音のイリュージョン――知覚を生み出す脳の戦略 (岩波科学ライブラリー 168)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000295680

作品紹介・あらすじ

存在しない音が聞こえる。同じ音が違って聞こえる。高い音が低く聞こえる。そんな不思議な錯聴を、まずはウェブサイト"イリュージョンフォーラム"で体験してみよう。だが、聴覚とは不確かなものと早合点してはいけない。イリュージョンこそ、わたしたちが生きていくのに不可欠な脳のすぐれた情報処理戦略の表れなのだ。

感想・レビュー・書評

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  • ・森さんの「歌うネアンデルタール」のamazon関連本。

  • <閲覧スタッフより>
    だまし絵で有名な“錯視”とは別に、聴覚における音の錯覚、“錯聴”という言葉をご存知ですか?多角的に錯視や錯聴のメカニズムを解明します。本書の文章だけでは想像がつきにくい実例は「web」と書かれており、連動サイト「イリュージョンフォーラム」のデモを流すと、不思議な現象を体感しながら読み進めることができます。
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    所在番号:141.22||カシ
    資料番号:10202205
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  • 聴覚の錯覚、錯聴に関する最近の研究を紹介したモノグラフ。これは面白い。音楽関係者、特に演奏者には必読だろう。聴覚だけでなく、聴覚・視覚の連携や優劣、視覚や触覚など他の感覚にも共通する特性などにも及ぶ。ウェブサイトにて実際のサンプルを体験することができる。興味深いのは「同時」であると認識されるのはある一定の幅の時間に生起した事象を事後的に解釈している可能性であり、「現在」にはある程度の時間巾があるということになる。微妙にずれたタイミングで生起している複数音を同時と捉える錯覚は、音楽演奏の技法としても使われているように思われる。ピアノ単独で複数の楽器からなるオーケストラ曲のリダクションを行う場合など。欠落した倍音成分を補完する錯覚などは、ハイレゾ音源の音質評価にもつながってくるように思われる。反復音による錯覚はミニマルミュージック技法の根柢にある。

  • 音源の位置を認識する時に、最初に鳴った音の方角の近くの解像度が上がるという現象が面白かった。
    欠落部分を補う時に、未来の情報が使われているというのも面白い。耳に音が入った時刻と認識する時刻との間に、かなりの遅延があるということ。その値が全ての人に共通とは思えないが、それでもアンサンブルが成立するところがすごい。考えれば、不思議ではないけれど。

  • 資料番号:011156403
    請求記号:491.3カ

  • イリュージョンフォーラム (http://www.brl.ntt.co.jp/IllusionForum/)
    の解説をするための本、という感じだ。

    ある程度ウェブで説明もあるため、それでかなり理解できてしまうかも。

    明快な語り口なのですっきり読める。またあとがきで書かれている内容はなかなか興味深かった。つまり、なぜ錯聴を研究するのかということ。
    ・面白いから
    ・世界観、人間観が変わる。別の見方ができる。
    ・アートに使える。
    ・語学や音楽の訓練に使える。
    ・心の平安が得られる(?)
    ・5感に関わる技術開発につながる。音声圧縮技術など。
    ・近くを生み出す脳のメカニズム解析に役立つ。

    この本の大きな流れは上記の最後の脳のメカニズムを知る、というところにつながっている。

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    以下紹介されている錯聴
    ・言葉をぶつ切りにしても、間にホワイトノイズを差し込むと連続して聞こえる
    ・同じ言葉を繰り返していると意味のない音列に聞こえてくる
    ・ピッチによって音のまとまりが出来ているという「音脈分凝」
    → 実際に口で話すことによる「運動の制約」があり、その制約から外れる物 (極端にピッチが飛ぶ物など) は一つのまとまりとは認識しないという、聴覚の認識過程 (「運動理論」)
    ・ある音を先行して流すと、続く音の定位が実際の定位よりも、先行音から遠い方にずれて聞こえる。
    → 先行音があることで、その空間が「クローズアップ」されている。
    ・タイミングの知覚。まとまって認識される物の中ではタイミング判断は正確だが、関係ない物の間ではあいまい。
    ・「後付け的な知覚」。原因と結果の間に情報がなく、結果のみが知覚できた場合でも、原因と結果が途切れなくつながっているように認識できる。
    ・ミッシングファンダメンタル。ピッチの認識メカニズムについて。
    → 蝸牛からのピッチ情報のみでなく、それらが共通の周期で変調されているかどうかによってもピッチとして認識する。うなりが音として聞こえるメカニズム。
    ・マガーク効果。視覚によって聴覚が影響を受ける。またその逆もある。

  • 興味深いお話でした.

  •  聴覚に関する様々な「錯覚」を、具体例とともに紹介、そのメカニズムを解説している一冊。
     存在しない音が聴こえたり、左右が反転したり、その事例はあまりにも興味深い。面白すぎる。
     実際に「錯覚」を体験できるサイトも開設されていますので、ぜひお試しを。
     http://www.brl.ntt.co.jp/IllusionForum/

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著者プロフィール

1964年、岡山県生まれ。1989年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。博士(心理学)。 日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所柏野多様脳特別研究室長・NTTフェロー、東京大学大学院教育学研究科客員教授。2016年文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。著書に『音のイリュージョン~知覚を生み出す脳の戦略~』(岩波書店)、『空耳の科学―だまされる耳、聞き分ける脳』(ヤマハ)他。

「2021年 『新版 音楽好きな脳 ~人はなぜ音楽に夢中になるのか~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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