公共性 (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店
3.74
  • (41)
  • (48)
  • (68)
  • (3)
  • (3)
本棚登録 : 646
感想 : 52
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000264297

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 公共性の概念がこれほど重要なものであるとは全く知らなかった。人間という存在を理解するためのキーポイントであり、石工が石目を発見したような感じである。再読、再再読が必要だ。

  • 請求記号:361/Sa25
    図書館の思い出:
    大東文化大学に奉職したころ、私はまず図書館の居心地の良さに幸せを感じたものです。緑に囲まれた東松山の図書館には、個室もあり、蔵書も圧倒的に多く静かな環境です。自分から主体的にでかけて、自分の好きな本や雑誌を選んでみてください。どんな本を読むかはみなさんの自由です。
    以下は、私が最近読んだ本です。最後の一冊は、最近の私の編著書です。読書が好きになると、自然に書くことも好きになります。ぜひ、図書館を活用してみてくださいね。
    (環境創造学部環境創造学科 川村 千鶴子 教授)

  •  齋藤純一の著作。
     公共という言葉の持つ多義性が詳しく述べられている。主にアーレントとロールズの政治観を中心にして、現代における政治の欺瞞と在り方を追求していく。

  • 公共性について述べているんだけど、積極的な定義というよりは消極的な説明という感じで、かつ非常にわかりにく文章だった。そのため、理解できていない。
    他の人の言葉を引用していること、普段使わない言葉を多用していることなどが原因だと思う。

  • コンパクトにまとめられた本だが内容は濃い。
    アーレントやハーバーマスの重要さを踏まえ、公共性と共同体を区別する新しい視点でその可能性を論じている。未来につながる本だと思う。

  • 自分とはまったく違った人びととの「間」の存在により、世界は自由な空間をつくることができる。つまり、我々が恐れなければならないのは、アイデンティティを失うことではなく、他者を失うことであると筆者は言う。
    アレントの「現われの空間」の複数性の概念に基づき公共性を論じており、ハーバーマスや親密圏にも触れているため(共和主義と共同体主義の公共性が一緒くたにされている等疑問があるが)、俯瞰的で分かりやすかった。

  • 読み易い所と難い所が極端なのは何故

  • 岩波の「思考のフロンティア」シリーズの中でも、おそらく最も有名な一冊でしょう。

    本書は、「公共性」という多義的な概念について、J・ハーバーマスやH・アーレントを参照することでその可能性を探り、それに倣って、あるいはそれに抗してこの概念の再定義を試みた著作です。
    ちなみにこの「それに坑して」の部分は、両者が想定する「公/私」の区別が実は非自明であり、その区別を問い直す役割こそが「公共性」の一側面であることを著者が強調している点にあります。

    「公共」と名の付く著作で頻繁に引用される箇所ではありますが、著者は冒頭で、公共性概念の現代的な使用を、①国家に関係するものofficial、②共通のものcommon、③開かれているものopenの3つに区別しています。
    重要なことは、これらの意味が互いに対立する可能性を含む点にあります。特に、②と③の抗争は、公共性が問われるあらゆる局面で問題となり得、本書においてもこの対立構図は随所で見出すことができます。

    例えば、本書では「言説の資源」の格差について言及されています。公共空間では、その普遍性を担保するためにも議論の手法やテーマに共通性が求められますが、一方でこの共通性は、「公的」な議論の手法を持たない人々を排除し、「私的」と見られるテーマを抱えた人々を排除する危険性を孕んでいます。この危険性への配慮がなければ、先述したような「公/私」の区別を問い直す「open」な公共性の意義は損なわれてしまうでしょう。

    また、これらの議論を踏まえ、第Ⅱ部第3章では近年の「福祉国家」から「福祉社会」へという潮流に対して、改めて「国家」や「政治」の重要性が強調されています。
    ここでは、市民社会から排除された人々に対しては国家を通じた「顔の見えない連帯」が必要となる点、現状の資源分配を問題化するためにも「福祉社会へ」が「政治的権力の分散」を伴う必要がある点が確認されていきます。


    政策実務者が真剣に受け取るならば作業の手を止めなければならないような内容の本書ですが、だからこそ重要性の高い著作と言えます。

    思索に耽る時間が確保できる方におすすめです。

  •  公共性の概念について最初に見取り図を提示したうえで、本書ではその見取り図の概念でさえも包摂しきれていない、弱者的立場に追いやられている人々への配慮や関心についての問題点を概観する。
     東日本大震災が起こった後に再読したので、刊行されたときに読んだ印象とは明らかに違った。特に公共性を国家主義的なものへとまとめあげようとする共同体論的思考への批判に関して、そのような共同体的思考への動きもそれへの批判の動きも、何らかの立場に依拠した上で〈島宇宙的〉に批判を加える点で、どちらも同様の〈引きこもり的な決断主義〉に終始してしまっている印象を抱いてしまう。むしろ、震災からの復興・福島原発事故からの復興に関連して、現在より重要性が高まっているのは、先のどちらの思考にも開かれ、島宇宙的な価値観をも架橋する包摂性(本の言葉でいえば「公開性(Oeffentlichkeit)」)であり、数多ある思考からアプローチしても、強制的に統率するのではなく、自然と統合への動きと収斂されていくような包摂性だろう。
     今回の震災では「共同性」も「親密圏」もズタズタに壊れてしまった。それをまざまざと見せつけられたのだから。

  • アレントの面白さを窺い知ることができた。
    齋藤先生は、色々な思想家の良い点を吸い上げるのが上手いな。下を巻いてしまう。

全52件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

早稲田大学教授。1958年生れ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。専門はアーレント、規範的政治理論。早稲田大学政治経済学術院長。著書に『公共性』『自由』『政治と複数性――民主的な公共性にむけて』(以上、岩波書店)、『不平等を考える――政治理論入門』(ちくま新書)、共著に『公共哲学』(放送大学教育振興会)など。

「2023年 『公共哲学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

齋藤純一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×