- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000238632
感想・レビュー・書評
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ノンフィクション作家の著者が、神雷特別攻撃隊隊員だった林冨士夫の晩年と、父の記憶と向き合った娘・夏子、息子・多聞の姿を描いたルポルタージュ風のテクスト。認知症が進む冨士夫に対するケアと、残された著書やインタビューなどから、冨士夫の人生を決定的に変えた特攻隊での日々について記述するパートが交互に組み合わされている。「第二世代」の戦争経験を記述する一つの方法としても考えられる。
しかし、タイトルはやはりミスリード。冨士夫の階級は大尉だから、決して「兵士」ではない。一人の市民、という立ち位置を強調したかったがゆえと思うが、特攻出撃を命じられた側からすれば、違和感は禁じえない。
もうひとつ残念なのは、娘の夏子や息子の多聞が父の戦争体験を思いやるくだりはあるのだが、肝心の冨士夫の声が読み取れないところ。直接取材は不可能でも、子供たちの記憶に残る父の姿、戦争体験を背負った男の姿をより具体的に描き出すこともできたと思うのだが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新風桜花特別攻撃隊神雷部隊で23歳のとき。戦後は自衛隊に。
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タイトルから、筆者の父親の話しかと最初は思った。
それはともかく、いくらそういう立場だったとはいえ、この年齢でこの任務はあまりに辛い。 -
「特攻」という作戦があったことはほとんどの人が知っているだろう。
しかし、その実態についてはどこまで知っているだろうか。国のためと命を捧げた人々の思いを知ることから、私達は学ぶことが沢山あると思う。この本では特攻に臨む兵士を指名しなければならぬ立場にあった方の一生が記されている。その辛さに思いをはせることは戦争を知らない私達が戦争に反対するために必要な作業なのではないかと思う。
(長崎大学 学部生)