ヒューマニティーズ 外国語学

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000283274

作品紹介・あらすじ

この日本において、外国語とは何であったのだろうか。外国語を学ぶ意味-それは実用性に還元されるものではない。世界標準を構成する実利主義・功利主義、言語の背後に隠された暴力性と権力性を越え、他者との相互承認に向けた、真の意味での翻訳の可能性を考える。外国語を学ぶことで切り拓かれる新たな地平の誘い。

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  • 【書誌情報】
    著者 藤本一勇
    ジャンル 単行本 > 総記
    シリーズ ヒューマニティーズ
    刊行日 2009/11/27
    ISBN 9784000283274
    Cコード 0300
    体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 144頁
    在庫 品切れ

     この日本において,外国語とは何であったのだろうか.外国語を学ぶ意味――それは実用性に還元されるものではない.世界標準を構成する実利主義・功利主義,言語の背後に隠された暴力性と権力性を越え,他者との相互承認に向けた,真の意味での翻訳の可能性を考える.外国語を学ぶことで切り拓かれる新たな地平への誘い.

    ■著者からのメッセージ
    本書は,「外国語」問題というと,すぐに「英語帝国主義」論が出てくる昨今の風潮とは少し違った議論を提示したいと思った.英語が圧倒的支配権をもっているという現実は動かせないのだから,英語を出世や自己実現のためのツールとして利用しようというドライかつクールな,しかし反面,体制順応的な考え方は,筆者の好むところではない(この実用主義の考え方にも一理はあるのだが).また英語帝国主義の「専制」に抵抗し,立ち向かうのだという反体制的な方向も,具体的な政治や制度の問題に関してはともかく,言語そのものをどう捉えるかという問題に関しては,話がずれる気がする.
     外国語をめぐって様々な問題があることは承知の上で,本書が論じているのは次の一点だけである.すなわち,言語(国語や外国語)がもつ根本的な権力性と倫理性というヤヌスの双貌を,どう捉えるか,これである.取り扱う素材やテーマ,論法は色々であるが,結局のところ,これしか論じていない.その意味では,外国語学の歴史,外国語学習のメカニズムや方法論,外国語の政治的・社会的・文化的な諸相,そういった内容を期待される読者はがっかりするかもしれない.しかし,これらの問題を扱った書籍はすでにたくさん存在し,しかも優秀な仕事も多数存在するので,外国語学の専門家でもない筆者が屋上屋を架す必要はないと思われた.そこで外国語の問題に接するときに,筆者にとって原理的と思われる問題のみを,ここで整理してみようと考えた.それが言語の権力性と倫理性の問いだったのだ.
     もちろん,この問いもすでに色々なところで論じ尽くされてきている問題かもしれない.何をいまさらという感も無きにしも非ずだろう.しかし,様々に論じられてきてはいても,明確な「解答」が与えられていないのも事実である.筆者がそれに解答を与えようというのではない.言語の問いとは,決まった解答がありえない,そうした問いなのではないかということ,このことを描くことによって,とりあえず問いを問いとして練り上げてみたいと思うのである.そこから,解答ありきの問いの囲いを打ち破る,言語のもつ他者性,その開放力を探ってみたい.
     筆者の考えでは,「問い」のあり方自体を問うこと,「問い」を「問い」として明確にすること,これが人文学(ヒューマニティーズ)の可能性の一つだと思っている.我田引水に過ぎるかもしれないが,その意味では,解答のあるマニュアル的な問いではなく,解答のない問いを作り上げることによって,外国語の問題,ひいては言語一般の問題に何か光を当てることができれば,「ヒューマニティーズ」という名をもつシリーズの一冊として役に立てるのではないかと思うのである.
    (「はじめに」より)
    [https://www.iwanami.co.jp/book/b257608.html]

    【目次】
    献辞 [ii]
    はじめに [iii-vi]
    目次 [vii-ix]

    一、外国語と権力──外国語学はどのようにして生まれたか 001
      欧米帝国主義と近代日本における外国語/ 「和魂洋才」──実用主義と権力/英語(米語)帝国主義/多文化主義/第三者装置としての「バベルの塔」

    二、言語というシステムを外部から見る──外国語学を学ぶ意味とは何か 017
     言語は力なり/メディアとしての言語/ 「ドイツ国民に告ぐ」/未来の国民、未来の国語/フィヒテVSルナン/蝶か蛾か/言語というOS/差異のネットワーク/言語システム論の罠/言語による変身/言語の選択/複数の言語から言語の複数性へ

    三、翻訳の倫理学──外国語学は社会の役に立つのか 045
     ポスト・モダン社会/抗争する「島宇宙」/翻訳の問題/同化と異化/翻訳の倫理的効果/名(づけ)の権力/名の暴力/象徴的歴史の暴力システム論/ 「翻訳者の使命」/伝達不可能なもの/抵抗の生き残り/純粋言語/自己超出する言語

    四、異質な言語たちの未来──外国語と未来 087
     他者の言語/言語自身の他者性/言語内翻訳/来たるべき言語/マイナー言語/アイヒマンと杉原千畝/ 「そして誰もいなくなった」/クレオール──混交する言語/人文学の可能性

    五、「来たるべき言語」たちのために何を読むべきか 121

    おわりに(二〇〇九年一〇月 八雲の文字通りの寓居にて) [129-133]

  • 国民とは魂であり、精神的原理です言語はOS.
    外国語を学ぶことの効用はまずは新しい言語を習得することによって新しいメガネ、ものの見方、意味世界を獲得することができる。

  • 1/13
    外国語→言語にまつわる権力構造。

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著者プロフィール

藤本 一勇 1966年生まれ。早稲田大学文学学術院教授。現代哲学、表象・メディア論専攻。著書に『情報のマテリアリズム』(NTT出版)、『外国語学』(岩波書店)、『批判感覚の再生』(白澤社)、共著に『現代思想入門』(PHP研究所)、訳書にプレシアド『カウンターセックス宣言』『あなたがたに話す私はモンスター』、デリダ『散種』(共訳、以上 法政大学出版局)、同『プシュケー I・II』『哲学のナショナリズム』、デリダ/ルディネスコ『来たるべき世界のために』、デリダ/ハーバーマス『テロルの時代と哲学の使命』(以上 岩波書店)、バディウ『存在と出来事』『哲学の条件』(以上 藤原書店)ほか。

「2023年 『テスト・ジャンキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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