少年犯罪〈減少〉のパラドクス (若者の気分)

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著者 : 土井隆義
  • 岩波書店 (2012年3月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000284561

少年犯罪〈減少〉のパラドクス (若者の気分)の感想・レビュー・書評

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  • 社会学者の中でこの筆者はわりとまともなほうだと思っていたけれど、それにしても一般的に社会学の人々はいろいろな新語というか新概念を提唱しすぎるような気がする。まあ少年非行が減った減ったといってよろこんでばかりもいられないということはよくわかりました。

  • 面白かった点:サマーウォーズやネット右翼についての知見もあり。
    本書は社会学なので、「個別のケース」を考えず、統計から見えてくるものを丁寧に追って炙りだした『全体の空気』です。

    【一番膝を打ったポイント】と【コミュニケーション力の誤解を紐解く】 部分の二点を、特に評価しています。

    【一番膝を打ったポイント】
    犯罪率の減少に一役買ってるのが
    『目標に向かって煽る文化』
    ではなく
    『目標を設定する理由すら見当たらなくなる、鎮めの文化』
    という部分は卓見!と思いました。
    「格が違う」
    なんて表現、「強敵を前に絶望した勇者のセリフ」を一般人が吐くのはそれが理由かあああああ!
    と膝を打ちましたとも。

    そして勇者なら奮起する。
    でも、一般人は?
    「格が違う」から、
    「努力の無効性を妄信」
    して安住する。
    あまり悪く聞こえない表現で申しますと、
    「貴方は大学卒で論文書いたお方。この程度の文章、読めて当然と推定します。少しはげて見ますか?20本全部。(にっこり)」
    という気分に駆られることもあります。この本のお陰で、一般人理解が深まりました。

    次に、自分は環境特異点。との視座を持ちつつ。
    「何故こんなに多くの人々は、『価値観の多様化を認める認める』といいつつ、『コミュニケーション力』を誤解するのか」
    という問いの答えを示されたキモチになったのが、次の評価ポイントです。

    【コミュニケーション力の誤解を紐解く】

    本書から得た知見を大まかにまとめると、このようなものです。
    1.犯罪の『中身』が、不満の爆発から、不安の爆発に変化した。
    2.人間関係の希薄化により、非行文化の継承が希薄化し、『手口』が変化した。
    3.コミュニケーション力は、「評価基準」が「他者」にある以上、永遠に満点足り得ない。
    4.さらに、「評価基準」を「たくさん」「維持」できること、が二重構造の「コミュニケーション力の得点」としてカウントされる。(コレについては後で詳しく述べます)

    3および4から、

    「さりげなく(集団に受け入れられるレベルの)個性」は欲しい

    が、

    「本当に孤立しちゃうような個性」

    は忌避される。嫌がられる。排斥される。迫害される。

    また、人間関係の流動性、
    「他の場所では他の関係性があり、時間が違うとそこもまた違う関係性があり」
    という「アレ」もある、「コレ」もある状態は新たな不安を生んだ。
    「自分がいつでも離脱できる人間関係は、相手側もご同様」

    「ぼくはいつ捨てられる側になるんだろう」
    という不安。
    「私が相手にできることは、相手が私にできること」 なのです。
    ゆえに、制度的共同体への再・埋め込みを求める。不安から逃げる先は、『近代化で捨てたはずの場』ではなく、実は仮想の『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界。

    だから逃げ込んだ先でも、
    「この共同体はやはり仮構に過ぎない。とても流動的だ」
    と分かっている。不安は決して消滅しないのです。

    本来的な意味での「コミュニケーション力」は目に見えない部分が大きい。なのに、この不安を消したくて、「目に見える部分で評価」して、「保証」を得ようとする。
    「コミュ力の高い自分」という保証を。
    「コミュ力の高さ」をほめることと、「コミュ力の低さ」をネタにしたり、自虐ぶったり、どうでもいい事だ、とことさらに言い立てる。
    この二つは、同じコインの両面です。コインの名前は、「コミュ力という幻」といいます。

