臨床的理性批判 (双書現代の哲学)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000265867

作品紹介・あらすじ

人の訴えに耳を澄まし、心身のすべてをあげてその苦痛に寄り添おうとするとき、大文字の普遍的真理や根拠づけられた体系は助けにやってこない。予測できない現実の運動に応え、自らダイナミックに変形しつつ、ある秩序を構想する理性のあり方-超越論的に、対話的に、倫理的に、理性を位置づけようとしたもろもろの試みを参照し、ニーチェの系譜学や発達心理学に発生論的な着想を学びつつ、臨床的理性の哲学をデザインする。固定した外部の視点に拠るのではなく、また価値を問わない情報の相対的な流動に没するのでもない、共同的な哲学の試み。他者に気を配り、想像力を働かせて問題を「発明」し、他を代弁するという不可能な営みを支える「原理ではない原理」とは何か。論理的整合性や基礎づけを求めて自閉するのではなく、対話の網の目につねに自身を開きながら、シンプルにねばりづよく持続する理性の新しいモデルを提案する。

感想・レビュー・書評

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  • ケアの現場などの臨床的な場面に定位しながら、コミュニケーションの哲学の可能性を考察している本です。

    ハーバーマスやアーペルらが推し進めたコミュニケーションの哲学の基底は、普遍的な理性に対する信頼があります。しかし、たとえ討議的な場面がコミュニケーションの理想的な状況だとしても、そうした場面のみに定位して考えられたコミュニケーションの哲学は、いつでも役に立つとはかぎりません。たとえば、苦しんでいる患者のケアに当たっている看護士に求められているのは、理性のみに基づくコミュニケーションよりも、もっと広く豊かな感受性に基づいたコミュニケーションであることは、疑いえないように思います。本書が扱うのは、理想的な討議の場面ではなく、臨床的な場面におけるコミュニケーションとはどのような内実をもつのか、といった問題です。とくに第2章は、看護士のAさん、哲学科の学生らしいBくん、そして著者の分身と思しきC先生の対話編で、コミュニケーションの哲学の臨床的意義が論じられています。

    正直なところ、少し議論の流れがつかみにくいと感じたところもあったのですが、本書が扱っているいくつかの問題には、興味をかき立てられました。

  • 見事な本だと思います。
    別に媚を売っている(指導教官)わけではありませんが、僕にはこの本の言葉が染み渡るように思えました。
    哲学書にしては文章が簡潔で読みやすく、哲学学してなくてとっつきやすい本だと思います。
    分量も200ページ程度でつらくないです。
    応用哲学ですがお勧めの本です。

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著者プロフィール

1950(昭和25)年山口県生まれ。京都大学哲学科で学んだのち、大阪大学大学院教授などを歴任し、現在は郷里の岩国市に住む。市民とともに学ぶ「中之島哲学広場」、がん患者・家族との哲学対話(おんころカフェ)にかかわるほか、英語による哲学カフェで進行役を務める。

「2021年 『哲学対話と教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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