ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く

  • 岩波書店
4.19
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000234931

作品紹介・あらすじ

本書は、アメリカの自由市場主義がどのように世界を支配したか、その神話を暴いている。ショック・ドクトリンとは、「惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革」のことである。アメリカ政府とグローバル企業は、戦争、津波やハリケーンなどの自然災害、政変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人びとがショックと茫然自失から覚める前に、およそ不可能と思われた過激な経済改革を強行する…。ショック・ドクトリンの源は、ケインズ主義に反対して徹底的な市場至上主義、規制撤廃、民営化を主張したアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンであり、過激な荒療治の発想には、個人の精神を破壊して言いなりにさせる「ショック療法」=アメリカCIAによる拷問手法が重なる。

感想・レビュー・書評

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  • 新自由主義とは経済エリートの独裁であり、
    新保守主義とは政治エリートの独裁であることがとてもよくわかる歴史書である。この本を読んでネオリベ思考とはどういう思考をする人たちなのかこの本から読みといてほしい。

  • インドネシアと関連が長いので、冒頭のスカルノ失脚とスハルトの台頭が欧米主導だった事の経緯が興味深かった。

    他国への干渉を強かに続ける国家戦略という強欲な政治家のゲーム。
    無縁でいたいが、鎖国も出来ないし…

  • ミルトン・フリードマンをはじめとするシカゴ学派が主張する新自由主義的資本主義の批判書。チリ、アルゼンチン、中国、ロシアで起きた革命や政権崩壊を取り上げ、経済体制を一瞬のうちに原理的自由・資本主義に換えてしまったことにより、失業率が上昇し、貧富の格差が広がったことを示している。結果として、ごく一部の人に富が集中したわけだが、その波及的好影響も大きいはずであるし、一概にどちらが正しいのかは計りかねる。
    「シカゴ大学教授の確信するところによれば、いったん危機が発生したら迅速な行動を取ることが何よりも肝心で、事後処理にもたついたあげくに「現状維持の悪政」へと戻ってしまう前に、強引に襲撃をかけて改革を強行することが重要だという」p7
    「世界をゼロから創造する神のごとき力をわがものにしたいという欲望こそ、自由市場イデオロギーが危機や災害に心惹かれる理由にほかならない」p28
    「(フリードマン)規制緩和、民営化、社会支出削減の3つの柱」p78
    「(フリードマン)「福祉国家」と「大きな政府」に戦いを挑む」p79
    「(ガンジー)国家間の武力紛争は私たちを恐怖に陥れる。だが経済戦争も武力紛争と同じくらい悲惨である。経済戦争はいわば外科手術のようなもので、延々と続く拷問にも等しい。それがもたらす惨害は、戦争文学に描かれた悲惨に劣ることはない」p181
    「票は収入よりも平等に分配されている」p188
    「サッチャーには国をひとつにまとめるための的が必要だった。緊急措置や弾圧を正当化する非常事態、すなわち彼女が残酷で時代錯誤なのではなく、タフで決断力に富んでいると見せるための危機が必要だったのだ。フォークランド紛争は、その目的を完璧に満たした」p196
    「正当理論では、すべての社会的コストをショック療法によって貧困層に押しつけようとする」p209
    「国民は、ハイパーインフレを解消して正常な状態に戻るためなら過激な変化でも受け入れようと考える」p235
    「シカゴ学派の経済学のもとでは、植民地のフロンティアにあたるのが国家であり、今日の征服者は、かつて先祖たちがアンデスの山々から金や銀を持ち返ったときと同じ非情な決意とエネルギーを持って国家を略奪する」p341

  • この本から得られた知見は私はこの本のレビューをするべきではないことと、混乱が無ければ変化がない、イノベーションとはある種の混乱の困難の中でなされるという事である。
    政治・経済については良く分からない。しかし、ショックを起こしたり、そのショックに乗じて変化するということが分かった。エピソードとして、ヒトへの洗脳の話があるが、個人でも社会でも価値観が壊れるようなショックは自ずと変化をもたらす。
    私がよく夢想していたのは、戦争や災害で世界がメチャクチャになれば、リセット出来るのではないかということ。一理あるが、破滅と混乱だけに終わる可能性が高い。むしろ、中の人が変化を望んだ時にキッカケとして何らかの混乱は重要だと思う。
    変化を望むのであれば、その意味やストーリーを考えるための一つのキッカケになる知見だ。

