- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000268912
作品紹介・あらすじ
安楽死などの従来の問題に加えて、新たに出現した医療問題を取り上げ、それらを合理的に考える手法をわかりやすく解説。考え方の筋道を吟味する(クリティカル・シンキング)訓練を行う、医療倫理の簡潔な入門書。
感想・レビュー・書評
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白状すると、アマゾンで医療倫理と名前の付いた本を片っ端から買ったので、買った本。到着時は薄いし軽そうだし、「はずれかな」なんて思っていた。
とんでもない。これは素晴らしい発見だった。
これまで読んだ医療倫理本は国内外問わず、比較的規範性が高く、カテゴリーや○○理論を羅列するものが多かった。ケース・スタディーになると議論が「とんでしまい」我々はこう考える、、、とジャッジメントだけが明かされることが多かった。
本書は、なぜそういう見解に至るかの理路が非常に分かりやすく述べられている。サンデルの議論を彷彿とさせ、それはロールズを引用していることからも明らかだ。
本書のもう一つ良いところは、想像力とユーモアがあるところである。想像力は応用力を生み、本書の特徴である「一貫性」の源泉になっている。ユーモアはあちこちにちりばめられ、それはブリティッシュなややシニカルなものだが、僕には楽しめた。それだけに、訳者の解説で、「このジョークの意味は、、、」的な解説があったのは残念。日本の倫理の専門家は上にfecesがつくほどまじめでユーモアがない。ユーモアがないからしなやかさがなく、だから想像力を欠く。想像力を欠いた倫理は現場の文脈が読めず、どうしても教条的になる。
小冊子で入門編的な本だが、中身はとてもパワフルだ。コロキアルで読みやすい本が、内容の軽薄さを意味しないことは、内田樹さんや村上春樹が実証している。must readである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
感情論ではなく、解釈の仕方や着眼点の見つけ方から論理を展開する方法を学ぶことが出来る書籍。一つ一つの問題に対し、誰の利益(損失)なのかを分かりやすく説いている。クリティカルシンキングが学べるというだけあって、曖昧に終わらせないところは好感をもった。
ただ、読み切れてないせいもあると思うが、医療倫理について見識が広まるような内容ではないように思う。
遺伝子情報の取り扱い方の章は面白かった。姉妹の遺伝子を個人名義モデルとして捉えるか、共有名義モデルとして捉えるかなど刺激的な部分もある。
全体としては、まあまあ。 -
【サポートスタッフ企画展示:2018春 ブックリスト掲載本】
▼LEARNING COMMONS イベント情報
https://lc.nul.nagoya-u.ac.jp/event/?m=201804&cat=5
▼名古屋大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://nagoya-m-opac.nul.nagoya-u.ac.jp/webopac/WB01726328 -
ロジカルシンキング、哲学書としてためになる。哲学書にありがちな回答がなくなんだかわからない、というものではなく、一貫性とか患者の利益の最大化等、著者の考え方の方針と意見がはっきりと述べられている。
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雑多な内容でまとまりにかけるようにも思われたが、最後の役者解説を読んで納得。しかし、入門書としてはもっと最適な書物があると思う。
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共同図書 490.15/H86
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小冊子と呼ぶのが似つかわしい装丁ですが、医療周辺の倫理的問題について、本質的な議論が展開されています。各章ごとに個別の問題が取り上げられ、筆者なりの結論があります。筆者の結論と僕の結論とが一致しないものもありましたが、考察の経路がオープンで論理的なので、どの点に同意できて、どの点に同意できないのかがはっきりする。倫理の問題に限らず、自分の考えの輪郭をつかむことが大事だと考えている人なら、一読の価値があると思いました。薄いし。
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精神科医がバックグラウンドのオックスフォード大学教授による著作。医療倫理は、その人の背景によって考え方が異なるので、答えを出すのが非常に難しいと思うが、この先生の考えを明示しているのは好感が持てる。医療倫理全般を網羅しているのではなく、医療倫理を学ぶとっかかりになる本だと思う。
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岩田先生のブログでmust readと紹介されていた医療倫理の入門本。
楽しい。いい本です。
安楽死、人工授精、守秘義務、精神科の措置入院‥
メジャーな問題たちを取り上げ、筋道を追いながら結論を導きだしていく。
その過程が詳細に記述されており、とても面白い。
それだけではない。
いろいろな問題に対して単一の道徳理論にこだわらず、その議論に最適な論法を用いて話が進められていく。
(幸福の最大化であったり、一貫性という正義であったり。)
目的に応じて方法を選択する。これは非常に実際的なやり方だし、その分身近に感じられる。
以前読んだ、サンデル先生の「これからの正義の話をしよう」も面白かったけれど、結構似ていた。
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