- Amazon.co.jp ・本 (148ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000283243
作品紹介・あらすじ
教育は社会のあり方やその変化と無縁ではありえない。その思想や制度は、近代の大きな変動のなかで変容を遂げ、経済のグローバル化や地球規模の課題が、現代の教育にさらなる変容を迫っている。未来の人間や社会のあり方を考え、そこに働きかけていく営みに向けた知として、いま教育学の何が組み換えられていくべきなのかを考える。
感想・レビュー・書評
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[ 内容 ]
教育は社会のあり方やその変化と無縁ではありえない。
その思想や制度は、近代の大きな変動のなかで変容を遂げ、経済のグローバル化や地球規模の課題が、現代の教育にさらなる変容を迫っている。
未来の人間や社会のあり方を考え、そこに働きかけていく営みに向けた知として、いま教育学の何が組み換えられていくべきなのかを考える。
[ 目次 ]
1 教育論から教育学へ―教育学はどのように生まれたのか?(誰でもしゃべれる/誰でもやれる教育?;教育とは何か;教育学の成立)
2 実践的教育学と教育科学―教育学を学ぶ意味は何か?(実践的教育学;教育科学;なぜ学ぶのか)
3 教育の成功と失敗―教育学は社会の役に立つのか?(教育の不確実性;教育可能性に向けたテクノロジー;教育学と社会)
4 この世界に対して教育がなしうること―教育学の未来はどうなるのか?(何のための教育か;ポストモダン論の衝撃;教育目的の迷走;教育目的再構築論の危うさと可能性)
5 教育学を考えるために―何を読むべきか(本を探す;好循環;教育学を学び始めるために;教育学を深めるために;最後に)
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・「教育とはかくあるべき」という期待や願望を、教育の定義(教育とは何か)の中に盛り込んでしまうという方法的態度である p6
・教育とは、誰かが意図的に、他者の学習を組織化しようとすることである p9
・(教育とは)目の前の出来事を別の次元で概念的にとらえなおそうとする「メタ思考」の次元の言葉なのである p12
・私は、近代の教育思想の一つの源流を、社会の改革や変化をプログラム的に計画しようとする思想に求めることができるのではないかと考えている p16
・一九世紀の一〇〇年の間に、教師の仕事は以前とは比べ物にならないほど、微妙で複雑なものになった。
・つまり、規範を語ろうとすると、教育科学を踏みこえねばならないのである。
・実践的教育学と教育科学の整理 p52
・技術知とは、硬い表現でいえば、手段の合理化の追求に特化した知である。ー 反省知としての教育学は、既存の現実や現実認識を相対化する知である。 p56
・ただ、教師になる人が個人としてもっている実践理論や、現場の教師たちが集団的に共有している実践理論は、狭くて危うい p61
・教育は、他者に対する行為であるかぎり、結末は予見しきれない確率論的な「賭け」なのである。 p70
・社会の変動の中で教育目的論の練り直しが必要になってきたにもかかわらず、現代の教育学者は、実践的教育学の規範の部分に真正面から取り組むのを避けてきたりその空隙は、教育の実情をよく知らない外部者たちによって埋められてしまったわけである。それが近年の状況である。そして、その結果生じているのが、経済や政治への教育の従属、という事態である。 p118 -
「教育学」という学問はどのような学問だと想像しますか?
「教育」という営みは、私たちにとって身近なトピックでありながら、「教育とは何か」に対する答えを説明したり、「教育」を「学問する」ということをイメージしたりするのは難しいのではないかと思います。
「教育学」は、様々な諸学問と関わり合って、様々な分野に分かれて成り立っています。この本では、「教育」や「教育学」とは何かについて、歴史的な流れや、これまでに蓄積されてきた「知」の性格の違いや、教育のもつ難しさなど、多様な視点から書かれています。そのため、これから「教育学」を勉強してみたい人にとっては手引書のように、すでに学んでいる人にとっては問題提起として、それぞれの立場によって異なる読み方ができる本の内容になっています。
私たちは学生という立場を卒業してからも、教師という職ではなくとも、仕事などあらゆる場面で「教育」という営みに直面します。だからこそ、この本を読んで、一度「教育とは何か?」を考えてみたり、「教育」を「学問する」ことの面白さに触れてみませんか?
(ラーニング・アドバイザー/教育学 FUJI)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/volume/1792943 -
私が学んでいた高等教育や大学政策は、どうも教育学の中でもかなり外れに位置しているようだ。また学問としての「教育学」には、おおよその範囲があることがわかった。隣接する学問としては心理学・医学・社会学だった。こうしたディシプリン間の関連を、ミクロ―マクロ、学問志向―教職志向で整理した田中による図表を用いて、教育学を概括した。大きく分けて、教師養成のための技術の開発と、教育を通じた人間・社会の考察という2つから、この学問は発達したとしている。そしてこれらの本流は教育と学習の結びつき方の検討にある。またこうした教育学を分類する方法は、技術知と反省知という区分もある。入門書としてとてもわかりやすい内容だった。
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前半は教育学説史、後半は現代の教育学説と社会の関連性のようなもの。
個人的には、後半に強く興味を持った。
ポストモダン以降、「教育の目的」が語り得なくなってしまった。
その教育学の空隙を埋めたのが、政治家やエコノミストの言論である。
彼らの持ち込んだ「経済のための教育」というイデオロギーは、教育に市場原理主義や競争、評価を導入しようとした。
彼らは教育を、「労働者の生産能力を高める手段」と考えている。
また、冷戦の終結により勢いづいた保守派が、教育にナショナリズムや道徳保守主義を導入しようともしている。
そんな中、20世紀初頭の知の巨人デューイが教育の目的について行った議論が、現代にも通じる有益性を持っていることを著者は指摘した。
…詳しくは、本書を読んでみてほしい。 -
広田照幸は注目すべき学者のひとりであるように思う。本書では学校の成り立ちや歴史から現在の状況まで紹介分析されている。ポストモダン化された現在の混迷状況における対処の考え方(の萌芽しか本書では見えないが)が私の考えに近い。著者の他の著作もぜひこれから読んでいきたい。
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中立的に、教育学を説明している。
おもしろいが、やはり入門書としては取っ付きにくいのでは。