環境 (思考のフロンティア)

著者 : 諸富徹

• 岩波書店 (2003年10月18日発売)

感想・レビュー・書評

[siiiさんの感想 · 2012年8月11日]

環境について一般的なアプローチである倫理学的なアプローチではなく、経済学的な視点から考察したもの。
大学で副専攻でサステナビリティ学を受講していたので、だいたいの基本的な考えは頭に入った。
後半は社会的関係資本についてである。これについて考察することがやはり解決に近づくという事である。これについても、研究室の教官が近い領域の専門だったのでやはり頭に入った。
大体理解している分野の話が多かったが、それらの領域をどのように接合して応用出来るかを考察した本だといえるだろう。

[nyankoteacherさんの感想 · 2012年2月18日]

環境問題の解決方策を論じるにあたり、経済学からのアプローチを採る。ただしリベラル的な思想背景が透けて見えるようだ。
後半はほとんどパットナムの研究を紹介しつつ、「市民ネットワークの強化」「地方分権」「アンチグローバルおよびアンチ私的資本」「所得再分配と環境税の政策ミックス」を、あるべき公共政策の原理であると匂わせている。
これでは、環境保全についての議論なのか、資本主義批判なのか市民運動の称揚なのかよくわからない。
嘉田知事のようなアンチグローバル、アンチ成長路線、アンチ私的資本という立場は、環境保全や市民の紐帯強化（これを「社会共通資本」とか「社会関係資本」とか綺麗な呼び方をするのだが）と理論的にうまく結びつくように見えることがよくわかった。

全体はごく読みやすい。また、「持続可能な発展」についての各論者の定義、社会関係資本としての市民ネットワークの考え方、アトランタにおけるグローバリズムの悪影響？についての説明は、とても面白い。

著者プロフィール

諸富 徹（もろとみ・とおる）：1968年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は財政学・環境経済学。『グローバル・タックスーー国境を超える課税権力』(岩波新書）､『人口減少時代の都市』（中公新書）、『私たちはなぜ税金を納めるのか』（新潮選書)、『資本主義の新しい形 （シリーズ現代経済の展望）』（岩波書店）他著書多数。

「2024年 『税という社会の仕組み』 で使われていた紹介文から引用しています。」