ちいさな言葉

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000238595

作品紹介・あらすじ

幼い子どもが一つひとつ言葉を覚え、使うようになる道のり-それは微笑ましいだけでなく、日本語の不思議や面白さを照らしだしてもくれる。『サラダ記念日』で広く知られる歌人は、いまシングルマザーとして、いとしい息子の興味深い表現や発想を受けとめながら、言葉のキャッチボールを堪能中。小学校入学まで四年間の至福の時間を、柔らかな感性と思考でつづる。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもが初めて話した言葉は何だったろう。

    内面の感情から発していた、あー、うー、ぎゃー、の音。自分の外の世界にある対象を理解し、身近にあったものの名前を結び付けていく。はじまりはやはり、まんま、まま、であったか(少なくとも、ぱっぱ、じいじ、ばあば、ではなかった)。

    歌人である俵万智さんが、幼少のお子さんとの何気ない日常のやり取りの中、成長していくお子さんの言葉を追いかけている。大人になってしまい既に修正、確立してしまった言葉の世界から見ると、たどたどしい子供の言葉の世界が輝いて見えてしまう。おもわずそうくるか!っと唸ってしまう場面もしばしば。時に親ばかの場面もちらほら。

    言葉は自分の内側の心の世界と、外側の物の世界をつなぎながら発達していくのですね。大事にしなきゃ。「夢の話」、「せーなちゃん」、「愛へのつっこみ」に座布団1枚。

    後半”木馬の時間”の章では、子育て時期の愛情がいっぱい詰まっています。 「収穫の秋」にて、”葡萄は手をかけただけ良い方向に枝が伸びて育ってくれるけど、子供はそうとはかぎらないでしょ”

    なるほど。
    (岩波現代文庫版もあり)

  • 俵万智さんのこどもの成長記録である。こども独自の考え方や気づきなどがのっていてとてもおもしろかった。普通の家庭にもある風景であるのにその言葉のおもしろさに気づくのは、言葉を大切に扱っている俵万智さんならではだと思った。
    読んでいてとてもこころがほっこりしていて読むたびに癒された。お茶を飲みながら疲れたときに読んで、ふふっと笑って肩の力をぬきたい。すぐそばにおいておきたい、そんな一冊だ。

  • 子どもの言葉に関するエッセイ。

    自分が当たり前だと思っていることが子どもにとっては「なんで?」「どうして?」ってことだったりして、おもしろい。
    いつから当たり前だと受け入れ始めるんだろうね、不思議。

  • 子育て中のお母さんに勧めたい1冊。
    子どもはいないけど、仕事柄普段から子どもと接しているだけの自分でも、感じることがたくさんあった。

    「言葉」を生業としている俵さんの息子さんだからこそ出てくる発言だなー、と思うものもたくさんあり、幼いころからたくさんの言葉を子どもにかけてあげることが大切なのだなぁ、と思った。また、俵さんの言葉の受け止め方だったりを読んでいると、子どもたちがすごく愛おしい存在に思えた。
    特に、「未来で一番好き?」はなんとなくハッとさせられた言葉だった。「これから先もずっと好きでいて欲しい」純粋な気持ちからそんな言葉が出てくるんだろうな、と思うと、自分も誰かに同じように聞いてみたいと思ってしまった(笑)
    家庭環境が複雑になってきている今、いろいろな子どもがいる。親だけじゃなく、接している大人みんなが忙しい中でも出来る限り1つ1つのことばに耳を傾けてあげて欲しい。そのことばの中には、大人が救われるようなもの、ハッと思い出させられるようなものもたくさんあるのだから。

  • 幼い頃にしか出来ない表現があって、その魅力も特別なものだと感じた。息子さんがすくすくと成長してゆく姿がとても微笑ましく、あたたかい気持ちになれました。
    子どもながらに、主観的な「お母さん」と他者から見た「まちさん」があることに気付いていることに、自分たちが思っている以上に大人びた部分があるんだなあと再確認させられた。

  • ◆きっかけ
    2人目を出産して、生まれたての息子の顔を見ていたら、上の娘が生まれてから読んだ俵万智さんの短歌がチラチラと思い出され(生まれてバンザイ とか)、もう一度読みたい、もっと多くの育児系の作品を読みたいと思い、図書館にあった5冊を母にリクエストして借りてきてもらった。『たんぽぽの日々』『プーさんの鼻』『ちいさな言葉』『ありがとうのかんづめ』『オレはマリオ』。たんぽぽの日々については借りるの2度目。

