21世紀日本の情報戦略

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000242127

作品紹介・あらすじ

米国流のIT革命への過大な期待は、2001年になって、危惧していた通りバブルとなって早々にはじけた。その原因は、ドット・コム企業の破綻、通信業界の過剰設備投資、パソコン需要の減退などにある。米国に追従していた日本もIT不況に突入した。いまこそ日本は独自の情報戦略を持ち、別の道を探らねばならないことを提言する。

感想・レビュー・書評

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  • (2004.04.01読了)(2003.09.27購入)
    コンピュータを動かす上で欠かせないオペレーティングシステムのTRONはいまや携帯電話に利用され、電脳博物館を作り、最近は、ICチップの実用化に向けて推進中。

    【目次】
    はじめに
    第一章、米国のITバブル崩壊から学ぶこと
    1.絶頂から不況へ
    2.ドットコムの破綻
    3.通信業界の過剰設備投資
    4.パソコン需要の減退
    第二章、米国と日本
    1.日本のやり方
    2.米国流をまねてみて
    3.なぜ日本はだめになったのか
    4.第三の道を
    第三章、日本の戦略
    1.さまざまな戦略
    2.これから来るモノ
    3.国家がなすべきこと、すべきでないこと
    おわりに

    ●パソコンがなくなる
    一般の人には、ソフトを入れることによりなんにでも使える汎用的なパソコンは過剰スペックであり、電子メールとWebのブラウズができる簡単な専用機で十分。マイクロソフトのWindowsは重たすぎる。
    ●西欧文明の取り入れ方
    外来文明を取り入れるとき、日本は文化的背景は気にせず取り入れてきた。したがって運用は日本流ということになる。どこの国でも同様の事は起こっていて、アメリカの寿司は日本では考えられないようなものがあったりする。
    背景にある考え方を気にせず取り入れて失敗した例としてモールス信号を挙げている。
    アルファベットの場合は、英文で使用頻度の高い文字ほど短い符号が割り当てられている。EやTが短い。QやZは長い。和文の割り当てでは、使用頻度の低い「ヘ」や「ム」が短く、出現頻度の高い「カ」や「シ」が長い。これで何が悪いかというと送る信号が多くなってしまうということ。
    ●独創性
    一般論として、アメリカは独創的で、日本はそれを真似て改良して経済を発展させてきたといわれる。
    坂村さんは、日本の平均的集団の力を引き出すには、コミュニケーション力が大事で、そのためにプレゼンテーションやディスカッションの技術を国語教育の中で実施すべきだという。
    僕は、アメリカでも、マイクロソフトは物まねで発展してきた会社と思っている。最初のBASICは、オリジナルかもしれないがMS-DOSは他社から買い入れたものであり、Windowsは、Macintoshをまねたものであり、Internet ExploreはNetscapeをまねたものです。そのほかの製品についても買い入れたりまねたり、他社での開発者を引っ張ってきて開発してもらったりです。マイクロソフトのオリジナル商品はありません。
    ●漢字コードはユニコードでいいのか
    アメリカは、自国のコンピュータを世界に売り込みやすくするために、世界の文字を一括して扱えるようにユニコード規格を作った。中国、台湾、日本、韓国からの漢字は、5万8千文字の候補を2万文字にまとめてしまった。住民票や過去の文献をコンピュータで扱うのにこれだけの文字で間に合うのか、中国と日本で違う字体のよく似た文字を一つのコードにしてしまって、中国語の語学書が作れない。等の問題が起こってくる。独自のコード体系を作る必要がある。坂村さんは、TRON文字コードを作成中。世界の文字を150万字まで扱えるという。
    ●アメリカの内政干渉
    日本での教育用コンピュータのOSをTRONに決めようとしたときアメリカは非関税障壁としてスーパー301条をちらつかせてきた。そのため政府は、TRON採用を見送ってしまった。ソフトウェア商品の一社支配ということは、アメリカ、EUで現在も問題とされている。

    著者 坂村 健(サカムラ ケン)
    1951年 東京生まれ
    東京大学大学院情報学環学際情報学府教授。
    専攻は、電脳建築学。
    1984年からTRONプロジェクトのリーダーとして活躍。
    IEEE(米国電気電子学会)のマイクロエレクトロニクスの学会誌である「Micro」の編集長。IEEEフェロー。
    第33回市村学術賞特別賞、2001年武田賞受賞
    ☆坂村健の本(既読)
    「コンピュータとどう付き合うか」坂村健著、光文社、1982.10.30
    「電脳都市」坂村健著、冬樹社、1985.05.10
    「TRONからの発想」坂村健著、岩波書店、1987.02.27
    「TRONで変わるコンピュータ」坂村健著、日本実業出版社、1987.04.25
    「電脳社会論」坂村健著、飛鳥新社、1988.10.19
    「電脳未来論」坂村健著、角川書店、1989.05.10
    「ユビキタス・コンピュータ革命」坂村健著、角川oneテーマ21、2002.06.10

    (「BOOK」データベースより)amazon
    米国流のIT革命への過大な期待は、2001年になって、危惧していた通りバブルとなって早々にはじけた。その原因は、ドット・コム企業の破綻、通信業界の過剰設備投資、パソコン需要の減退などにある。米国に追従していた日本もIT不況に突入した。いまこそ日本は独自の情報戦略を持ち、別の道を探らねばならないことを提言する。

  • 著者は日本の情報戦略というものが無いに等しいと述べている。反してアメリカは戦略をよく理解し、利用していると・・・。若干アメリカ賛美的な内容が鼻につくが、指摘されている内容は妙に納得させられる。

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著者プロフィール

INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長、工学博士。東京大学名誉教授。IEEE Life Fellow。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長。組込OSとして世界中で多数使われている。TRONはIEEEの標準OSでもある。2003年紫綬褒章、2006年日本学士院賞、2015年ITU150Award受賞

「2022年 『教養としてのコンピューターサイエンス講義 第2版 今こそ知っておくべき「デジタル世界」の基礎知識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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