- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000241281
作品紹介・あらすじ
戦間期と第二次大戦中に本格的毒ガス戦を行った唯一の国日本。しかし政府はその核心部分を認めていない。旧軍資料を中心に、人体実験をともなう開発から一九四五年の敗戦までの主に中国に対する毒ガス戦の展開、戦後のアメリカによる免責や、負の遺産としての国内外の遺棄・廃棄問題まで、日本軍の毒ガス戦の全貌を初めて明らかにする画期的研究。
感想・レビュー・書評
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東日本大震災直後、海外メディアは日本の秩序だった様子を絶賛していた。それから数ヶ月経つと、日本政府や東京電力等の原発事故に対する情報の非公開性等に辛辣な批判が寄せられるようになっている。
これは原発事故に限ったことではなく、歴史に対しても同じことが言えるのではないだろうか。
本書は日本軍が第二次世界大戦において毒ガスを使ったことを、従来に加えて新資料もベースに研究した一冊である。
「ドイツもユダヤ人の虐殺に使ったではないか」や「世界的な枠組みはそもそも不十分であった」等の批判が寄せられがちだが、これらに肯定できる理由はそもそもない。
また資料の誤りがあると全てを否定する論調も相変わらずである。
筆者自身も他国が指摘する部分で誤りと思われる部分は指摘しているし、批判的に述べているところもある。
しかし、文書や手記を丹念に解き明かしていく気の遠くなるような作業の跡から日本軍の毒ガスの使用が極めて高く感じられる。
本書が刊行された時は既に戦後60年近く経っており、生き証人の減少や終戦直前の資料の焼却、未だに残っていると思われる戦時中の機密情報等で資料が欠落していると感じられる部分はかなり筆者の主観に近い推測に頼らざるを得ない部分もある。
また、資料の大部分が日本側からのもので、中国等からのアプローチを総合的に判断したものとは言い難い。
それでも日本軍の毒ガス戦がどのような意味を持つのか?次の時代を考えていかなければならいという意味で重要な一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示