・サイド」の重要性を一貫して主張し、イノベーションと需要創出の好循環に支えられた新たな経済社会への道筋を示すべく、政策提言を行う。

感想・レビュー・書評

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  • 「構造改革と日本経済
     東京大学教授で経済財政諮問会議議員でもある著者が、日本経済の現状を分析しつつ、小泉純一郎政権が掲げた「構造改革」の考え方を説明する。
     日本経済が抱える問題は「需要不足」であるにもかかわらず、小泉政権は構造改革という供給サイドの政策を強行しようとしているとの批判が国内外で出ている。過去10年の日本経済の問題が需要不足にあるという点では、著者も同じ認識を持つ。ただし、その需要不足が1~2年という短期間で終わらず、長期間の持続的なものだったことに注目すべきだと主張する。「持続的な需要」を生み出すためには、「一時的」「場当たり的」な需要を与えても効果がない。供給サイドに向けた政策によって経済の構造変化を促し、需要を創出することが重要で、その点で構造改革には意義があると解説する。

     一口に「失われた10年」と言うが、日本経済は1997~98年を境に階段を1段下りたと著者は見る。この時期に起きた金融危機によって、不確実性、リスク、将来不安が急速に高まり、日本経済は必要以上に萎縮してしまったからだ。日本経済再建の大前提として、まずは「不安」が解消されなければならない。具体的には金融システムの安定、社会保障制度の抜本的改革、雇用不安の解消が必要だと説く。」
    需要が、供給やり不足しているから、デフレが起きるのであるという立場から言えば、いかに吉川洋という碩学の説く、構造改革が需要を生むからとは言え、生産性の向上による「景気回復」は、なかなかに困難なのではないのだろうか。供給の改革だけでの改革は、日本のようなデフレ不況でのた打ち回っている状態では、政策割り当てとして不適切である。
    デフレ不況と5パーセントに近い失業率が続く限り、財務省と日銀との政策協定によるデフレ不況の脱却宣言と金融緩和の実施が、デフレ期待を、インフレ期待へ作為的に変更できる、相した期待への変更政策が、ゼロ金利の状態では絶対的に必要なのではないか?構造改革だけに頼り切る、改革では、不況を、失業率の回復の無い景気回復を続けるだけのことになる。生産性の回復は、技術開発、雇用の削減、所得の減少をデフレ不況の場合招くにしか過ぎないのだからである。

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