敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人

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制作 : John W. Dower  三浦 陽一  高杉 忠明 
  • 岩波書店 (2004年1月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000244206

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人の感想・レビュー・書評

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  • ○この本を一言で表すと?
     第二次世界大戦直後の日本のいろいろな階層で起こったことを描き出した本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・敗戦後の日本についてかなりの文献を集めて検討され、かなり踏み込んだ本だと思いました。その本がアメリカでも様々な賞をとったというのは興味深い話だなと思いました。

    ・昭和天皇の名前「裕仁」がこれほど何度も登場する本を初めて読みました。

    ・増補版になって写真の掲載を増やしたそうですが、そのおかげで当時の様子が視覚的にもわかってよかったです。

    ・敗戦直後の様子が写真とともに紹介されていて、かなり迫力があるなと思いました。特に日本人・外国人捕虜の痩せっぷりが想像以上にすごかったです。1945年8月15日の玉音放送で敗戦が確定した後も、海外に出ていた日本人が戻ってくるまでにいろいろあったり、待っている人にもいろいろあったり、戦争の影響が終戦後にピタッと止まるようなことはないのだなということがよくわかりました。敗戦後、日本人が勝利した連合国側が想像もしていなかったほどの受け入れっぷりをみせ、民主主義化などの占領政策をむしろありがたいもののように受け取ったというのは、日本人の国民性というものなのか、上層部や前提条件が変わればコロッと態度が変わるところが出ていて印象的だなと思いました。(第一部 勝者と敗者)

    ・戦後のそれまで目指していたものが虚像だと感じた脱力感、生活苦による絶望などがあり、子どもたちの遊びも自虐的な大人を真似たものになっているというのは、その時代を知らない現代に生きている人には実感が得られにくいことだろうなと思いました。米軍の兵隊を慰めるために国家として積極的に慰安婦を集めたこととその経緯は初めて知りました。「パンパン」と言われる人たちがいたことは別の本で知っていましたが、自然発生的に生まれたものと考えていました。闇市が当時大いに発展していたことも本やマンガで知っていましたが、その闇市を取り仕切る組を政府側も頼みにしていたり、そこで動く金額が大きかったりすることなどは、現代の発展途上国で見られる姿と似ているなと思いました。生きることが必死な中で明るい歌が好まれたり、英会話の本が売れるはずと見込んで大ヒット商品を生み出したり、英会話のラジオで国民に明るさを取り戻そうとした名物アナウンサーがいたり、大変な状況の中でも何か成果を生み出していく人たちはすごいなと思いました。(第二部 絶望を超えて)

    ・急速に様々な制度が導入され、実施されていく中で、それらをかなりの速度で受け入れている日本人の姿や、改革を実施する側の米国側が日本で過ごす姿などが印象的でした。数年前には戦争をしていた間柄でのそれぞれの姿は、客観的には非常に考えにくい状況でしょうし、当時の日本を直接見ていない人にとっては聞いても信じられないような話だったのだろうなと思いました。アメリカ人の受け入れられっぷり、尊敬されっぷりがアメリカ側のマンガや芸者等がアメリカ人を迎える写真などでよく伝わってきました。(第三部 さまざまな革命)

    ・天皇が戦犯になるかならないかという話で、今まで読んできた本では日本人側が積極的に天皇を守り通したということで一貫していましたが、この本ではかなり違った視点で書かれていて印象的でした。日本人がこの時代の話を書くことと違ってタブー等を感じないからか、天皇自身の責任を様々な文献で証拠づけていて、これらの証拠が存在したにも関わらず、マッカーサーの意向や統治上の利便性などからかなりあからさまに偏った形で天皇が無罪とされた経緯は初めて知りました。天皇本人が意図的に責任から逃れたのか、そうせざるを得なかったのか、日本ではかなりデリケートな話題で、今までとは違った踏み込んだ話を知ることができてよかったです。日本国憲法成立の経緯について、ある程度は他の本でも知っていたものの、かなり詳しい経緯が書かれていてよかったです。日本側がかなり甘く見て明治憲法を少し修正する形で案を出していたことは知っていましたが、そうするに至った当事者の考えや感情的なものまでかなり生々しく書かれていて興味深かったです。憲法案をアメリカ側で一週間で作り上げた経緯も、見方によってかなり集中的に力を入れて書き上げたと見るか、その程度しか手間を掛けなかったと見るか、かなり変わってきそうだなと思いました。案が出された後にアメリカ側で原案が作成された経緯があっさりと世間に広まったり、邦訳する段階でかなり意図的に意味を曲げて行ったりする日本とアメリカとのやりとりはかなり臨場感があり、いろいろな思惑が絡んでいたのだなとよくわかりました。検閲については江藤淳の「閉ざされた言語空間」でかなり詳しく載っていましたが、この本では少し違った視点で、そのタブーの中でどう出版活動が行われたのかなどが描写されていて当時の感覚がある程度つかめるなと思いました。(第四部 さまざまな民主主義)

    ・東京裁判についてもいろいろな本で書かれてあってある程度は知っていましたが、その経緯が他の本とは違った視点で書かれていて興味深かったです。東京裁判の戦犯以外の当事者についてかなり詳しく書かれていて、東京裁判とその周辺の話まである程度理解できたように思いました。他の本だと「考えるまでもなく不当で問題外」という書き方がされていることが多いですが、国際法との関係について法律学的にどの点については正当でどの点については不当なのかなどが詳しく説明されていました。一人パル判事だけが反対していたという印象がありましたが、他の判事もいくつかの点については反対していたり、判断を留保していたりして、かなり複雑な裁判だったのだなと感じました。(第五部 さまざまな罪)

