- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000295758
感想・レビュー・書評
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最新の口蹄疫の解説本です。
著者の山内先生は、10年ほど前にプリオン病が問題化した際にも活躍された人獣共通感染症の第一人者。当時、BSEについて講義を拝聴したことがありますが、最先端の内容まで非常に仔細な分析を解りやすく解説されていた記憶があります。
本書の序盤の口蹄疫の微生物学的特性や、日本をはじめとした世界での口蹄疫制圧の歴史的背景など、基本的事項の解説は、わかりやすいことは確かだけど、正直、文章が固いな、退屈だな、なんて印象でした。
ところが、後半の2010年の宮崎での発生に関する行となると、打って変って活き活きとした行政批判、っていうか農林水産省批判が始まります。
山内先生ってなにか農林水産省に恨みでもあるのかしら?きっとあるんだろうな、ってくらい、我が出た批判の雨あられ。
口蹄疫問題で、ここまで科学的かつ説得力のある農水省批判は始めて聞きました。
農水省はん、あんた、とんでもないお人を敵にまわしてしもうたで。。。
批判の中心は、「ワクチン接種が遅れたこと」と「マーカーワクチンが使用されなかったこと」について。
確かに国際的に主流になりつつある、ウイルス感染牛と血清学的に識別可能なマーカーワクチンの存在自体、今回の口蹄疫をめぐる議論では取り上げられることはありませんでした。
たけがわが特に注目したのは、本書では口蹄疫を「貿易障壁となるため重要」な病気と位置付けていること。
たけがわが学生時代等に触れた成書では「口蹄疫は家畜の健康被害はそれほど重大でもなく、それによる生産性の低下による経済被害が重要」とミクロ的な説明はされていましたが、「発生すると汚染国となるため他国へ畜産物を輸出できなくなる」といったマクロな視点での解説は見たことがありません。
たけがわは動物の輸出入に携わっている関係から、この視点はものすごく的を得ていると実感しますし、また、本書でも取り上げられているように、日本以外の他国ではその認識が強いこともうなずけます。
なぜ日本では貿易障壁との認識が薄いのか?
獣医師であるたけがわの立場からすれば、日本の獣医・畜産業界の視点が一次・二次産業の視点にとどまっており、三次産業のレベルにまで目がいかないことにあるのではないかと思います。
思い切った言い方をすれば、日本の獣医界が、所詮、専門バカの域を出ていないためではないかと。
一般の方向けに書かれた本で内容自体は平易ですが、切り口は科学者寄りで、むしろ獣医師に読んでほしい本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いままで、謎に思っていたことが、色々と解決して、面白かったです。
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獣医学界の重鎮、山内一也先生著書。100ページ余りなので一気読み。口蹄疫はあくまでも経済問題。大量殺処分に問いを投げかける。岩波科学ライブラリー、未知分野のとっかかりによさそう。
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今年の宮崎口蹄疫の報道で強調されていた殺処分の必要性・ワクチン接種では感染牛と接種牛を区別できないことは誤りであることが、科学的な根拠と欧州での実績から否定している。
報道(政府発表)ではごく初期の診断者を責めるものが多かったが、最大の犯人は、口蹄疫が起こってもそれを封じ込める仕組みづくりに真剣に取り組んでこなかった行政と政治家であることがよく分かる。中国・韓国との交流拡大を図る以上、口蹄疫の防御体制が破綻するのは必然だったのであろう。 -
2010年は宮崎県での口蹄疫で有名になった。東知事もよく頑張っていた。
口蹄疫は急性のウィルス伝染病。
人の衣服や風に乗って海を超えて運ばれてくるウィルスでもある。
初めて殺処分で対応したのは1711年のイタリア。そんな昔から口蹄疫はあった。
2000年にも宮崎では口蹄疫が発生していたそうだ。覚えていないな。