    これが、コミュニケーション力の誤解の最たるものです。
    質をもって測られる能力なのに、量や数で測れると思われている。
    「ある人のTwitterのフォロワー数は、その人のコミュニケーション力に直結しない。なのに、なぜか桁数や数字の多さ、少なさがある種の「ステイタス」をあらわすかのように考えられている。」
    このような誤解です。

    さて、本書の中身をもう少し。
    「人生で成功するためにはコネや運が必要」と認識する人の数が増える。
    つまり、「自分が何を知っていて何ができるかではなく、誰を知っていて誰の力を借りられるか」。
    津田さんのいうソーシャル・キャピタルも、この風潮から影響を受けたのかしら。

    『少年犯罪<減少>のパラドクス』が看破したこと。コミュニケーション力の誤解からきた、二重の自己承認です。
    まず第一は、「自分の価値を、身近な他の者に認められたい」。
    これが自己承認の願望。
    第二に、「自分のことを認めてくれる人が、こんなに一杯いる」と認めてくれる、さらなる外部の者からの承認。これが承認の二重化。

    「自分が承認されていることを、承認されたい」

    なんで「ぼっち***」という言葉が分かりやすい表現になるのか?
    なんで「リアル充実」が、恋愛特化の承認されあう人間関係として、賛否いずれにもとりあげられやすいのか?
    なんでそんなに多くの人が、『承認される人間関係が重要。それが欲しくて欲しくて仕方ない』と思っているのか?
    自分は脱ぎ捨てた衣に興味を失っていても、今それを着てウンウン苦しんでる人の「苦しさ」は分かってあげたほうがいい。 
    そう思いました次第。

    分かる、ということと同調するかどうか、ということは、また別のお話……。

    本日は、我が心の師、マルクス・アウレリウス陛下のお言葉を一つ思い出しました。自省録第9巻33節。

    A little while, and all that is before your eyes now will have perished. Those who witness its passing will go the same road themselves before long; and then what will there be to choose between the oldest grandfather and the baby that died in its cradle?
    「貴方の目の前にあるもの全ては、儚い現在。いずれ消える。老爺も、揺籃の嬰児も、いずれ消える運命という点は同じ。そして、観察者の運命も然り。」

    これを、
    「明日死ぬかも知れないのに、大人になる必要ってあるんですか」
    と解釈するか、
    「明日死ぬ可能性もある。だからといって自分の心を成長させない理由にはならないね!」
    と解釈するか。
    私は後者です。

  • 貧困率が高まり格差社会が進んでいるにもかかわらず、少年犯罪が減少傾向にあるのは何故か。

    「三丁目の夕日」から「便所飯」まで。若者の時代における息苦しさが、ここ何十年で大きく変遷してきている。

    第二次大戦後〜高度経済成長期にかけての等しく平均点を底上げする教育から、より「個性的であること」を尊重する個性主義的教育へと変化してきた。

    かつては親や学校、共同体といった体制に反抗したり、今いる環境から抜け出したいと犯罪を犯す若者から、「個性なく普通であること」に恐怖心を感じ、自分を取り巻く人間関係が全てにおいて優先した結果の犯罪へと変遷。

    かつ、他者と自己を比較することにより生じる「剥奪感」がなく、現状は努力で変えられないと、そこから抜け出すモチベーションを持ち得ない、ある意味現状に特に不満を持たない若者が増え、結果的にそれが犯罪率の上昇を抑制する要因となっている。

    非常に面白い一冊。




    る。

  • 貧困率も上がり格差も広がっているのに、近年少年犯罪が減少しているのはなぜか。結論は、自分の将来に対する希望が失われつつあり、不満を抱くことがなくなってきたということらしい。考えさせられる。。。

  • 統計、グラフ等、見やすく分かりやすい。
    1、経済成長と貧困
    2、人間関係と自由
    3、オンリーワンの彼岸
    4、幸福感のリアル

  • 367.68||Do

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少年犯罪〈減少〉のパラドクス (若者の気分)の作品紹介

少年による凶悪犯罪は減っている-にもかかわらず「少年犯罪の凶悪化」ばかり語られるのはなぜなのか。若者にとって厳しい社会経済状況が続くなかで、暴動騒ぎどころか小さな暴力事件ですら減っているのはなぜなのか。その謎を解明し、これまでの犯罪研究の空白地帯に踏み込む。

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