本は知識を得るものとして、読んでは捨て読んでは捨てているけれど、ずっと手元に置いておきたい本もある。
漱石の自筆原稿を、誤字もそのままにおこし、見返しには自身が描いた装画を使用。大正3年に朝日新聞に掲載されたそのままのスタイルを守って甦った漱石の「心」。手触りも文体も装丁も、私の大好きな「ザ・本」です。
内容は教科書でも読んだことのあるおなじみのものだが、読み返してみると先生のエゴに改めて憤りを感じる。「やっちまったことは仕方がないぢゃないか。自責の念に駆られていつまでもうじうじと…!挙句の果てに死んでしまうなんてKに対しても奥さんに対しても失礼ぢゃないか。しかも明治天皇崩御に伴う殉職と絡めて自殺の言い訳するなんて男らしくない!」と本人をなじってやりたい。
そして「私」が先生の何に惹かれて家に通うようになったのか、プー太郎である先生から何を教わっていたのかが疑問として残る。