- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000244282
作品紹介・あらすじ
今こそ聖なる杯グラダーレを返還するために司祭ヨハネの王国への道を切り開くのだ!-皇帝ひきいる軍勢とともに、バウドリーノと仲間たちはいよいよ東方への旅に乗り出すが、待ち受けていたのは思いもかけない運命だった。史実と伝説とファンタジーを絶妙に織りまぜて、エーコが遊びごころたっぷりに描きだす破天荒なピカレスク・ロマン。
感想・レビュー・書評
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下巻は一気読みでした!もう愉快で楽しくて。
中世エッセンスがてんこ盛り。
キリスト教の世界観に科学や哲学、市場で売ってる怪しい薬に東方魔境の世界とかとか。個人的には「真空」についての議論と聖遺物についての諸々のエピソードが楽しめました。あの超有名な聖遺物が出てきたときは思わずニヤリとしましたよ!最後には密室殺人?の謎ときまで。ここでは、謎解きの冷酷さを見ました。私はミステリ好きだけど、解けない謎があってもいいのになあ…としみじみ思いました。
あとがきにもありましたが、ほんとにエーコ先生楽しんで書いているのが伝わってくるお話でした。
参考文献も読んでみたくなりましたが、難しそう…。-
「中世エッセンスがてんこ盛り。」
うんうん。
エーコの本はペダンティックで、知的好奇心が擽られます。「中世エッセンスがてんこ盛り。」
うんうん。
エーコの本はペダンティックで、知的好奇心が擽られます。2013/02/07
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イカしたほら吹き野郎が、東の果てのそのまた果てにあるって言う伝説の神の国を求めるながいながーい旅のお話。
そもそも旅に出るまでが意外と長くって、素敵なほらを吹きまくって、成り上がって、だらだらとどうでもいいような討論を繰り返しつつ、旅に出るのか出ないのか…的なくだりが割と続いたりする。歴史的なあれこれも交えて割と退屈なくだりもあったりする。
でも一度12人のゆかいな仲間たちとの大冒険が始まってしまえば、もうそこからは、驚きと興奮の数々が次から次へと訪れるっていう至福の時間が約束される。
幻想的な国々と異国的感性の人々、ポップでキュートな怪物たち、あの子とのメロドラマ、嘘で固めた宝物、そして、愛するべきものを守るための最後の闘い…。
んで、このまま冒険押しで終わるかと思いきや、カラクリまみれの密室殺人の謎が解き明かされる衝撃のラストへと展開してく。
つまり、歴史小説、青春小説、冒険小説、推理小説が、語り方を変えつつ、時間と空間をうまく飛び越えながら、横断的に成立してる。しかもそのどれもが、バウドリーノという一人のほら吹き野郎の愛とか友情とかにまつわる内面的なあれこれと密接に結びつきながら、一つの大きな流れを作ってて、伝記文学として華麗すぎるほど素晴らしくまとまってる。人の一生には、歴史も青春も冒険も、推理ですら欠かせないわけですな。
とにかく、下巻に入ったらあっという間。最高ですじゃ。 -
フリードリヒの死の真実は偽りで、バウドリーノは無実の人間を殺しただけだった。生涯をかけて追い求めた聖ヨハネの王国は存在せず、聖杯は自分自身で捏造した偽物だ。
バウドリーノがまだ幼かったころ、彼の師が言った通り、バウドリーノの生涯は美しい嘘に満ちたものになった。 -
まさに縦横無尽。こいつを楽しめる大人になれてよかった。
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2020/3/6購入
2020/6/12読了 -
人間の創造力と想像力をシニカルな視点で描きつつ、果たしてそれを書いている自分も後世の大捏造者とする作者。
世界は同心円状に広がるメタフィクションかなのかも?と思わせる壮大なファンタジー。 -
ウンベルトエーコ 「 バウドリーノ 」中世ローマの司祭ヨハネ伝説のパロディー。「歴史は神が作るもの」というキリスト教的歴史観や神学論争(無神論、三位一体説)を批判?
歴史は神が作ったものというキリスト教的歴史観の批判
*バウドリーノが語る嘘(未来)が 現実になる=神が語る(またはイエスが語る)言葉が 現実になる
*最後は 嘘が現実にならず 悲劇へ
父と子の関係(神とイエスの関係)で物語が展開
*フリードリヒとバウドリーノ、実父とバウドリーノ
*バウドリーノと子、バウドリーノとニケタス
神学論争の批判?
*三位一体説(父、子、精霊)から 神を定義できない
*神は目的なき意思〜存在する 存在しないとも言えない
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終わったかに見えたバウドリーノの旅は終わらず、聖杯の探索は闇に消え、聖ヨハネの国は東方に鎮座し続ける。
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下巻は、バウドリーノが司祭ヨハネの王国目指す話が中心となり、上巻と違って幻想的・空想的な雰囲気になる。そして、最後にコンスタンティノープルに戻り、上巻初めのニケタスに出会うところまで戻ってくる。
「薔薇の名前」や「フーコーの振り子」と異なり、圧倒的な量の知識が繰り出される感じではなく、期待していたエーコらしさはなかった。冒険譚という色彩が強く、自分としてはそこまで好きにはなれなかった。