フィデル・カストロ――みずから語る革命家人生(上)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000246590

作品紹介・あらすじ

国際政治の舞台に残る最後の"聖なる怪物"が、著名ジャーナリストとの100時間余におよぶ火花散る対話の中で、その"大河的人生"を語りつくす。

感想・レビュー・書評

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  • 「話相手を気遣い、気取らずに話すフィデルは、十分に教養があり、愛想もいいが、ほとんど内気ともいえる内面を備えている。」

    「しかしながら、周囲を威圧するような圧倒的な個性によって、絶対的な権威を行使していた。」

     60年間米国の喉元にありつづけ、今なお米国を脅かす存在であるキューバ。かの国の事実上の国家元首だったフィデル・カストロ。その人柄はどのように形成されたのか?その人柄をもって、現在までのキューバをいかに導いてきたのか?が上巻の内容だ。

     幼少期、学童期を理不尽な周囲への反抗で過ごし、革命に身を投じる。

    「罪のないものは殺してはならない。戦いでは、敵軍と闘わなければならず、暴力の行為を正当化できる方法は他にはない」

     不正を憎み、キューバを愛するカストロ。キューバを守る胆力胆力には驚かされる。ここまで腹が据わった執政者がいただろうか?モンガダ兵営襲撃、キューバ革命、アメリカとの対決。キューバ危機では世界に核戦争の覚悟までさせた。

    「いいか、状況は高度に緊張していた。我々には紛争は不可避だと思い、その危険を受け入れることにした」

     カストロにとってアメリカ、とりわけ大統領は仇敵ともいえる存在だったが、皆が皆仇敵とみなしていたわけではなさそうだ。

    「彼の知的水準の高さには議論の余地はなかった」とJFKを評しているところからも分かる。

     とはいえ、どちらかといえば、カストロが好きに独白し続け、インタビュアーが書きとめたのが上巻。下巻ではインタビュアーの意思、そしてカストロの本音が見いだせるだろうか?

  • 2016年度今月の1冊 
    この人の死が、何故新聞の1面になるのかなと思ったあなた。手に取って欲しいです。分厚い上下巻ですが、インタビュー形式で読みやすいです。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 革命とはなにか、革命家とはなにか、そして権力とは何か、イグナシオラモネのインタビューは秀逸。翻って、日本のブル新の論説委員や記者がいかに体制礼賛しか能がない、お粗末な「人格」かが痛感させられる。

  • いまだに私たちの文化は、のうのうと生きて老体をさらすよりも、若く美しいままに夭折する方をよしとする風潮にあるほど未成熟なのですが、でもたしかに、たとえ老成したとはいえぶよぶよの石原裕次郎やエルビス・プレスリーよりは、未熟でもいきのいいスレンダーな赤木圭一郎やジェームス・ディーンの方が格好いいに決まっていますが・・・・・・。

    とかく若くして虐殺されたチェ・ゲバラばかりが英雄視されるなか、その後も生き延びて悪戦苦闘してきたフィデル・カストロには、何故かひとすじの光すら当てられないという感じでしたが、意外や意外にも2002年に、わが佐々木譲が『冒険者 カストロ』というノンフィクションを上梓して、私たちを驚かせたことがありました。

    名うての冒険小説の書き手が、革命後40年になんなんとする、弱小社会主義国家キューバを維持建設してきたカストロを冒険者としてとらえ、レーニンをはじめ他の誰も成し遂げられなかったまったく新しい国家づくりを取材・分析することで、フィクションではなくこの21世にも実際の冒険者が実在するのだと、高らかに宣言したのでした。

    それはともかく、どこかの国のような、餓死する国民のことなどそっちのけで自分の誕生日を贅沢三昧祝う国家元帥と違って、個人崇拝を否定してきたカストロは、公式には伝記の刊行を許可してこなかったのですが、そういう第三者の執筆した伝記を許す前に自らが自身を語るという行為に及んだのは、やはり85歳の高齢になったことへの感慨からなのでしょうか。

    米国のすぐそばに位置し、暗殺や謀略の危険に常にさらされるキューバにとって、ある時期にソ連の援助は必然的だったこと、他のどこにもないキューバ独自の社会体制をいかにして作り上げて来たかのいばらの道の歴史などなど、この興味尽きない話題について100時間を超えたインタビューをもとに書かれたこの本は、それは多少は対外的な政治外交戦略として嘘や隠し事も混じっているかもしれませんが、40年以上にわたるキューバ革命の実際を、他の嫌になるくらいの裏切り・悲惨・残酷な社会主義国の歴史と違った、人間の理想を目指した希望の歴史を知る上ですごく貴重であり、またいつもになく感激することしきりの読書でした。

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著者プロフィール

1943年スペイン生まれ。「ル・モンド・ディプロマティック」紙の社長であり、主幹。コミュニケーションについての研究も多く、パリ第7大学の教授も兼ねている。著者は「市民援助のための金融取引に課税する行動」(アタック)の創立者であり、行動するジャーナリストである。

「2004年 『21世紀の戦争 「世界化」の憂鬱な顔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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