砂漠でみつけた一冊の絵本

著者 :
  • 岩波書店
3.70
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本棚登録 : 159
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000230117

作品紹介・あらすじ

大人にとって絵本を読むこととは?絵本の豊かな世界は、生きることをいかに深く問いかけるのか。人生の体験を経た大人だからこそ発見できる絵本の読み方をわかりやすく説き、現代人の心の糧を探す。

感想・レビュー・書評

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  • 再々読。
    一見すると詩的に見えるタイトルは著者本人の悲痛な体験から出たもので、心の砂漠にあらわれた一冊の絵本が緑のオアシスとなって自身を救ったという意味合いだ。
    25歳という若さでご次男が自死され、何をもってしても折り合いなどつかなかったことだろう。砂漠、という比喩でさえ言い表せないほど。

    辛い人生から抜け出すただひとつの方法は、そのオアシスを他のひとと分かち合うことだ。
    著者は絵本との出会いが気づきとなり、「大人こそ絵本を」というキャンペーンを続けている。
    この本では98冊の絵本が紹介されているが、どれもが深い愛にあふれている。
    月刊「こどもの本」で2002~2004年までの連載に加筆したものだ。

    それぞれの本の紹介は、それにまつわるエピソードと著者の思いと。
    特に「スーホの白い馬」は出色の章だ。
    美しく生きた白い馬の魂が馬頭琴という楽器に姿を変えて生き続け、その音色がスーホばかりでなく、モンゴル中の人々の心に感動と安らぎを与え続けるという物語だ。
    小学校の教科書に載っていたという方もいらっしゃるかと。
    こうした「魂の物語」が絵本の中だけで完結することなく、現実の人間社会の中でまで魂の復元の物語を創っていく。
    そんな例のひとつがここにある。正直、ここまで出来るのかと感動しきりだ。

    星野道夫さんの章も丁寧に書かれて心に残る。
    「森へ」と「クマよ」の2冊がとりあげられている。これはいい。
    伊勢英子さんや中井貴恵さんとの出会いも語られている。
    絵本の持てる力とその意味を、おふたりととともに探求し続ける姿が清々しい。
    大好きな「きいろいばけつ」も取りあげられている。
    ここは嬉しさで胸がはずんだ。この本を取りあげるひとがいたというのが、嬉しい。

    柳田さんは「絵本を大人になってから読むと、生きることや命や愛について作品に込められた強い意味が心に響くようになる」と言われる。
    また、「毎月2千円を絵本に投資して、特に気に入った作品を『座右の絵本』にすれば、それが心の財産になる」とも。
    実は、2004年に初めて読んだ時この言葉に出会い、忠実に実行してきている。
    そして座右の絵本と呼べる作品にも出会えたのだ。
    絵本探しのためだけでなく、絵本の意味を再確認も出来る素晴らしい本。
    豊かに生きるために、これからも絵本を読み続けたい。そして微力ながらも広めていきたい。

  • 柳田邦男 著

    ブクログのレビューで知った本
    柳田邦男さんがノンフィクション作家である事は、存じ上げてましたが、柳田さんの本を読むのは 初めてでした。ノンフィクション作家のイメージとは…程遠い 数々の絵本を実体験を交えながら紹介して下さっており、「大人こそ絵本を読もう」のキャンペーンをされて、それに寄せられた読者のお便りも紹介されている。
    「そうだなぁ…絵本の世界から随分離れてしまったなぁ」と、つくづく思う。
    自分で絵本を手に取ることも、あまりなくなったが、好きな絵本作家さんや挿絵の素敵な絵本を見ると 微笑ましく感じる。
    子どもの時に、親に絵本を読んでもらった記憶が一切ないのだが、向かいに住む、当時多分、大学生だったお姉さんに 小さい頃…添い寝状態で、色んなお話しを、聞かせてもらったことが、自分が本好きになる第一歩だった気がする。
    現在その優しかったお姉さんのことは全然行方知らずなのだが…その人が耳元で聞かせてくれるお話しは話し方も、とても上手で…(多分だが、本を読みながらでなくて、ご自分が読んだ絵本、童話の話しを忠実に覚えており、私に聞かせてくれたと思う)あまりに巧みな話し方で「耳なし芳一」の話しなんて怖くて怖くて…その恐ろしい場面が声がそこにいるかのように聴こえて震えたのを今でも忘れられない かと思えば…すごく楽しい冒険話もしてくれて夢中になって、想像するだけで、ワクワクしたものだ(あの…お姉さんは今頃、何処で何をしてるんだろう)
    とにかく、子どもの頃から本が大好きで……
    高校時代に絵本作家になるのが夢だった 何で絵本作家なのかって言うと小説を書く作家なんて難しすぎる(リサーチも設定も…文章長いし、)なんて思っていたからだ、なんて単純なんだ!と今なら思う 高校生の時、よくノートの切れ端に、詩なんて書いて、同級生にめちゃくちゃ褒められて、いい気になっていたんだ 高校生と言ってもまだ皆、子どもだったんだ!って今更のように思うし、大人になるにつれ、「絵本」なんて小説書くより難しいじゃんと思えるようになった あの言葉少ない頁に自分の想いや魂を、詰め込むなんて出来やしない
    短いからって単純でも、簡単なんてもんじゃなく…
    あの絵本の中の言葉にどんなに勇気づけられ、その言葉一つ一つが心に染み込んできたことか。
    絵本に対する価値観や、尊敬の念…あの中に込められて、ずっと長く愛読され何度見ても読んでも感動出来る本を描けるなんてすごいし、自分は絶対無理だ!って思った(当たり前!!)そして…長い間…自分から絵本に触れることはなくなった(自分に子どもでも居れば、もっともっと触れる機会があっただろうに…。)しかしながら、自分の友達に児童文学書や絵本大好きな人が、いて 時々、絵本を送ってくれたり 便りの葉書の中に…児童文学書や絵本の中の言葉の引用文を書いてくれてたりして…とてもホッコリするし、今は、どちらかと言うと小説好きな自分が、彼女はずっと絵本好きな少女のような気がして…懐かしい絵本を、開いた気分になれることもある 絵画にしても…絵本の挿絵を描いた絵本作家からの絵から好きになった絵画も、沢山あるし、絵本はずっと読み続けられる唯一の夢と心の世界 そして…生きてゆく為のヒントを得られる最大の友かもしれないって
    この作品を読んでも、改めて感じた。

