シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000258647

感想・レビュー・書評

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  • 確かに、僕たちは固定観念というか、幻想に囚われていて
    きちんと再検証していなかったのかもしれない。

    軍部が独走して戦争に突入することもある。
    が、文民(シビリアン)が独走して戦争に突入することもある。

    近代的民主国家においてそれが起こり、また国民もそれを支持するところが恐ろしいところだ。

    日本語が少し分かりにくいところが多く分かりにくい部分もあるが、
    内容はとても丁寧に検証されており、刺激的な一冊でした。

  • 面白い。「シビリアン(文民)が軍を抑えなければ、軍は暴走し、ときには戦争へと国を引きずっていくだろう──このような「軍の暴走」への懸念がシビリアン・コントロールの根底にある」 しかし、現実には民主主義政権のもと、文民政府が戦争を主導し、プロフェッショナルな軍人が戦争に対して慎重な姿勢を取った例が数多くみられる。911後、テロとの戦争を主導したのは軍ではなくブッシュ政権であり、議会も多くがその後押しをした。その他、クリミヤ戦争、フォークランド紛争、第1次、第2次レバノン戦争などを例示し、文民がどのように戦争へと軍を導いていったかを検証する。
    興味深い。現在の我が国にあっても、ややもすると市民の側は隣国に対して強硬的な姿勢を取る政権を支持しがちであることから考えて、シビリアンの暴走による戦争突入というのは、決して荒唐無稽な想像だけではないだろう。 

  • 三浦瑠麗『シビリアンの戦争 デモクラシーが攻撃的になるとき』岩波書店、読了。戦争を始めるのは軍人…「軍の暴走」の懸念はデモクラシーの政軍関係の基本であり、歴史に対する反省からの知恵である。しかし本書によれば、近年の実態はどうも違うようである。軍人よりも文民が戦争を欲している。

    本書はクリミア戦争からイラク戦争まで綿密に分析。真っ先に死ぬのは軍人だ。勝算のない戦などやりたくない。研究のきっかけはイラク戦争=「シビリアンが推進し、また軍人が反対する戦争」。著者の指摘には驚くし、タカ派政治家の言には枚挙暇がない。

    勿論、現実に軍人が推進する場合もあるし、文民統制が機能する場合もある。しかし文民統制という構造があれば安心というのは早計なのだろう。ややアクロバティックではあるが、著者は、軍務の負担を国民が共有することに一つのヒントを見出す。

    勿論、軍が全て平和的、シビリアンが常に攻撃的と仮定すること自体(その逆も含め)、思考停止であり、人間論としては、人間を抽象化させる立場(ヤスパース)の最たるもの。想像力の翼を広げることが必要か。常識を塗り替え、出発点に引き戻す一冊。

    「執筆を通して、あらためて、人間であれば誰しも『ダークサイド』を持っているということだけでなく、善意であっても結果的に害をなすことがあり、他者の苦しみにに驚くほど冷淡になれるということを考えさせられた」。三浦瑠麗『シビリアンの戦争』岩波書店、あとがき。

著者プロフィール

国際政治学者。1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。専門は国際政治。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)。

「2017年 『国民国家のリアリズム 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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