父は、特攻を命じた兵士だった。――人間爆弾「桜花」とともに

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著者 : 小林照幸
  • 岩波書店 (2010年7月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000238632

父は、特攻を命じた兵士だった。――人間爆弾「桜花」とともにの感想・レビュー・書評

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  •  10年ほど前、バトンルージュの篤志家から、「カミカゼパイロットを在郷軍人会の総会に招待したいので、あたりをつけてくれないか」と頼まれたことがある。
     伝手を頼ってお願いしたのが本書の主人公、林冨士夫元海軍大尉と、本書にも登場する湯野川守正元海軍大尉だった。僕は両氏に、「元ゼロ戦特攻パイロット」として面会したが、この本で知るまで、両氏とも神風特別攻撃隊「神雷部隊」の分隊長で、「人間爆弾・桜花」の搭乗員を選ぶ立場にあるとは知らなかった。
     「桜花」は一式陸攻に懸吊され、一旦発進したら生存の可能性はゼロ、という非人道的な特攻兵器で、米軍に「バカbomb」とコードネームで呼ばれたほど。開発の初期、林氏を含む士官にアンケートが取られ、林氏を含む2人が志願したので、開発が決定されたという経緯があった。所属部隊最初の出撃に自分の名前を一番上に書いたものの、上司に却下され、以後は誰を死地においやるかという決定を毎日のように下さねばならなかった。仲間に対して、「いいときに殺すからな」と話しかける、この時弱冠23歳。戦争とは本当に惨いことをする。
     本書で意外だったのは、第1回目に出撃した野中少佐や林氏自身、「桜花」の効果に懐疑的だったことだ。野中少佐は出撃前夜「まず成功しないよ。それで駄目だったら、もう誰がやったって駄目なんだ。特攻なんてぶっ潰してくれ。君、頼んだぜ」と林氏に言いおいたという。林氏自身、速度の出ない一式陸攻にぶら下がった「桜花」の効果を信じておらず、自ら空技廠に出向いて超高速の新型兵器を開発したいと願い出たくらいである。
     戦後、林氏は、紆余曲折の後、航空自衛隊でパイロット並びに教官となり、毎年靖国神社と鹿屋航空基地での式典出席を欠かさなかったという。遺族巡りもずいぶん行ったようで、贖罪の意識は人一倍強かったようである。面会した時も背筋をピンと伸ばし、「かくしゃくとして」という形容詞がぴったりの方であった。本書では認知症を発症した林氏をお子さんたちが鹿屋の式典に参加させようとする経緯が書かれているのが哀しい。
     本書にはパイロットとしての林氏は描写されていないが、湯野川氏と面会した時、「林君くらい優れたパイロットはいなかった。海軍でもピカイチだった」と言われていたことを付け加えておく。きりっとした感じの林氏と比べて、いかにもくだけた紳士という湯野川氏(元海上自衛隊空将補)の方が海軍時代はスパルタで知られていたというのは意外であった。
     もう一つ、国分寺だったか、湯野川氏のご自宅で面会した時、「妹に会って行きなさい」と紹介されたのが音楽評論家で、ビートルズの来日時にインタビューしたことで有名な湯川れい子氏。今では反戦、9条護持、反原発で活躍中、というのが考えさせられる。こんなツイートもしているくらいの筋金入りである。 https://twitter.com/yukawareiko/status/367880841881341953
     本としては構成上やや読みにくいところがあるが、内容は濃い。特攻を美化しているだけではないので、お薦め。

  • タイトルから、筆者の父親の話しかと最初は思った。
    それはともかく、いくらそういう立場だったとはいえ、この年齢でこの任務はあまりに辛い。

  • 「特攻」という作戦があったことはほとんどの人が知っているだろう。
    しかし、その実態についてはどこまで知っているだろうか。国のためと命を捧げた人々の思いを知ることから、私達は学ぶことが沢山あると思う。この本では特攻に臨む兵士を指名しなければならぬ立場にあった方の一生が記されている。その辛さに思いをはせることは戦争を知らない私達が戦争に反対するために必要な作業なのではないかと思う。

    (長崎大学 学部生)

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