    ・いくつかの「パージ」による影響や、占領後の日本について書かれていました。マッカーサーが日本をドイツに比べて少年扱いした聴講記録が日本に伝わると、あっという間にマッカーサー神話が崩れて名誉都民とする話や銅像を建てる話が立ち消えになったことは初めて知りましたが、この転換ぶりも戦後の転換ぶりと合わせて大きな転換で、ここまで大きく何度も変わっていく日本人のよく言えば柔軟さ、悪く言えば流されやすさが際立っているなと思いました。いろいろな本で日本軍にかなりの被害を出したとされる辻政信が占領終了後の人気が出て国会議員になったというのは驚きました。戦後に帰還兵がかなり雑に扱われていたことも「空気」なら、占領後に戦犯として捕まったものがよく扱われていたことも「空気」で、同じような条件でもどのような「空気」にあるかによって扱いが全く変わってくるというのは、日本だけの話ではないでしょうが、興味深く、また怖い話でもあるなと思いました。(第六部 さまざまな再建)


    ○つっこみどころ
    ・様々な文献等で証拠付けられていながら、それらを判断する著者の視点にどこか一方的なものを感じ、客観的な内容が書かれているという印象は少し弱かったように思いました。

    <下巻のレビューと同様>

  • 敗戦直後の日本の状況を、アメリカ人日本史家がありありと描く作品。写真や資料が豊富で、上下合わせて800ページ以上になるけれども、飽きのこない構成になっています。
    その時代を生きた人と接することだってある、わずか70年前のことなのに、自分はあまりに無知であることを実感。
    天皇の戦争責任回避、虚脱、カストリ文化、逆コース、皇位継承者、極東軍事裁判過程、日本国憲法制定過程、などなど...
    読み終えて、近年の自民党政権の動向に危うさをより感じるとともに、良くも悪くも日本人の国民性は戦中・戦後からあまり変わっていないのだなと感じる次第です。

  • そうか、戦後は米軍による検閲があったために空白部分がなかなか埋まらなかったんだ。
    自民党と米の関係があくまで強固な理由が分かってきた。

  • タイトルに惹かれて読み始めた。いつも夏休みの季節には日本の近代史に関係する本を読む事にしているのだが、今年はこれ。いろいろな意味で、日本人は、日本とは、と考えさせられるものだ。

  • 上巻は 日本の庶民の敗戦直後の様子が中心。犠牲者としての庶民が 当時の文学、生活状況とともに 映し出されている。これが 敗北の姿なのだと思う


    上巻のポイント
    *敗戦により 庶民に虚脱が生まれたこと
    *戦勝国のおごりと 敗戦国の屈辱 が 虚脱を生んだこと
    *非軍事化と民主化は 女性を強くしたこと
    *「売春婦」「闇市」「カストリ」が 庶民の虚脱を救ったこと
    *虚脱を理解すると 坂口安吾「堕落論」の意味が理解できること
    *敗北に目をつけて、英会話の本を出版した目ざとい日本人もいたこと

  • 大学新入生に薦める101冊の本 新版 (岩波書店/2009) で気になった本。

  • 膨大な資料を渉猟して記述されたにもかかわらず、単に資料の羅列にならない文章になっているのは、著者の並々ならぬ筆力の賜物であろう(もちろん、訳者も含めてのことであるが)。
    何より、歴史記述の視点を、その時代を生きる一人一人の人間に焦点化しているということが、この著作をまるで小説を読むかのように、夢中になって読ませる大きな要因となっているのではないか.
    とにかく、この本によって、初めて日本の戦後史を詳しく知ることができた。
    下巻を読むのが楽しみである。

  • 2年半積ん読状態だったものをようやく読了。戦後アメリカの占領政策のもと、日本人と国がどう形作られてきたかがつかめる良書。現在の私たちの価値観や良心の根底が作られた時期ともいえ、とても参考になる。「占領政策をリードしたのが戦勝国のアメリカであり、侵略の被害者である中国人や朝鮮人、インドネシア人やフィリピン人ではなかったことが、彼らに対する懺悔の気持ちを損なわせる決定的な要因となった。」「GHQの絶対的な権力による自由民主化という、矛盾した体制による仕組みづくりが、あちこちに矛盾を残すこととなった」「義理、人情、助け合い、平等という、昔から日本人が持ち合わせていたとされる心情は、戦災孤児、未亡人、負傷帰還兵などには発揮されず、弱者に対する深い愛情は持ち合わせていなかったともいえる。」「戦後発行された書籍等に共通する感情として、例えば学徒動員や特攻隊の死は悲劇とされているが、彼らが殺した被害者の死には触れられることはない」「天皇を崇拝し、軍部を支持していた国民が、終戦と同時に敵国であるアメリカを支持するようになった。こうした変化が悪いのではなく、なぜこうした変化が起こったのかを理解する必要がある」「それまでの価値観を破壊し、転換させたのはアメリカかもしれないが、日本人はものすごい勢いでそれを受け入れ自分たちのものにした。これはもともと日本人側に受け入れる土壌があったと言える」「民主主義を絶対権力者に求めたり、社会主義を天皇の威光に訴えるなど、思想の混乱がうかがえる。これは現代でも起こっていることではないか。そこを見落とすと、予想もしていなかった事態に陥ることがある」

  • 日本を勉強した感想のような文章

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
    敗戦後、普通の人々はどう暮らしていたのか?貴重な写真と本文でたどる。

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敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人の作品紹介

一九四五年八月、焦土と化した日本に上陸した占領軍兵士がそこに見出したのは、驚くべきことに、敗者の卑屈や憎悪ではなく、平和な世界と改革への希望に満ちた民衆の姿であった…新たに増補された多数の図版と本文があいまって、占領下の複雑な可能性に満ちた空間をヴィジュアルに蘇らせる新版。

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