    まだ…純粋で無垢な気持ちが自分の中にも潜んでいることを感じられる瞬間だ!
    絵本好きの友達の葉書(この葉書も絵本作家さんの挿絵だったりする)の中に…

    「たとえば…夢に飢えてる人達に
      いっぱいの思いを積み重ねて
       静かに物語りを聞かせてあげたい
          いつか あたし…」

    って 一コマが、書いてあった
    なんと…それは私が、絵本作家になりたいと熱望していた時に ノートに書いた言葉だったそうだ
    「えっ!」と思ったし、忘れていた。
    よくまぁ覚えてくれてる事自体に感激した。
    きっと今は そんな同じような思いを持った人の
    絵本の物語りを聞かせてほしい 
    と強く思うし、いつまでも友達にも感謝。

    • hiromida2さん
      nejidonさん、こんにちは(^.^)
      もう、あたたかいコメントに感激してしまいました( ; ; )実はこの本に出会えたのも、(いつもど...
      nejidonさん、こんにちは(^.^)
      もう、あたたかいコメントに感激してしまいました( ; ; )実はこの本に出会えたのも、(いつもどのレビュー見ても…あまりにも心にヒットする 作品の内容が自分に真っ直ぐ訴えかけてくれる レビューみて泣く〜?ってくらい)nejidonさんのレビューを拝見して、手にとった作品です。
      nejidonさんのように、巧く作品を紹介することも、これまたレビューも上手く書けない私ですが…あの頃、絵本作家に憧れていた記憶が蘇ってきて…ただただ自分の思い綴っただけですが…「座右の絵本」はきっと沢山あるし、出会うたびに 「ハッ!」としてしまう自分がいます。当時 絵本作家に憧れてた頃に影響を、受けたのは「大人になりたくなかった少女の物語」まるで、その頃の自分に向けられたお話しのように愕然ときたのを覚えていますし、未だに私の本棚にそっと飾られています(文=立原えりか.絵=高柳佐知子)文は勿論の事、高柳さんの絵も今でも大好きな素敵な絵です。小学生低学年の時…学校の図書館で読んだ「エルマの冒険」は何故か…とても衝撃を受けた好きな作品です。最近は触れてないと言えども 結構沢山見たり読んだりしてて(笑)どれも座右の絵本なのかもしれません。少し前…随分前の作品ですが…それこそ、ずっと絵本好きな友達から頂いた「君といた時、いないとき」(作.絵:ジミー〈幾米〉)は絵も、可愛く素敵で…内容もちょっぴり、愛くるしく楽しい気持ちと悲しい気持ちがしみじみと胸を打った作品です。
      もう、本当に、沢山の本を読んでいらっしゃるnejidonさんは ご存知かもしれませんが…nejidonさんの「座右の絵本」を知りたい私です^ ^)長くなりましたが、ブクログの皆さんから、多くの親しみと支持を、受けてらっしゃり ご病気のこと(内容は存じあげませんが)皆さんが とても ご心配されてるコメントにも勝手に心配している私でありますが、私も大きな病気を、背負っていてもブクログの皆さんも色んなものを背負いながら 明るく真摯にレビューを寄せておられ、自分だけじゃないんだと本の出会いとともに勇気をもらっています。
      また…楽しみにnejidonさんの本棚に伺わせていただきます どうか無理をなされないように…お体大切に。
      これからも、心に残るレビューを期待しております。本当にありがとうございます。
      コメント とても嬉しかったです(о´∀`о)
      2020/07/04
    • nejidonさん
      hiromida2さん、お返事をありがとうございます!
      何だか身に余る言葉をいただいて、すっかり恐縮しています。
      私、謙遜でもなんでもな...
      hiromida2さん、お返事をありがとうございます!
      何だか身に余る言葉をいただいて、すっかり恐縮しています。
      私、謙遜でもなんでもなく、どこにでもいる本好きおばさんです。たぶん、ブクログの中には腐るほどいるタイプです(*_*)
      たまたま自分でも出来ることをこちらで見つけたのでやっているまでです。
      どうかもう、これ以上ハードルを上げないでくださいね・笑
      座右の本は「シャエの王女」ですね。
      もう長いこと、どこで誰に聞かれてもそう答えています。
      好きな本というと、また別になりますが。
      hiromida2さんが挙げられた本も、どれも好きな本です!どういったところが好きなのか、たぶん私と同じだと思いますよ。

