プラトン全集 4

著者 :
制作 : 田中 美知太郎  藤澤 令夫 
  • 岩波書店
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000904148

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  • 中期末「パルメニデス」は、プラトン自身のイデア論批判の対話篇として知られている。
    〈イデア〉そのものの多重性や不可能性、不可知性、事物への不関与性などが挙げられている。そして、イデアとしても、1)善などの徳のイデアはあり、2)人間や火のイデアが微妙で、3)毛髪などのくだらないもののイデアは存在しない、とソクラテスは言う。

    こうした問題提起ののちに、その反駁の具体的なパフォーマンスとして、「予備練習」と称して「言葉の上ではどうとでも言える」という論理学がパルメニデスによって延々と披露される。

    イデア論の核心はどこにあるのか?
    多様な意味としてそれぞれに生じうる現象にたいして、どう考えれば、多くのひとにとって共有できるものとなるか、という問題設定のために要請されてきている。現象界に対して、本質的な叡知界を設定することで、本質はちゃんとあるし、虚無に陥らなくていいのだ、ということにある。

    イデア論が陥った失敗は、〈イデア〉を起源としてあるいは実体的に想定することに由来する。
    むしろ、或る概念や価値が、なるほどと思えるような、そして「妥当だ」と肯けるような条件は何か、と1つ1つ確認しながらあぶり出そうとすることに、イデア論の意味がある。

    事後的と言っても、まったく無から生成されるのではなくて、たとえばハイデガーが言うような「前‐了解」という段階がある。
    言葉によってはっきり把握していないけれども、頭の中でぼんやりと思っていることが存在している、こういう状態が前提となっている。
    だから、ソクラテスはじぶんの問答法の技術を、産婆術だと称した。
    あいてがもっている概念を、じょうずに質問していくことで、生みだす技術だっていう。

著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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