個性のわかる脳科学 (岩波科学ライブラリー 171)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000295710

作品紹介・あらすじ

孤独に思うか思わないかという個人の主観とは別に、社交的かそうでないかという性格は脳の構造に違いがあるという。今日ではそうした個人の社会性までが脳と結びつけて説明できるようになってきた。では、いったい脳のどこがどのように違うのか。また人為的に改良することはどこまで可能なのか。個人差をめぐる脳科学の最前線をわかりやすく紹介する。

感想・レビュー・書評

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  •  この間読んだ『脳に刻まれたモラルの起源』が面白かったので、著者が同じ岩波科学ライブラリーに寄せた旧著を読んでみた。

     タイトルのとおり、私たちの個性・個人差がどれくらい脳に現れるのかを、さまざまな角度から探った内容である。

     『脳に刻まれたモラルの起源』と同様の感想を抱いた。
     脳科学の最前線が盛り込まれていて内容はたいへん面白いのだが、一般書にしては文章に論文臭があって、なかなか頭に入ってこないもどかしさがあるのだ。

     この著者は、池谷裕二さんの語り口――脳科学の最前線をわかりやすく、面白く読ませる語り口――に学ぶべきだと思う。内容をもう少し一般向けにやわらかくブレイクダウンできれば、本書だってベストセラーになってもおかしくない。

     印象に残った箇所を、いくつか引用しておく。

    《電気刺激で記憶力を人工的に向上させたり、個人の社会的コミュニケーション能力を向上させたりといった技術がある。これが現実世界で利用されるようになるのはまだ先のことだが、基礎研究としては現在活発に行われている。》

    《胎児のときに性ホルモンであるアンドロゲンを浴びた人ほど、薬指が長くなることが知られている。一方、アンドロゲンを胎児のときに浴びた人ほど、成長の過程でアンドロゲンのひとつであるテストステロンに影響を受けやすく、「男らしい脳」が育つ。「男らしい脳」といっても曖昧だが、広く考えられているのは空間的な認知能力やリスクを進んでとる傾向などである。この発生学上の理由で生じる相関関係から、人差し指と薬指の比率すなわち(人差し指の長さ)÷(薬指の長さ)は2D:4Dと呼ばれ、個人の脳の「男らしさ」と対応していると考えられている。》

    《「記憶力」もあればあるほど良さそうなものだが、「忘れる」というのも大事な機能である。「忘れる」ためには重要な情報を選択し不必要な情報を排除することが必要である。それによって、物事の本質を理解することを助けているかもしれない。》

    《脳科学が抱える難しい問題の一つに「意識」の問題がある。なぜ、脳に意識が宿るのか。今でも、我々は意識を持った機械を作ることはできない。「痛み」を単なる数値として表現するだけではなく、「痛み」という感覚を実際に感じることができるロボットを作ることはできない。それどころか、我々はそのようなロボットが「痛み」を感じているのかどうかを判別する手段さえ持っていない。》

    《実は睡眠中に成長ホルモンが分泌されるのは人間に特有の現象で、人間の食生活のパターンと関係があると考えられている。人間の場合は寝ているときに分泌される成長ホルモンによって体内の脂肪が分解されている。ということは、毎日よく眠ると脂肪が分解できて、ダイエットになる可能性がある。そして、おそらく寝る直前に食べないようにすることでこのような脂肪の分解は促進されるだろう。》

  •  本書は意識的知覚・時間感覚などを研究する1977年生まれの研究者が2010年に刊行した、認知神経科学・脳科学研究自体について解説する本。テーマは、人の個人差が脳にどれだけ反映されるかを脳科学の枠内で調べることを中心として、それ以外の細かい題材も含んでいる。本書は100頁程度の薄い本だが、情報量が多いこと・文体がやや硬いことから読むのに少し骨が折れる。

    (感想)意識への客観的なアプローチを片鱗でも知ることができて満足した。と同時に、紹介された研究も神経科学のごく一部らしいうえに、心理学と関係はどうなのかなど新しい興味が尽きないので読みたい本が増え続けている。なお著者のブログは2010年で更新停止している。
    「脳と意識の最先端を目指そう」
    http://kanair.cocolog-nifty.com/blog/

  • 脳科学最新の分野。
    内容的にこのページ数でまとめるのは難しい。

  • 今話題のソーシャル・ブレインについて広く浅く紹介している。そして脳科学の進歩によって、個性までも分かるかも?と今後の可能性を示唆している。例えば、記憶力を良くする方法や外交的か内向的か、仕事の適正などなど脳を見れば予測可能となるのも夢のまた夢ではないこと。ソーシャル・ブレインは興味深いが、ただ推測が多かったり、初期段階の研究も多く、これが最前線と思うと現状には少し物足りない感があった。

  • tDCS transcranial direct current stimulation 記憶を高める脳刺激
    よく寝ないと嫌な記憶ばかり残ってしまい、楽しかったこととか特に感情とは無関係な知識とかは残りにくい

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