  • 今まさに世界中で行われている、新自由主義という名の搾取あるいは詐欺行為が、多数の実例を挙げて書かれている。厚くて読むのが少々難儀かもしれないが、時間を掛けて読む事をお薦めする。資本主義なんて糞喰らえ、だ。

  • これは読み進めるのが辛い本だ。単に、ページ数が多いからではなく、内容があまりにもショックだからだ。でも、読者はそれに耐えなくてはならない。でないと、"どうせテレビの向こう側の話で、自分達には影響無いし"みたいな"安心感"に包まれそうで、読んでいる意味が無くなるので。
    ショックドクトリンを実施するに当たって、はじめに出てくる事柄に、CIAのマニュアルがあるがそのなかに拷問に関することがある。拷問は口を割らない人間への"尋問"する方法だったが、もはや"黙らせる"頭を「白紙状態」にするものになっている。ナチスの実験を連想させるー。
    クラインもいっているが、問題が起こると、その原因はなにか、誰かと暴こうとするが、短絡的にすることは危険だ。本書ではふたりの「ショック博士」が出てくるが、彼らだけでこんなにも遠大なショックドクトリンは成し遂げられないのはいうまでもないし(誤解の無いよう。彼らのしたことは、人間として赦されない)、また、イデオロギーを追求しても、資本主義や社会主義は完璧ではない(しかし、追求されないイデオロギーの問題が、うまく逃げおおせた人を生んだことも指摘されている)。
    人は「経済」となると、"攻め"が甘くなる。暴力には果敢に立ち向かうが、それとなると「専門家」に任せてしまった南アフリカの例は印象深い。経済と暴力はイコールにならないと普通は思う。本書の意義は、決してそんなことはないと告発することにある。
    月並みだが、まず本書でその歴史を概観し、事実、何が起こったのかをよく知るべきだ。すると、現在の日本のある"姿"が浮かんでくる気がする。

  • 【100分で名著】を見て読書。
    予想していたより難しかった印象です。あまり政治・経済に詳しくないからかもしれません。
    何も知らずに生きてきたのだと実感しました。
    拷問や恐怖で人を支配するという印象しか残りませんでした。

  •  もっと早く読むべきだった。中国やロシアの現在に至る原点がここにある。必読の書だと思う。

  •      ―2023.01.22読了

    ナオミ・クライン―話題の著作
    惨事便乗型資本主義の正体を暴く―『ショック・ドクトリン』
    上下巻で本文686頁に及ぶ本書を読み通すのは、
    些か骨が折れるハードなものであったが、
    まさに、現代史探訪の書

  • シカゴ学派経済学=新自由主義(ネオコン)が自然災害、クーデターによる政権転覆、体制崩壊、戦争など惨事に乗じてその教説を世界に広めてきた歴史を暴き出す。
    ネオコンも、最初は起きた惨事に乗じられると事後的に気づいたのだろうが、やがて危機=惨事を意図的に作り出すようになったということだろう。(パンデミック、ウクライナ戦争)
    資本主義が暴走すると、かくも恐るべきことが起こってしまうという歴史的事実から、私たちは何を学び、何をすべきなのか。
    深く考えさせられる。

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著者プロフィール

1970年、カナダ生まれのジャーナリスト、作家、活動家。デビュー作『ブランドなんか、いらない』は、企業中心のグローバリゼーションへの抵抗運動のマニフェストとして世界的ベストセラーになった。アメリカのイラク戦争後の「復興」に群がる企業の行動に注目したことがきっかけとなった大著『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』は、日本でも多くの読者に受け入れられた。『これがすべてを変える――資本主義 vs。気候変動』は、「『沈黙の春』以来、地球環境に関してこれほど重要で議論を呼ぶ本は存在しなかった」と絶賛された。2016年、シドニー平和賞受賞。2017年に調査報道を手がける米ネット・メディア「インターセプト」に上級特派員として参加、他に『ガーディアン』『ネーション』などさまざまな媒体で記事を執筆している。

「2019年 『楽園をめぐる闘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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