      病気の話は・・今はやめましょうね。話したところで良くなりませんし。
      元気出して生きよう、それだけです、はい。
      またたくさん本を読んで、映画も見て、そしてたくさん楽しいお話ができたら嬉しいです。
      本当にありがとうございます!
      2020/07/04
    • hiromida2さん
      nejidonさん、こちこそ本当にありがとうございます。ハードルを上げてるつもりはないのですが…(笑)nejidonさんのレビューを拝見した...
      nejidonさん、こちこそ本当にありがとうございます。ハードルを上げてるつもりはないのですが…(笑)nejidonさんのレビューを拝見した時の素直な私の感想です。座右の本は「シャエの王女」なんですね ありがとうございます。はい。そうですね!クヨクヨしても始まらない私自身そう思って生きてます 元気に楽しくお話し出来たらうれしいです。
      2020/07/04
  • 体をお湯に沈めた瞬間、
    ピリッ、と走る痛みによって
    「傷」があった事に気がつくことがある。

    知らぬ間に裂けていた皮膚。
    流れていた血。

    著者はただ、
    これまで読んで感銘を受けた本の紹介を
    しているだけなのに、
    なぜか
    ひりひりと心が痛んだ。

    柔らかく降る雨の様に、
    絵本のなかの言葉が
    著者の思いが
    しとしと、と
    痛む心に沁み入って行く。

    久々に絵本を開いてみたくなった。

    • kaze229さん
      柳田さんのこれまでの著作を考えたとき、
      ここに紹介されている「絵本」の意味
      を 思わず知らず 受け取ってしまいますよね。「この絵本」と一...
      柳田さんのこれまでの著作を考えたとき、
      ここに紹介されている「絵本」の意味
      を 思わず知らず 受け取ってしまいますよね。「この絵本」と一緒に生きていく、なかなかつらいこともあるけれど、素敵なことでもありますね。
      2014/03/11
    • MOTOさん
      kaze229さんへ

      その絵本を開くことによって蘇る思い出が、幸せな出来事ばかり、ならいいのですが。
      でも
      心沈む時こそ、差し伸べ...
      kaze229さんへ

      その絵本を開くことによって蘇る思い出が、幸せな出来事ばかり、ならいいのですが。
      でも
      心沈む時こそ、差し伸べられる手(絵本?)
      の温かさって本当に素敵ですね。(^^♪
      2014/03/12
  • ◆きっかけ
    Amazon2017/6/11

  • 絵本紹介。

    絵本は文字が少ないせいか、いろいろな解釈ができるのかもしれない。深読みしようと思えばいくらでも深読みできる、みたいな。

    ・絵本は子どもだけのものではない
    ・絵本の読み聞かせの効能
    ・おすすめの絵本

    ということがわかった、気がする。

    払ってもいい金額:500円

  • 不勉強であまり存じ上げなかったのですが、絵本を翻訳されたり書いてらっしゃることを知って、読まなければと思い至った次第(ぉ

  • 柳田邦男氏が大人に薦める絵本の紹介.中井貴恵さんとお仲間たちの読み聞かせの会は素晴らしいと思いました.

  • 座右の絵本という言葉。
    私も使っていこうと思った。

  • 柳田邦男さんと絵本が結びつかなかったのだけれど…。大人が絵本から学ぶことの素晴らしさを教えてくれる。絵本指南書?

  • 大人のための絵本紹介本で、柳田視点での紹介文はなかなか良いのだけど、既読本が多かったせいか、「こんな本があるのか!」という新鮮な驚きには欠けた。

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著者プロフィール

講談社ノンフィクション賞受賞作『ガン回廊の朝』(講談社文庫)

「2017年 『人の心に贈り物を残していく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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