    ◆感想
    い図。たんぽぽの日々の続きという感じで、2歳〜小学校入学前までの、言葉を獲得していく時期のエッセイ。たんぽぽの日々とは違い、短歌はほぼ無し。
    p154で子守唄の話が出てきて、「坊やはよい子だ」のとこを名前に変えていたお母さんがいたというのは、同じ!と共感。夏川りみさんがカバーした古謝美佐子さんの童神(わらびがみ)の話が出てきて、どんな曲かと気になってYouTubeで聞いてみたら、知っている旋律で。歌詞は初耳だからどこで聞いたのかなーって考えてたら、思い出した。王心凌のアルバムに入ってた「feiba」だ。日本の曲のカバーだったんだ!中国の曲かと思ってた。2018/3/30

    ◆引用
    p56…表現への欲ーー子どもが、まず覚えるのはモノの名前、すなわち名詞だ。それから「ちょうだい」とか「おいしい」とか、だんだん動詞、形容詞が加わる。さらに、より的確に表現するために、形容動詞や副詞·連体詞、それに比喩的な表現を用い始める。四歳になっ
    たばかりの息子は今、そのあたりにきているようだ。

    →娘のはじめての言葉は「たっ!」だった。楽しい時に、「たっ!たっ!」、不機嫌な時は「まー、まー」。その後しばらくしてもっと言葉らしいのが出たのが「でちたー!(できた)」だった。名詞は、その後。「かか(お母さん)」「ミッフィ!(ミッフィー)」「みーまー(みかん)」等々。2歳になるまでなかなか言葉が出てこず、のんびり待っていようという気持ちと、公園や児童館に連れて行ってみたり、読み聞かせもしてるつもりなのに何でだろう?接し方を工夫した方がいいのか?と焦る気持ちとが入り交ざっていたなぁと思い出した。

    p161…「…と、多くのお客様がおっしゃいますね」対応が感じいいだけでなく、このコックさんの答え方には一つの特徴があった。この方法がおいしいとは断言せず、まして自分がおいしいと思っているとは決して言わない。終始、多くの客がおいしいと言う方法を私は採用している、という言い方に徹している。
    もしかしたら、この方法を好まない人もいるかもしれない。まだ見ぬ「お客様」にまで配慮した物言いは、究極の敬語だなあと思う。
    暑い暑い京都で、一条の涼しい風のような、美しい日本語に出会った。

    →仕事するとき、人と接するとき、私もこうありたい。ついつい押し付けがましくなったり、自分の嗜好や考えをオススメ!と押したりしがちだ。

    p182…通行人に雪玉をばしっと投げつけた。「なんだ?」と怪訝そうな顔をしてふりむいたその人は、子どもの仕業とわかると、不愉快そうな表情で足早に去っていった。
    二日間、雪を投げても投げても、みんな笑って「こらーっ」って 言ってくれたのに……息子は息子なりにショックを受けたようだ。
    「それはね、あなたのことを知っている先生や、お友だちだからだよ。誰にでもふざけていいってわけじゃないの」
    温泉のおばあさんと駅の通行人と。どちらも息子には初めての種類の大人で、距離を測るのが難しかったことだろう。こういうことが重なって、少しずつ「社会」を体感してゆくのだろうな、と思った。

    →人との距離感。子どもたちも、近々感じていくんだろうな。

  • この本に登場する著者の息子さんは当時3〜6歳。

    言葉を操り始めたばかりの年頃特有のユニークで、たまに大人がハッとするような真理を突いた言葉が、言葉を操るプロである母(俵万智さん)というフィルターを通して描かれています。

    その数々のエピソードに、同じ年頃の子をもつ母として、共感したり、驚いたり。

    ものすごいスピードで日々変わっていく子どもの貴重な『今』の姿を忘れないようにと、事あるごとに写真を撮っている私ですが、やはり文字で残すのは格別だな、と改めて思いました。

  • 著者の才能を受け継いだ、幼い息子の成長記。
    ことばに触れて、使いたくて、でもちょっと間違っていて・・・。
    子どもの言葉に焦点をあてた、やわらかなエッセイ。

    甥っ子が幼児語を言うようになった。
    いつか、その口から言ってほしくない言葉も覚えていくだろう。
    今はただ、「綺麗な言葉だけを紡いでおくれ」と願うばかりだ。

  • もっと早くに俵さんを読めばよかった。
    サラダ記念日で何となく敬遠していたのを激しく
    後悔しています。

  • こどもとのほのぼのした日々なんだけど、いま読むと「仙台在住」で「災害と文化」というフォーラムに参加した、というコラムに勝手にどきっとする。そしてこれが出版されたのは2010年。

    短歌には、そのときの思いを、真空パックで保存してくれる一面がある。
    (p146)

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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